2024年8月3日
労務・人事ニュース
令和5年労働安全衛生調査結果発表:14,000事業所と18,000人のデータから見えるメンタルヘルス対策の現状と課題
令和5年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要(厚労省)
厚生労働省は令和5年の「労働安全衛生調査(実態調査)」の結果を発表しました。この調査は、労働災害防止計画の策定に必要な基礎資料を提供し、労働安全衛生行政の推進に役立てることを目的としています。調査は全国の民営事業所を対象に、常用労働者を10人以上雇用する約14,000の事業所から無作為に抽出された事業所およびそこに勤務する常用労働者や派遣労働者約18,000人を対象とし、有効回答を得た7,842事業所と8,431人のデータを集計したものです。
まず、メンタルヘルス対策に関する状況についてです。過去1年間にメンタルヘルス不調により1か月以上休業した労働者がいた事業所の割合は10.4%、退職した労働者がいた事業所の割合は6.4%でした。メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は63.8%で、特に労働者数が50人以上の事業所では91.3%に達しています。具体的な対策としては、「ストレスチェックの実施」が最も多く65.0%、次いで「メンタルヘルス不調の労働者に対する必要な配慮の実施」が49.6%でした。
次に、化学物質のばく露防止対策への取り組みについてです。危険有害性のある化学物質を製造または提供している事業所のうち、すべての製品の容器や包装にGHSラベルを表示している事業所の割合は73.6%で、前年の80.9%から減少しています。一方、すべての製品に安全データシート(SDS)を交付している事業所の割合は75.6%で、前年の54.9%から大幅に増加しています。
仕事や職業生活に関する強いストレスについても調査されています。現在の仕事や職業生活に強い不安やストレスを感じている労働者のうち、「仕事の失敗、責任の発生等」が最も多く39.7%を占めています。
産業保健に関する事項では、産業保健の取り組みを行っている事業所の割合は87.1%で、その内容として「健康診断結果に基づく保健指導」が最も多く74.7%、次いで「メンタルヘルス対策」が74.2%となっています。
労働災害防止対策に関しては、転倒防止対策の取り組み状況が報告されています。「物理的対策」としては「設備・装備などの対策(職場内の手すり、滑りにくい床材の導入・靴の使用、段差の解消、照度の確保等)、整理・整頓・清掃の徹底など」に取り組んでいる事業所の割合が78.1%と高く、「身体的要因を考慮した対策」としては「骨密度、ロコモ度等のチェックによる転倒やけがのリスクの見える化」に取り組んでいる事業所の割合が6.6%でした。
また、労働安全衛生法に基づく雇入れ時教育を実施している事業所の割合は56.1%で、実施している労働者の就業形態としては「正社員」が54.9%、「契約社員」が26.8%、「パートタイム労働者」が34.2%でした。
高年齢労働者に対する労働災害防止対策の取組状況も報告されています。60歳以上の高年齢労働者が業務に従事している事業所のうち、エイジフレンドリーガイドラインを知っている事業所の割合は23.1%で、その中で高年齢労働者に対する労働災害防止対策に取り組んでいる事業所の割合は19.3%でした。具体的な取組内容としては「高年齢労働者の特性を考慮した作業管理」が56.5%、「個々の高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応」が45.9%でした。
このように、令和5年の労働安全衛生調査では、多くの事業所がメンタルヘルス対策や化学物質のばく露防止対策、転倒防止対策、雇入れ時教育、高年齢労働者に対する労働災害防止対策などに取り組んでいることが明らかになりました。しかし、一部の対策についてはまだ十分に実施されていない事業所もあり、今後の改善が求められます。今回の調査結果は、今後の労働安全衛生行政の推進に大いに役立つと期待されます。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ