2025年1月14日
労務・人事ニュース
令和6年度公立学校教員採用試験、採用倍率3.2倍で過去最低に
令和6年度(令和5年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況について(文科省)
令和6年度の公立学校教員採用選考試験に関する調査結果が明らかになりました。この調査は文部科学省が実施したもので、試験を実施する68の都道府県と指定都市教育委員会のデータをまとめたものです。今回の調査結果には、採用倍率の最低記録や受験者数の減少など、近年の教員採用における重要な傾向が示されています。
今回の全体的な採用倍率は3.2倍と、過去最低の水準に達しました。前年度の3.4倍から低下しており、受験者総数が115,619人と5,344人の減少を記録しました。一方で、採用者数は36,421人となり、前年度比で440人増加しています。これらのデータは、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、養護教諭、栄養教諭を含むすべての区分を合計した結果です。
小学校区分では、採用倍率が2.2倍と過去最低を記録しました。受験者数は36,259人で、前年度から2,642人減少。新卒者が369人、既卒者が2,273人減少したことが大きな要因とされています。一方、採用者数は16,793人と241人減少していますが、過去20年間で最も高い水準を維持しています。これには大量退職の影響や既卒者の受験者数減少が関与していると分析されています。
中学校では、採用倍率が4.0倍で前年度の4.3倍から低下しました。採用者数は9,830人で241人増加したものの、受験者数は39,030人と1,930人減少しました。内訳を見ると、新卒者が26人増加した一方で、既卒者は1,956人減少しています。この既卒者減少の背景には、学校現場での任用経験がある層が正規採用され、受験者総数が減少した点が挙げられます。
高等学校においても採用倍率は4.3倍で前年度の4.9倍を下回りました。採用者数は4,917人で318人増加しましたが、受験者数は21,331人と1,129人減少しました。この減少は新卒者および既卒者のいずれも減少している点が顕著です。
また、特別支援学校や養護教諭、栄養教諭についてもそれぞれの採用倍率や採用者数、受験者数の変動が報告されています。特別支援学校の採用倍率は2.2倍で前年度の2.3倍から低下し、養護教諭では8.2倍で前年の7.4倍から上昇しました。さらに、栄養教諭の採用倍率は9.2倍となり、前年度の8.8倍から上昇しています。
文部科学省では、これらのデータを基に多様な専門性を持つ教員集団の形成を進めることを目指しており、学校の働き方改革や待遇改善に取り組む方針を示しています。また、産休や育休の代替者に正規教員を起用する制度改正を行い、安心して休暇を取得できる環境づくりを進めています。
これらの施策は、教職の魅力を向上させることを目的としており、新たな教員志願者の増加を目指しています。特に中長期的な課題として、受験者数の減少傾向を食い止めるための抜本的な取り組みが求められていると言えるでしょう。質の高い教員確保と志願者数の拡大が、日本の教育の未来にとって重要な鍵となるでしょう。
⇒ 詳しくは文部科学省のWEBサイトへ