2025年3月8日
労務・人事ニュース
全国の騒音苦情が前年比2.7%減!環境省が発表した最新の対策状況とは?(令和5年度騒音規制法等施行状況調査)
令和5年度騒音規制法等施行状況調査の結果について(環境省)
環境省は2025年2月21日、「令和5年度騒音規制法等施行状況調査」の結果を公表した。この調査は、全国の都道府県、市町村、特別区を対象に、騒音に関する環境基準の達成状況や、騒音規制法に基づく各種措置の施行状況を把握し、騒音防止行政の推進に役立てることを目的として毎年実施されている。今回の報告では、騒音に関する苦情の件数や規制地域の指定状況、規制対象の工場・事業場および建設作業の届出状況、行政措置の実施状況などが詳しくまとめられた。
令和5年度末時点で、騒音に関する環境基準が適用される地域を有する市区町村は全国の71.3%に当たる1,241市区町村であり、前年度と同じ数となった。また、環境騒音の測定を実施した地方公共団体は292市区町村(前年度305市区町村)であり、全測定地点2,297地点(前年度2,414地点)のうち、環境基準を達成した地点は2,067地点(前年度2,192地点)であり、達成率は90.0%(前年度90.8%)となった。これらの結果から、騒音環境の改善が一定の水準で維持されていることが分かるが、一部の地域では引き続き対策が求められる状況にある。
騒音に関する苦情の件数は、令和5年度は19,890件となり、前年度の20,436件から546件減少し、前年比2.7%の減少となった。苦情の内訳を分析すると、最も多かったのは建設作業に関するもので7,466件に達し、全体の37.5%を占めた。次いで、工場・事業場に関する苦情が5,115件(25.7%)、営業施設に関連する苦情が1,852件(9.3%)となった。これらのデータから、騒音の発生源は多岐にわたり、それぞれの分野で異なる対策が求められていることが明らかになった。
騒音規制法に基づく規制地域の指定状況についても報告された。令和5年度末時点で、全国の市区町村のうち1,330市区町村(全体の76.4%)が規制地域として指定されており、前年度と同じ数を維持している。また、規制対象となる工場・事業場(特定工場等)の総数は212,455件であり、前年度の210,237件から2,218件増加した。さらに、規制対象となる建設作業(特定建設作業)の総届出件数は91,026件で、前年度の90,589件から437件増加した。この結果から、工場・事業場や建設作業に対する規制の適用が着実に進んでいることが分かる。
騒音規制法に基づく行政措置の状況については、特定工場等に関する苦情の件数は490件であり、前年度の605件から115件減少した。これに伴い、騒音規制法に基づく報告の徴収は75件(前年度104件)、立入検査は239件(前年度310件)、騒音の測定は96件(前年度153件)と、それぞれ減少傾向にある。測定の結果、規制基準を超えていた事例は43件であり、前年度の61件から18件減少した。このことから、特定工場等における騒音対策が一定の効果を上げていることが伺える。一方で、行政指導の件数は266件(前年度360件)と減少し、改善勧告は0件(前年度0件)、改善命令は1件(前年度0件)となった。
特定建設作業に関する苦情の件数は1,739件となり、前年度の1,926件から187件減少した。行政措置として、騒音規制法に基づく報告の徴収は260件(前年度297件)、立入検査は1,009件(前年度1,240件)、騒音の測定は176件(前年度213件)と、それぞれ減少傾向にある。一方で、測定の結果、規制基準を超えていた事例は58件となり、前年度の43件から増加した。この増加傾向を受け、建設作業における騒音対策のさらなる強化が求められる状況にある。また、特定建設作業に関する行政指導の件数は1,112件(前年度1,377件)と減少し、改善勧告および改善命令は0件(前年度0件)となった。
環境省は今回の調査結果を踏まえ、引き続き自治体と連携し、騒音防止対策の強化を進める方針を示している。特に、都市部の建設作業による騒音対策の徹底、工場・事業場における機械設備の騒音管理の強化、飲食店や商業施設の騒音対策の改善が求められる。また、騒音監視の効率化を図るため、IoT技術やAIを活用した監視システムの導入が期待される。リアルタイムで騒音レベルを監視し、異常が発生した際に自動通知を行うシステムの開発が進められており、これらの技術の活用による騒音対策の高度化が求められる。
今後、環境省は今回の調査結果をもとに、具体的な政策の立案を進め、規制のさらなる強化や対策の拡充を検討する。特に、騒音に関する苦情が多い業種や地域については、より効果的な措置を講じることが求められる。
⇒ 詳しくは環境省のWEBサイトへ