2024年9月23日
労務・人事ニュース
出生率低下と死亡率上昇、今後10年間で企業が直面する人材確保の壁
人口動態統計月報(概数)(令和6年4月分)(厚労省)
日本における人口動態の変化は、企業にとって極めて重要なテーマです。採用活動は、人口減少が続く中でさらに困難になることが予測され、特に生産年齢人口の減少が深刻な課題となっています。この変化は、経済活動を支える人材の確保が今後どのように進展していくかに大きな影響を与えるため、企業の採用担当者にとって見逃せない問題です。
まず、日本の総人口は長期的に減少を続けています。最新の人口統計によれば、2023年時点での総人口は約1億2100万人とされていましたが、2024年初頭にはこの数値がさらに低下し、約1億2070万人にまで減少しています。この傾向は今後も続くと予想されており、特に生産年齢人口、すなわち15歳から64歳までの人口が大きく減少することが問題視されています。この層は、経済活動の中心を担う労働力であり、彼らの減少は労働市場において深刻な影響を与えると考えられます。
日本の出生数と死亡数の動向も注目すべき点です。2023年には、出生数が約76万人である一方、死亡数は約158万人に達しました。この差は、自然増減として年間約82万人の人口減少を示しています。この人口動態の変化は、今後も急速に進行し、特に若年層の人口が減少することで、将来的には労働力の確保がますます難しくなることが予測されます。このため、企業の採用担当者は、現在の人口動向をしっかりと理解し、将来に向けた戦略を練る必要があります。
また、婚姻件数や離婚件数も人口動態に影響を与える要因です。2023年の婚姻件数は約39万5000件、離婚件数は約10万5000件でした。婚姻率の低下は、出生率の低下と密接に関連しており、少子化が進行する一因となっています。これは将来の人口減少をさらに加速させる可能性があり、結果的に労働市場にも影響を与えます。少子化と高齢化が同時に進行する日本では、将来的に企業が必要とする労働力が限られてくることが避けられません。この現実を踏まえ、採用担当者は今からその対策を講じることが重要です。
次に、地域ごとの人口動態についても触れていきます。日本全体として人口が減少している一方で、都市部と地方部ではその傾向に違いがあります。東京都や神奈川県、大阪府といった大都市圏では、まだ人口が比較的安定しているものの、地方都市や農村部では人口減少が顕著です。特に若年層の流出が激しく、地方では労働力の確保がますます困難になっています。この地域差は、企業の採用活動においても大きな課題となっており、地方に拠点を持つ企業は、地域ごとの人口動向を理解した上で、採用戦略を再構築する必要があります。
さらに、労働力の供給を補うための手段として、外国人労働者の存在が注目されています。2024年時点で、外国人労働者は日本の労働市場において重要な役割を果たしつつありますが、全体の労働力に占める割合は依然として低いです。しかし、少子高齢化が進む中で、外国人労働者の活用は今後ますます重要になると考えられています。企業は、労働力不足を補うために、外国人労働者を積極的に受け入れる姿勢を持つべきです。また、外国人労働者の増加に伴い、多文化共生やダイバーシティの促進も重要なテーマとなります。企業は、外国人労働者が円滑に働ける環境を整備し、多様な人材が活躍できる企業風土を作り上げることが求められます。
採用担当者が直面する課題は、労働力の確保だけではありません。企業が今後も成長し続けるためには、単に人材を確保するだけでなく、優秀な人材を引きつけ、定着させるための工夫が必要です。これには、従来の採用方法に依存せず、デジタル技術を活用した採用手法を積極的に取り入れることが含まれます。たとえば、オンライン面接やリモートワークの普及により、企業は地理的な制約を超えて優秀な人材を採用できるようになっています。特に、若年層の求職者は、柔軟な働き方やキャリアの選択肢を求める傾向が強いため、企業はリモートワークやフレックスタイム制など、従業員にとって働きやすい環境を提供することで、競争力を高めることができます。
また、採用活動においては、企業の魅力をしっかりと伝えることが重要です。少子高齢化が進む中で、求職者は選択肢が増える一方で、企業側は優秀な人材を確保するための競争が激化しています。企業のビジョンや社風、福利厚生などをアピールし、求職者にとって魅力的な職場環境を提供することが、採用成功の鍵となります。特に、労働市場が厳しくなる中で、企業がどのようにして従業員を大切にし、働きがいのある職場を提供しているかが、求職者にとって重要な判断材料となります。
さらに、今後の採用活動では、従業員のスキルアップやキャリア形成支援も大きなテーマとなります。労働力不足が深刻化する中で、企業は既存の従業員を育成し、スキルを向上させることで、生産性を高める必要があります。これには、研修プログラムの充実や、従業員のキャリアパスを明確にすることが含まれます。採用担当者は、単に新しい人材を確保するだけでなく、既存の人材を最大限に活用し、企業の成長を支えるための施策を講じることが求められます。
まとめると、日本の人口動態は今後も減少傾向が続くことが予想され、特に労働力の減少が企業の採用活動に大きな影響を与えます。企業は、地域ごとの人口動向や外国人労働者の活用、デジタル技術を活用した採用手法など、多角的なアプローチで人材確保に取り組む必要があります。また、企業が競争力を維持するためには、従業員の育成やキャリア形成支援も不可欠です。採用担当者は、これらの課題をしっかりと理解し、未来の労働市場に備えることが求められています。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ