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2024年11月15日

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総予算350億円で進める産科医療特別給付事業、2025年から5年間で脳性麻痺児に1,200万円支給

第111回社会保障審議会医療部会 資料 資料4 産科医療特別給付事業等について(厚労省)

産科医療特別給付事業は、産科医療補償制度の一環として、特定の要件を満たす脳性麻痺の子どもとその家族に対し、経済的支援を提供する制度です。この制度は2025年から2029年までの5年間、公益財団法人日本医療機能評価機構によって運営され、総予算は350億円と見込まれています。事業の財源は、産科医療補償制度の保険契約の特約による返還保険料と、剰余金の一部が活用されます。補償金の支給額は1,200万円であり、重度の脳性麻痺を患う子どもとその保護者を対象に、一括で支給される形式が採用される予定です。制度は、対象となる子どもや保護者が迅速に補償金を受け取れるよう、産科医療補償制度の既存システムやネットワークが活用される予定です。

この特別給付事業は、産科医療補償制度が持つ保障対象外のケースを対象とするため、特に2009年から2021年に生まれた子どもが重度の脳性麻痺を患った場合を基準にしています。給付対象の基準には、在胎週数や出生体重、重症度の基準など複数の条件が含まれ、例えば出生時に在胎週数が28週以上、出生体重が2,000グラム未満であった場合や、特定の重度基準を満たすことが条件となります。また、産科医療補償制度に基づく重度の身体障害者等級1級または2級相当の脳性麻痺も該当条件に含まれます。制度の設計では、予測対象者数が約1,627人とされ、補償の申請期間は2025年1月から2029年12月末までの5年間です。

特別給付事業の審査体制は、現行の産科医療補償制度の審査委員会を利用し、従来の審査と同様に申請に対する審査および不服申し立ての機会も設けられています。具体的な手続きは産科医療補償制度と同様で、保険会社との連携により効率的に給付が行われる体制が整備される計画です。また、必要な書類や監護状況の確認に応じて、場合により支援や訪問調査が行われることも考慮されています。

産科医療特別給付事業の創設は、産科医療の現場で過去に発生した医療事故や脳性麻痺の子どもへの支援の声を背景にしています。日本における産科医療の現状では、医療事故の過失判断が難しく、訴訟に発展するケースも多く見られます。こうした状況に対応するため、2009年には産科医療補償制度が設立され、医療事故で脳性麻痺を患った子どもとその家族を救済する制度が整備されました。この制度は、訴訟を回避することで早期の問題解決を図り、産科医療の安定的な運営を支えることを目的としています。また、原因分析を通じて、産科医療全体の質の向上を目指しています。

特別給付事業の背景には、2022年1月の補償制度の基準見直しもあります。補償基準が変更されたことで、従来の基準により補償対象外となった事例も新たな基準で再検討されるようになり、厚生労働省と自民党の調査会が連携して事業の枠組みを提案しました。厚生労働省はこれを受けて、制度の詳細設計を公益財団法人日本医療機能評価機構に委託し、2024年3月から7月にかけての5回の審議会で議論が行われました。この審議の結果、特別給付の対象基準や審査方法、財源の確保方法などが決定され、実施に向けた準備が進められています。

特別給付事業における原因分析の取り組みも重要な要素です。事業の枠組みの中で個々の事例について詳細な分析は行わず、対象者のデータを集約的に分析する方針がとられています。これにより、集団的なデータを用いて再発防止策や改善策を構築し、産科医療の質の向上に役立てることを目指しています。また、補償金の支払いについては、必要経費の負担を軽減するため、事務経費や申請に必要な諸費用の財源も確保されます。財源には、産科医療補償制度の余剰金が用いられる予定です。

今後のスケジュールとして、2024年11月からパブリックコメントが予定されており、2025年1月には特別給付事業が正式に開始される見込みです。関係団体や関係者への説明会も行われ、特別給付の周知が図られる計画です。この制度の導入により、産科医療の現場での安心感が高まることが期待されており、特に医療従事者や分娩機関にとっては安定した運営体制が整備されることが見込まれます。

産科医療特別給付事業は、産科医療補償制度の補完的な役割を果たすものであり、産科医療の質の向上に寄与するとともに、出生直後に重度の障害を負った子どもとその家族に対する経済的な支援が期待されます。企業の採用担当者にとっても、こうした制度の整備により医療リスクの軽減が図られ、企業活動がより安心して行える社会環境の整備につながる点が注目されるでしょう。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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