2025年3月5日
労務・人事ニュース
10代・20代のオーバードーズ問題に対応、厚生労働省が啓発冊子と動画を提供開始
市販薬の乱用防止を目的とした啓発関連資材を公開しました(厚労省)
令和7年2月20日、厚生労働省は、市販薬の乱用防止を目的とした啓発関連資材を公開した。近年、10代から20代の若者を中心に、市販の鎮咳去痰薬などを大量に摂取し、救急搬送されるケースや薬物依存に陥る事例が増加している。これにより、若年層に対する予防啓発活動や、適切な相談・支援体制の整備が求められている。こうした社会的な課題に対応するため、厚生労働省は「学校薬剤師・地区薬剤師会を活用したOTC濫用防止対策事業」を推進し、その一環として啓発用資材を作成した。これらの資材は、本日より厚生労働省の公式ウェブサイトおよびYouTubeチャンネルで公開され、誰でも閲覧できるようになっている。
今回の啓発資材には、若年層に対する啓発を目的とした冊子および動画が含まれている。この冊子は「薬のオーバードーズって何だろう~あなたとあなたの大切な人の命を守るために~」というタイトルで、小学生向けと中高生向けの2種類が用意されている。これらの教材は、市販薬の乱用がもたらす健康への悪影響や、依存症の危険性について分かりやすく解説し、特に若者が誤った情報に惑わされることなく、正しい知識を身につけることを目的としている。また、動画コンテンツも同様に、小学生向けと中高生向けに分かれており、視覚的に理解しやすい形で情報を伝える工夫がなされている。若者が自分自身や友人の行動を見直し、適切な選択をするためのきっかけとなることが期待されている。
さらに、薬局や薬店で市販薬を販売する薬剤師や登録販売者を対象とした「ゲートキーパーとしての薬剤師等の対応マニュアル」も作成された。このマニュアルでは、薬剤師や登録販売者が市販薬の乱用に苦しむ若者を適切な支援機関につなげるための対応方法が詳しく説明されている。実際の販売現場では、特定の薬剤を繰り返し購入しようとするケースや、不適切な使用が疑われる場面に直面することがある。その際に、どのように対応し、どのような支援機関につなげるべきかを明確にすることで、販売現場での適切な対応を促すことが狙いである。
市販薬の乱用問題は、近年深刻化しており、特に咳止め薬や鎮痛剤を大量に服用する「オーバードーズ」と呼ばれる行為が若者の間で広がっている。SNSなどを通じて誤った情報が拡散され、「簡単に手に入る薬で気分を変えられる」といった認識が広がっていることが一因と考えられる。しかし、大量摂取による健康被害は深刻であり、急性中毒や意識障害を引き起こし、最悪の場合は死に至ることもある。このため、早期に適切な知識を身につけることが重要であり、今回の啓発資材はそのための一助となることが期待されている。
厚生労働省では、市販薬の適正使用を促すため、引き続き周知啓発活動を進めていく方針を示している。今回の啓発資材は、厚生労働省のウェブサイトに掲載されており、誰でもダウンロード可能となっている。また、動画については厚生労働省の公式YouTubeチャンネルにて公開されており、学校教育の現場や家庭での学習に活用できるようになっている。特に、学校や薬局、医療機関などでの積極的な活用が推奨されており、今後、各都道府県や市町村と連携しながら、より広範囲に啓発活動を展開していく予定である。
医薬品は本来、適正に使用されることで健康を支えるものであり、不適切な使用によって命を危険にさらすことは本末転倒である。特に、市販薬は処方箋なしで容易に入手できるため、適切な知識がなければ乱用や依存につながるリスクが高い。今回の取り組みは、そのようなリスクを未然に防ぎ、若者の健康を守るための大きな一歩となる。今後も、行政と医療関係者、教育機関が連携し、市販薬の適正使用を啓発し続けることが求められる。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ