2024年9月15日
労務・人事ニュース
「ごみ屋敷」対策が急務、全国累計5,224件に上る現状
「ごみ屋敷」対策に関する調査<結果に基づく通知>(総務省)
「ごみ屋敷」問題に関する現状と取り組みを深掘りする内容をお届けします。市区町村における「ごみ屋敷」事案は、近年ますます増加傾向にあり、その対応が大きな課題となっています。「ごみ屋敷」は、物品の堆積による悪臭や害虫の発生、さらには火災のリスクなど、周辺住民や本人の生活環境に深刻な影響を及ぼしています。環境省の調査によれば、全国における「ごみ屋敷」の認知件数は平成30年度から令和4年度までの累計で5,224件に上ります。このような事案に対する市区町村の対応は一部で進展が見られるものの、多くの課題が依然として残されています。
「ごみ屋敷」問題に取り組む市区町村では、条例を制定するなどして対応を試みていますが、その実効性には限界があることが指摘されています。例えば、居住者が堆積物を有価物と主張し、廃棄物処理法上の「廃棄物」としての認定が困難な場合、排出指導が難航するケースが多く見られます。さらに、堆積物が一旦排出された後でも再発する事例が約3割に上るなど、根本的な解決には至っていない現状があります。
こうした背景の中で、市区町村が「ごみ屋敷」問題に取り組むためには、部局横断的な対応が求められています。環境省、厚生労働省、総務省(消防庁)、国土交通省などの関係省庁が連携し、廃棄物の該当性判断に関する情報や公営住宅入居者への対応、火災予防の観点からの情報を提供するなど、多角的な支援が行われています。また、福祉的支援が効果的であることが確認されており、介護施設への入所支援や成年後見制度の活用など、健康面や経済面での支援が不可欠であることが明らかになっています。
調査では、181事例のうち、未解消の事例が119件と多数を占めており、その要因として居住者が市区町村の対応に理解を示さず、協力を得られない状況が約8割を占めています。特に、単身世帯や高齢者世帯が多く、こうした世帯に対する支援が不十分であることが解消の難しさに繋がっています。さらに、約3割の事例では堆積物が再発していることが確認されており、再発防止のための持続的な支援が必要とされています。
一部の市区町村では、関係機関と連携して情報共有や対応方針の検討を行う体制を整備し、早期の対応に努めています。具体的には、医療機関や社会福祉協議会などとの連携を強化し、課題を抱える世帯に対する見守りや声掛けを実施することで、「ごみ屋敷」の早期発見に努めています。また、複数の部署が重層的に関わることで解消率が向上する例が見られる一方、対応が遅れると事態が深刻化するリスクが高まるとの指摘もあります。
調査によると、福祉的支援が複数の部署で実施された事例の解消率は約4割に達しており、環境担当と福祉担当が連携した取組みが有効であることが示されています。しかし、解消に至っていない事例においては、廃棄物としての認定や撤去指導が困難な状況が多く、法的な解釈や基準の明確化が求められています。
今後の展望として、再発防止に向けた取組みが重要となります。調査では、堆積物が再発した事例や再発する可能性があると判断された事例が多く、福祉的支援の継続が再発防止に効果を上げている例も報告されています。具体的には、ヘルパーによる居宅介護や生活保護ケースワーカーによる家庭訪問、または高齢者ごみ出し支援事業による戸別収集といった施策が効果を発揮していることが確認されています。
「ごみ屋敷」問題は、地域社会全体にとって無視できない課題であり、今後も多様なアプローチを通じた継続的な対応が求められます。市区町村においては、法的枠組みの整備と共に、関係機関との連携を強化し、福祉的支援を中心とした包括的な対応が必要不可欠です。また、再発防止に向けた継続的な支援と情報提供の充実が、持続可能な解決に向けた鍵となるでしょう。
これまでの調査結果は、全国の自治体が直面している「ごみ屋敷」問題の深刻さを浮き彫りにし、今後の政策立案において重要な示唆を提供しています。引き続き、実効性のある対策が講じられることが期待されます。
⇒ 詳しくは総務省のWEBサイトへ