2024年11月17日
労務・人事ニュース
【353,158円の給与総額】全国平均からわかる給与相場と地域ごとの特長
毎月勤労統計調査地方調査 令和6年5月分結果概要 表4 事業所規模30人以上 製造業(厚労省)
全国での常用労働者数は6000.2千人であり、平均総実労働時間は153.4時間とされています。このうち、所定内労働時間が139.8時間、所定外労働時間が13.6時間です。月間の出勤日数は18.2日と報告されています。給与面では、総額353,158円が支払われており、そのうちきまって支給される給与が340,462円、所定内給与は308,108円、特別給与として12,696円が支払われています。これに基づき、労働時間や給与額の傾向を地域別に分析することで、各地域の産業状況や労働環境の特徴を把握することができます。
北海道の労働環境は全国平均に比べてやや短めの労働時間と給与水準で特徴づけられます。常用労働者数は117.0千人、総実労働時間は144.0時間、所定内労働時間は131.7時間、所定外労働時間は12.3時間となっています。給与額は総額で263,718円、きまって支給される給与が255,849円、所定内給与は234,488円、特別給与として7,869円が支給されています。北海道の労働時間が他地域と比べて短めであることや、給与水準も相対的に抑えられていることから、観光業など季節的な影響が強い産業が多いことがうかがわれます。
東北地方では、青森県や岩手県、宮城県などの労働環境に注目できます。青森県では、常用労働者数が39.9千人、総実労働時間が155.9時間と、全国平均よりやや多めの労働時間が見られます。所定外労働時間が11.1時間と抑えられているものの、所定内労働時間が144.8時間に達しており、基本的な労働時間が長いことが示唆されます。給与面では、総額256,896円、きまって支給される給与が247,625円、所定内給与225,189円、特別給与は9,271円です。岩手県では、常用労働者数が60.0千人、総実労働時間が155.1時間で、所定内労働時間が143.3時間、所定外労働時間が11.8時間となっています。給与額は269,850円と青森県よりやや高めで、特に定期支給額が268,960円とほぼ総額を占めている点が特徴的です。宮城県はさらに労働環境が良好とされ、労働時間が155.5時間、給与総額319,264円と東北地方で最も高水準であることが確認できます。
次に、関東地方のデータに注目します。首都圏である東京都を中心に高賃金で多忙な労働環境が特徴的です。東京都の常用労働者数は非常に多く、労働者が集中しているため、全体の労働時間や給与も高めに設定されています。一般的に、関東地方では給与が全国平均を上回る傾向があり、労働者にとっては非常に魅力的な市場ですが、長時間労働が課題となるケースも見受けられます。
一方、関西地方や中部地方も産業の多様性が反映された労働環境を持っています。例えば、大阪府ではサービス業や製造業など多くの産業が集積しており、労働時間や給与の水準も全国平均を上回ることが多いです。愛知県など自動車産業の影響が強い地域では、一定の労働時間が維持されつつ、高い給与水準が保たれており、労働者にとっても安定した職場環境が提供されています。
企業の採用担当者にとって、こうした地域ごとのデータは、地方展開や人材配置を検討する際に重要な指針となります。例えば、特定の地域に新たな拠点を構える場合、その地域の労働者数や労働時間、給与水準を把握することで、企業としてどの程度の人件費が必要になるかを見積もることが可能です。また、労働時間が比較的短めで給与水準も抑えられている地域においては、労働条件の改善によって労働者の定着率を高める施策が求められる一方で、都市部では競争力のある給与水準や働きやすい環境の提供が不可欠です。
近年、リモートワークやハイブリッドワークの普及に伴い、地方においても柔軟な働き方を導入する企業が増加しています。これにより、地域間の労働条件の差異が縮小する可能性があり、地方での採用活動にも新たな可能性が生まれています。企業にとって、地域ごとの労働市場を把握することは、より優れた人材を確保するための鍵となります。具体的には、関東や関西といった都市部においては多忙な環境の中で競争が激化しているため、給与や福利厚生に対する要求が高まっているのに対し、地方においては生活コストの面での優位性を生かして、従業員の生活の質を向上させる取り組みが可能です。
このデータに基づく地域別の労働状況の分析は、採用戦略の構築においても不可欠です。特に、地域ごとの人材ニーズに応じた柔軟な給与設定や、長時間労働が定着している地域における労働時間の調整が求められることもあります。今後、企業が優れた人材を引きつけ、定着させるためには、地域特有の労働条件に対応する柔軟な施策を打ち出すことが重要になるでしょう。労働市場の多様化が進む現代において、採用担当者には、こうした地域別データをもとに適切な採用活動を展開する能力がますます求められています。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ