2025年2月22日
労務・人事ニュース
がん検診への関心75%も「大いに関心」は14%にとどまる
令和6年度(2024年度)中小・小規模企業での「がん対策」(検診・就労)の実態調査結果報告(がん対策推進企業アクション事務局)
令和6年度(2024年度)、中小企業におけるがん対策の現状が明らかになった。がん対策推進企業アクションは、大同生命保険株式会社(東京都中央区)と共同で、全国の中小企業を対象にした実態調査を実施。その結果をまとめたレポートが公表された。この調査は令和2年度(2020年度)から5年連続で行われており、日本の中小企業ががん対策をどのように進めてきたのかを把握する重要な資料となっている。
今回の調査は、2024年11月1日から30日にかけて、大同生命の営業担当者が企業を訪問し、対面またはZOOMを活用したオンライン面談でアンケートを実施した。また、調査時にはがんに関する基礎的な知識や、がん対策を推進するための具体的な方策を記載したチラシが配布され、単なるアンケート調査にとどまらず「大人のがん教育」の一環としても機能した。
調査に回答した企業数は、令和2年度が10,953社、令和3年度が7,946社、令和4年度が9,152社、令和5年度が7,376社、そして今年度(令和6年度)は7,999社となった。この5年間の継続調査により、中小企業におけるがん対策の全体像が浮かび上がってきた。
調査結果によると、全国の中小企業経営者のがん検診受診率は約70%に達していることが分かった。一方で、経営者のがん検診への関心は75%と高めであるものの、「大いに関心がある」と答えた割合は14%と低い傾向にあった。興味深い点として、経営者自身のがんに対する関心度が高い企業ほど、がん検診の実施率が飛躍的に上がるという結果が示された。
また、企業全体で見ると、従業員のがん検診については約6割の企業が実施または推奨していると推測された。特に、近年では従業員のがん検診受診状況を把握できている企業が増加しており、企業内の健康管理意識が向上している様子がうかがえる。
一方で、従業員のがん罹患者数は増加傾向にあるものの、その勤務継続率には大きな変化がなく、約3割の罹患者が退職していることが明らかになった。これは、企業におけるがん患者の就労支援や職場復帰の仕組みがまだ十分に整備されていない可能性を示唆している。
また、HPVワクチンに関する認知度についても調査が行われ、「HPVワクチンの実情を知らない」と回答した企業経営者は16%にとどまり、比較的認知度が高まっていることが確認された。これは、女性特有のがん予防に対する社会的関心が高まっていることの表れと考えられる。
今回の調査結果からは、中小企業におけるがん対策の進展が見て取れる一方で、課題も多く残されていることが明らかになった。特に、経営者の意識が従業員の健康管理に大きく影響することが改めて示されており、今後は企業内のがん対策をさらに強化する取り組みが求められる。企業の健康経営がますます重要視される中、今回のレポートは今後の対策を考える上で貴重な資料となるだろう。
⇒ 詳しくはがん対策推進企業アクション事務局のWEBサイトへ