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2025年3月11日

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きまって支給する給与は315,351円!企業の賃金戦略に求められるものとは?(毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報)

毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報 第1表 月間現金給与額(厚労省)調査産業計

令和6年の毎月勤労統計調査によると、調査産業計における現金給与総額は397,789円であり、前年同月比3.3%の増加を記録した。この増加率は、昨今の賃上げの流れを反映しており、企業が人材確保のために給与を引き上げる動きが加速していることを示している。特に、基本給に該当する「きまって支給する給与」は315,351円で前年比2.6%増加し、物価上昇に伴う生活費の負担増を一部カバーする形で賃金が上昇している。しかし、物価上昇率が賃金の伸びを上回る場合、実質賃金の低下が懸念されるため、企業としては給与の引き上げだけでなく、福利厚生の充実や勤務環境の改善といった総合的な対策が求められる。

また、所定内給与は290,654円で前年比2.7%の増加を記録し、企業が基本給の底上げを進めていることがうかがえる。一方で、所定外給与(いわゆる残業代)は24,697円となり、前年比0.6%増と微増にとどまった。これは、働き方改革が進み、長時間労働を抑制する取り組みが成果を上げていることを示している。特に、労働基準法の改正や企業による労働時間管理の強化により、過度な残業が減少していることが背景にあると考えられる。

さらに、特別に支払われた給与、すなわちボーナスや一時金については、82,438円となり、前年比6.0%の増加が確認された。これは、企業が業績の改善に伴い、従業員への還元を積極的に行っていることを示唆している。特に、近年の人手不足を背景に、優秀な人材の確保や定着を目的とした報酬制度の強化が進んでいる。ボーナスの増加は、労働者のモチベーション向上にも寄与するため、企業にとっても労働力の安定確保という観点から重要な施策となる。

産業全体を見た場合、給与の増加傾向は続いているものの、業種によるばらつきが見られる。例えば、製造業や建設業では、賃金の上昇率が比較的高く、労働市場の活性化が進んでいる一方で、小売業や宿泊業・飲食サービス業などのサービス業では依然として低賃金が課題となっている。このような業種ごとの賃金格差は、求職者の職業選択にも影響を与え、人材の流動性を高める要因となっている。

企業の採用担当者にとって、賃金の動向は重要な指標である。給与が上昇する中で、優秀な人材を確保するためには、単に賃金を引き上げるだけではなく、職場環境の改善やキャリアアップ支援の充実が不可欠となる。特に、若年層の労働者は給与面だけでなく、ワークライフバランスの確保や自己成長の機会を重視する傾向が強いため、企業は採用戦略の見直しを迫られている。

今後の課題として、企業は人材確保のためにどのような施策を講じるべきかが問われている。賃金の上昇が続く中で、企業が収益を確保しつつ従業員の待遇を改善するためには、業務の効率化や生産性向上が求められる。また、デジタル化や自動化の推進により、労働負担を軽減し、少ない人員でも高い成果を上げる仕組みを構築することが、企業の競争力向上につながる。

一方で、政府も労働環境の改善に向けた施策を進めており、特に中小企業に対しては、賃上げ支援策や補助金制度の充実が図られている。こうした制度を活用することで、企業はより積極的に従業員の待遇改善に取り組むことが可能となる。特に、最低賃金の引き上げが継続的に行われていることを考慮すると、企業はこれを見越した賃金設計を行い、従業員のモチベーション向上を図る必要がある。

総じて、令和6年の賃金動向は、企業にとって採用戦略の見直しを促す重要な要因となっている。給与の上昇は労働者にとっては朗報であるものの、企業側にとってはコスト増加という課題も伴う。このため、今後は単なる賃上げだけでなく、より広範な働き方改革が求められる時代となるだろう。企業が柔軟な雇用制度を導入し、従業員にとって魅力的な職場環境を整備することが、長期的な成長につながると考えられる。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ