2025年2月2日
労務・人事ニュース
ぼうさいこくたい2024で示された未来の防災ビジョン
令和6年(2024年)冬号(地震本部)
2024年冬号の地震本部ニュースでは、地震調査研究推進本部(以下「地震本部」)が推進してきた取り組みを詳細に紹介しています。本部は、政府が特別に設置した機関として、日本国内の地震調査研究を一元的に管理し、防災政策に活用できる科学的な基盤を提供する役割を果たしています。今回の号では、特に阪神・淡路大震災から30年を迎えるにあたり、その教訓と成果、そして未来に向けた取り組みが多角的に報告されました。
まず、2024年12月に開催された「地震本部地域講演会 in 神戸市」では、阪神・淡路大震災の30年にわたる歩みを振り返るとともに、防災への備えが改めて議論されました。この震災では6,434名もの命が失われたことを契機に、地震本部が設立されました。当日は、文部科学省地震火山防災研究課の吉田和久室長をはじめとする専門家が講演し、震災から得られた教訓や、地域防災力の向上に向けた取り組みが具体的に紹介されました。特に、阪神・淡路大震災時の「震災の帯」と呼ばれる被害集中地帯について、その原因や地形条件が詳しく解説されました。さらに、南海トラフ地震との関連性についても議論され、今後予想される災害に備えるための具体的な防災策が提示されました。
また、2024年10月には熊本市で「ぼうさいこくたい2024」が開催され、地震本部と新たに設置された火山本部が合同セッションを実施しました。このセッションでは、両本部のこれまでの成果や課題が振り返られるとともに、今後の防災研究における連携強化の必要性が議論されました。特に、地震本部が推進してきた全国地震動予測地図や海底地震津波観測網の整備が紹介され、これらの成果が実用化に向けて社会にどのように役立つかが説明されました。一方で、研究成果がまだ十分に認知されていない課題が指摘され、今後はさらに広範な普及活動が求められると結論づけられました。
地震調査研究の分野では、最新の調査手法が導入され、評価の精度向上が進んでいます。「活断層評価の高度化・効率化のための調査手法の検証」プロジェクトでは、従来の手法では難しかった活断層の調査に対し、ドローンやレーザー測量、宇宙線生成核種年代測定といった新技術を活用することで、より精密なデータ取得が可能になりました。この取り組みにより、従来評価が困難とされた活断層についても、具体的なデータが収集され、今後の長期評価に大きく貢献することが期待されています。
さらに、地震発生メカニズムの解明を目指した大型岩石摩擦実験が注目されています。この研究では、地震の再現を可能にする装置を用いて、断層の動きを詳細に調べています。この実験により、地震がどのように発生し拡大していくのかというメカニズムが明らかにされつつあります。特に、「プレスリップ」と呼ばれる地震の始まりの段階が詳しく解明され、これが前震の発生に関与していることが確認されました。この研究は、地震発生の予測精度を高め、災害の被害を軽減するための鍵となると考えられています。
最後に、地震本部ニュースでは「津波レシピ」という津波評価手法についても触れられています。従来の手法はプレート境界型巨大地震に限定されていましたが、新たな研究では、アウターライズ地震や津波地震といった他の地震タイプにも対応できるよう手法を拡張中であると報告されています。この取り組みが進むことで、全国沿岸の津波リスクがより詳細に評価されることが期待されています。
地震本部は今後も地域講演会や防災イベントを通じて、調査研究の成果を広めるとともに、社会全体の防災意識を高める活動を続けるとしています。
⇒ 詳しくは地震本部のWEBサイトへ