2024年9月14日
労務・人事ニュース
アニメ市場の成長続く 2024年の売上3400億円予測、企業別動向を分析
帝国データバンク「「アニメ制作市場」動向調査2024」(2024年8月27日)
2024年のアニメ制作市場に関する帝国データバンクの調査レポートによれば、アニメ業界は近年、劇場版アニメや動画配信サービスの成長に支えられて、過去最高の売上を記録しています。特に2023年には、アニメ制作業界全体の売上が3390億円を超え、前年と比較して22.9%の増加を見せました。この成長は、テレビアニメの安定した制作本数に加え、動画配信サービス向けの大規模な制作案件が多かったことが大きな要因とされています。
劇場版アニメのヒットも業界の成長を後押ししました。『すずめの戸締まり』などの大ヒット作品が興行収入を押し上げ、制作会社の収益増加に寄与しました。2024年もこの勢いは続くと予測されており、市場規模は3400億円前後に達する見込みです。
また、2023年の制作会社1社あたりの平均売上高は11億2300万円と過去最高を記録しました。ただし、この平均売上高の増加は主に「元請・グロス請」の制作会社に限られ、下請けである「専門スタジオ」では伸びが限定的でした。特に元請・グロス請では、VODサービスを経由した過去作品の配信やリバイバルが安定的に収益をもたらしており、2023年には23億6300万円の平均売上高を記録しました。これに対し、専門スタジオでは3億9100万円にとどまり、収益格差が広がっています。
損益面でも、元請・グロス請は収益力が強化されており、2023年には「黒字」が5割を超えました。一方、専門スタジオでは「赤字」割合が4割を超え、厳しい状況が続いています。アニメ制作会社の多くは依然としてアニメーター不足に直面しており、制作スケジュールの遅延や外注費の増加が収益を圧迫しています。
2024年以降もアニメ業界の成長は続くと見られていますが、その成長にはいくつかの課題も伴います。特に、アニメーターの低賃金問題や、制作会社間の収益格差が深刻化している点が指摘されています。また、IP(知的財産)を保有する制作会社とそうでない会社との間で収益力の差が顕著になっており、業界全体での二極化が進行中です。
さらに、生成AIの技術が進化する中で、アニメ制作にもAIが導入され始めています。これにより、制作効率の向上が期待される一方で、著作権侵害のリスクも増大しており、日本のアニメ産業を守るための対策が求められています。
アニメ業界は今後も多様な収益源を模索しながら成長を続ける見込みです。劇場版や配信サービス向けの制作が主流となる中で、制作会社は自社IPの保有を進める動きが加速しています。また、国内市場においてもNetflixなどの配信サービスが独自作品に巨額の資金を投じており、これが制作会社の重要な収益源となっています。これにより、従来のテレビアニメ中心のビジネスモデルから、劇場版や配信サービスを含む多角的なビジネスモデルへの移行が進んでいます。
一方で、アニメーターを中心とした制作現場の労働環境の改善や、制作コストの適正化も今後の課題です。特に、低賃金で働くアニメーターに対する支援策が求められています。また、アニメ産業全体の収益が増加している中で、その利益が制作現場にどのように還元されるかも注目されています。
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