2024年11月15日
労務・人事ニュース
オンライン診療のガイドライン強化!全国12,500医療機関が新基準を適用
第111回社会保障審議会医療部会 資料 資料2 適切なオンライン診療の推進について(厚労省)
厚生労働省がオンライン診療の適切な推進を目指し、包括的な指針と規制を発表しました。これにより、医師と患者が遠隔で診療を行う際の基準が明確化され、より安全で効率的な医療提供が期待されています。新たなガイドラインでは、診療所や医療提供施設外の居宅、職場、デイサービスなど、長時間滞在する療養生活の場でもオンライン診療が可能となりました。これにより、アクセスが難しい地域の患者や忙しいビジネスパーソンにとって、オンライン診療の利用が一層身近なものとなります。
オンライン診療の適用範囲についても明確な定義が与えられており、診断・処方をリアルタイムで行う行為として位置づけられています。患者への一般的な情報提供に留まらない「診断等の医学的判断を伴う診療行為」をオンラインで実施する場合は、この指針に従うことが義務付けられました。また、従来の「遠隔診療」という定義から、より精緻な「オンライン診療」という名称に変更されたことも注目に値します。医師法第20条による無診察治療の禁止に抵触しない範囲で実施されるべきとされ、対面診療と同様の責任が課せられています。
具体的な基準としては、医師と患者の信頼関係の構築や診療計画の作成、患者合意の取得、診療時の本人確認、通信機器の使用環境などが挙げられます。特に、オンライン診療が行われる場所については、医療提供施設の衛生基準を満たし、患者のプライバシー保護が担保された環境が求められます。都市部を含めて、医師非常駐の診療所も一定の条件下でオンライン診療を提供できるようになった点は、従来の制度からの大きな変化といえます。これにより、医療アクセスが困難な地域だけでなく、都市部でもオンライン診療の導入が進むことが期待されます。
医療従事者側の取り組みとしては、適切なオンライン診療を実現するための医師教育が推奨され、患者に対しても事前の理解促進が必要とされています。質の評価とフィードバックの仕組みも整備され、エビデンスの蓄積を通じてサービスの質が向上していくと考えられます。また、違法行為や疑わしい事例に対応するための基準が策定され、保健所による指導や立入検査の可否や手順が明確化されました。特に美容医療においては、医療法制の解釈に依存してきた部分が多く、今後はオンライン診療指針に基づき、より明確で一貫した運用が求められています。
オンライン診療を行う診療所については、定期的に診療を行わない場合や、一定の場所で継続的に診療が行われない場合には、新たな開設手続きが不要とされるケースもあります。この柔軟な運用により、診療の効率化と患者利便性の向上が図られ、特に巡回診療の取り扱いに関する規定に従って運営が可能です。
さらに、通所介護事業所や学校など、患者が長時間滞在する場所でオンライン診療を受ける場合についても、具体的な条件が示されています。これらの場所は居宅と同様に療養生活を営む場とみなされ、オンライン診療を実施できる条件が整えられています。必要に応じて機器操作を支援する職員が配置され、患者が自ら医療を求める意向がある場合には、医師の診療行為が迅速に提供されるようになっています。例えば、高齢者向けのデイサービス施設では、通常の介護サービスと医療行為の明確な区分が図られ、介護サービス時間外にオンライン診療がサポートされることも可能となっています。これにより、利用者が安全かつ安心して診療を受けられるような体制が整備されています。
一方、違法行為の疑いがあるケースに対応するために、診療録の記載内容の見直しや、報告制度の充実が求められています。これにより、違法医療機関の実態把握が進み、医療提供の透明性が高まることが期待されています。また、患者が利用する医療機関が違法行為を行っているかどうかを識別しやすくするため、国民の医療法制に関する理解促進や業界ガイドラインの策定も進められています。
オンライン診療を行う医療機関数も年々増加しており、令和6年時点で約12,500機関に達しています。このような背景から、厚生労働省では、さらなる規制改革を進めるとともに、今後もオンライン診療の普及と質向上に向けた取り組みを継続するとしています。将来的には、オンライン診療がより一般的な医療の一環として普及し、患者と医師の双方にとってメリットが享受されることが見込まれます。
これまでのオンライン診療の拡充に関する取り組みは、特にへき地での医療アクセスの向上を主眼としていましたが、都市部でも導入が進みつつあります。医療施設の負担軽減や患者の利便性向上に寄与するオンライン診療は、今後も多くの医療機関で導入が進み、健康管理の効率化が進むと考えられます。急変時の対面診療との連携も重視されており、医療機関が地域の関係者と協力して対応できる体制が求められています。こうした取り組みにより、地域医療の質が向上し、患者の安心感が高まることが期待されています。
厚生労働省は、引き続きオンライン診療の適切な実施を促進し、医療サービスの質と利便性を両立させるための取り組みを推進しています。医療従事者に求められる専門的知識の提供や教育も強化され、さらに広範なエビデンスの蓄積が進む見通しです。今後もオンライン診療の実施基準が進化し、地域や診療内容に応じた柔軟な医療サービスが提供されることで、日本全国で医療アクセスの向上が進むことが期待されます。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ