2024年3月30日
労務・人事ニュース
コロナ禍の影響と企業の適応戦略 生産、雇用、テレワークの転換点
「新型コロナウイルス感染症が企業経営に及ぼす影響に関する調査 (第1~6回)」結果(JILPT)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界に広がり始めて以来、多くの企業は未曽有の経済危機に直面してきました。この状況下で、企業がどのように経営戦略を変更し、雇用状況をどう維持しているのかを探るため、2020年6月から2022年2月までの期間、一連の調査が行われました。この調査では、2ヶ月ごとに、地域別、企業規模別の層化サンプリングを通じて選出された企業に対し、6回にわたる網羅的な調査が実施されました。
調査結果によると、生産量と売上高は大幅に落ち込みましたが、人件費の減少はそれほど顕著ではありませんでした。さらに、従業員数の減少は限定的で、多くの企業が雇用の維持に努めていることが明らかになりました。雇用の維持は、特に労働時間の短縮や賃金調整によって行われています。一方で、新型コロナウイルスの感染拡大以前から続く人手不足の問題は、この期間中も依然として企業にとって大きな課題となっており、特に正社員や正規従業員の不足が顕著でした。
調査では、企業が現在の生産および売上レベルを維持することができる期間も明らかにされました。このデータによると、雇用削減の必要がないとする企業の割合は時間の経過とともに増加しており、雇用を維持することへの強い意志がうかがえます。また、新型コロナウイルスの影響で経済活動が一時的に停滞したにもかかわらず、人手不足の問題は今後も続くと予想されています。
在宅勤務については、2020年4月から5月の最初の緊急事態宣言時に実施率が大幅に増加し、以降も一定の割合で続いていることが分かりました。テレワークは主に南関東地域、情報通信業界、大企業で積極的に取り入れられています。
経済的支援策として、多くの企業が資金繼り支援、持続化給付金、雇用調整助成金などを利用しています。特に、飲食・宿泊業界での利用が顕著でした。今後の業績に関しては、企業の約4分の1が明確な見通しを持っていませんが、業務拡大や新事業の立ち上げを考えている企業も増えています。
人材戦略の面では、雇用の維持や人材の育成、中途採用の強化、教育訓練の促進が重視されています。また、企業の約3分の2がデジタル化を進めており、テレワークやペーパーレス化、オンラインでの業務実施、クラウド化などが主な取組みです。ポストコロナを見据えた時、ペーパーレス化、オンライン活用、クラウド化が今後も重視される方針です。
最後に、賃上げに関しては、約3分の2の企業が感染拡大期に賃上げを実施しており、今後も7割の企業が賃上げを予定しています。賃上げの理由としては、社員のモチベーション向上や定着、業績向上、物価上昇への対応が挙げられています。