2024年12月26日
労務・人事ニュース
スルメイカ資源の現状と未来:令和6年度の評価結果から見える持続可能な漁業管理の可能性
令和6年度我が国周辺水域の水産資源に関する評価結果が公表されました(スルメイカ)(水産庁)
令和6年12月13日、水産庁は国立研究開発法人水産研究・教育機構による令和6年度のスルメイカ資源評価結果が公表されたことを発表しました。この評価は、我が国周辺水域における主要水産資源の保存と持続可能な管理を目的として実施されるもので、スルメイカについては秋季発生系群と冬季発生系群の2つの資源が評価対象となりました。
水産資源の評価は、国立研究開発法人水産研究・教育機構が関係都道府県の研究機関と連携して行うもので、資源の現状や変動傾向を科学的に分析し、持続可能な漁業の推進に活用されます。今年度の結果は、スルメイカ資源の現状を理解するうえで重要な指標となり、適切な漁獲管理に向けた具体的な指針を提供するものとされています。
詳細な評価結果は、水産研究・教育機構の公式ウェブサイトで公開されており、スルメイカの資源状況や将来的な動向に関心のある漁業関係者や研究者にとって有益な資料となっています。秋季発生系群と冬季発生系群について、それぞれの評価結果や追加資料が提供されており、今後の漁業政策や地域経済への影響を考える際の基礎データとしても注目されています。
スルメイカは、国内漁業にとって重要な漁獲対象であり、適切な管理のもとで持続可能な資源利用を確保することが求められています。今回の公表を機に、関係者間でさらなる議論が進むことが期待されます。
評価結果の詳細に関心がある方は、水産研究・教育機構の公式ページをご覧ください。
スルメイカ漁獲量が大幅減少、2023年の漁期でわずか2.8万トンに
2024年12月13日に公開された最新の報告によると、日本周辺海域に広く分布するスルメイカ(秋季発生系群)の資源状況が詳しく解析されました。この系群は、秋季に山陰から東シナ海北部で産卵し、春から夏季に日本海を北上、秋季には南下する群れを形成します。近年、この系群の漁獲量や資源量の動向が注目されており、その管理方針に関する議論が進められています。
1980年代にはスルメイカの漁獲量が比較的少ない状態が続きましたが、1990年代に入ると増加傾向を示し、1996年にはピークの31.5万トンに達しました。しかし、それ以降は減少が目立ち、2023年漁期には日本と韓国の漁獲量が合計で2万トン、中国を含めた推定値では2.8万トンにとどまっています。これは過去数十年間で最も低い水準の一つであり、資源の枯渇が懸念されています。
資源量の推移を見ると、1990年代後半から2010年代前半にかけて高い水準を維持していましたが、2016年以降は減少に転じ、2021年漁期以降は低水準にとどまっています。直近5年間で見ると、2023年の親魚量は9万トンと、目標管理基準値や過去の水準を大きく下回る状態です。この減少傾向は、漁業資源の持続可能性に対する警鐘を鳴らしています。
現在の管理基準値案によると、スルメイカの最適な親魚量(SBmsy)は25.5万トンと算定されており、最大持続生産量(MSY)を達成するための漁獲量は24万トンとされています。一方で、禁漁水準として提案される値は0.9万トンとされており、これは資源量が極端に減少した場合に必要とされる最低限の保全策となります。2023年漁期の親魚量がこれらの基準値を大幅に下回っていることは、より厳格な管理方針の必要性を示唆しています。
また、再生産関係を分析した結果、資源量と加入量の間に強い相関が認められましたが、近年の加入量は低迷しており、予測される将来の資源状況も楽観視できない状況です。2034年に親魚量が目標管理基準値を上回る確率は、現在の漁獲圧を維持した場合でわずかに46%とされており、より積極的な管理策が求められています。
具体的な将来予測として、βという調整係数を用いた漁獲管理規則案が提示されました。この案では、βを0.35とした場合、2034年には親魚量が目標管理基準値を50%以上の確率で上回ることが期待されます。これは、現在の管理基準と比較して資源回復の可能性が高まるシナリオとなりますが、そのためには各国間での協力が不可欠です。
さらに、漁業者にとって重要な漁獲量についても議論されています。βを0.35とした場合、2025年漁期の平均漁獲量は1.6万トンと予測されており、現状を維持した場合よりも持続可能性を確保しながら一定の漁獲を可能にする見通しです。ただし、この漁獲量はMSY(24万トン)には届かないため、経済的な影響を最小限に抑える工夫が必要とされます。
近年のスルメイカの資源管理の動向は、国際的な協力が重要であることを改めて浮き彫りにしています。日本、韓国、中国の三国間での情報共有と連携が進むことで、より効果的な資源管理が可能になると期待されています。一方で、気候変動や海洋環境の変化といった外的要因が資源量に与える影響についても、継続的な研究が必要です。これにより、科学的根拠に基づく管理方針の策定が可能となるでしょう。
今後、資源量が低迷するスルメイカに関しては、短期的な経済利益よりも長期的な資源の持続性を重視した管理が求められます。漁業者や関連業界が協力し、適切な漁獲圧の維持と資源回復に向けた努力を続けることが重要です。
参考:スルメイカ秋季発生系群
スルメイカ資源量13.5万トンに減少、漁業の未来を守るための新たな管理方針とは?
日本近海で漁獲されるスルメイカについて、近年その資源量や漁獲量が大きく減少していることが明らかになりました。本種は、太平洋、オホーツク海、日本海、東シナ海といった広範囲に生息していますが、特に冬季に東シナ海で発生し、北上して太平洋や日本海で漁獲される系群が中心的な存在です。しかし、1980年代以降、資源量や漁獲量に変動が見られ、現在では持続的な漁業の維持が重要な課題となっています。
1980年代にはスルメイカの漁獲量が比較的低い水準で推移していましたが、1989年以降は増加傾向が見られ、1996年漁期には約40万トンに達しました。しかし、その後は漁獲量が徐々に減少し、特に2016年以降は顕著な低下が見られました。2023年漁期には日本国内での漁獲量が1.2万トン、韓国では0.1万トン、中国はゼロという記録的な低水準に達し、総漁獲量はわずか1.4万トンにとどまりました。
このような漁獲量の減少の背景には、資源量の顕著な低下があります。1990年代以降、スルメイカの資源量は50万~100万トンの範囲で安定していましたが、2015年以降は急激に減少を始め、2024年漁期には13.5万トンと予測されています。親魚量も同様に、近年横ばいの傾向にありますが、2023年にはわずか4.2万トンと非常に低い水準です。
こうした状況を踏まえ、スルメイカ資源の持続可能な利用を目指すため、様々な管理方針が議論されています。その中で重要とされているのが、最大持続生産量(MSY)を達成するための親魚量(SBmsy)です。SBmsyは25.5万トンと算定されており、これを目標管理基準値として設定することが提案されています。一方で、限界管理基準値としては、MSYの85%に相当する漁獲量が得られる親魚量、禁漁水準としてはMSYの15%に相当する漁獲量が得られる親魚量が提案されています。2023年漁期では親魚量がこの管理基準値を下回り続け、資源管理における緊急性が高まっています。
将来予測では、再生産関係や漁獲圧の調整を考慮した漁獲管理規則案に基づくシミュレーションが行われています。例えば、漁獲圧を現状よりも低く抑えた場合、親魚量の増加が期待され、2034年には目標管理基準値を上回る確率が高まるとされています。この予測結果をもとに、資源評価や管理基準の見直しが進められています。
スルメイカの寿命が1年であるという特徴も、資源管理における大きなポイントです。この特性により、資源量の変動が漁期ごとに大きく影響を受けるため、迅速かつ柔軟な管理方針が求められます。特に、近年のような資源量の減少局面では、禁漁や漁獲量の厳格な制限などの措置が重要となります。
日本のスルメイカ漁業は長い歴史を持ち、国内消費においても重要な地位を占めています。しかし、資源の枯渇が進めば漁業者や関連産業に大きな影響を及ぼす可能性があります。これを防ぐためには、科学的根拠に基づいた資源管理が不可欠です。また、隣国との協力も必要です。スルメイカは日本周辺の複数の国が漁獲対象としており、国際的な資源管理が今後の持続可能性を左右する要因となります。
資源管理の成功には、漁業者や行政、科学者が連携して課題に取り組むことが必要です。さらに、消費者に対しても持続可能な漁業の重要性を啓発し、環境に配慮した選択を促すことが求められます。これにより、将来にわたりスルメイカが安定して供給される環境を整えることができるでしょう。
参考:スルメイカ冬季発生系群
⇒ 詳しくは水産庁のWEBサイトへ