2024年10月29日
労務・人事ニュース
フリーランス取引実態調査で明らかに!報酬遅延率28.1%、買いたたき率67.1%の現状
フリーランス取引の状況についての実態調査(法施行前の状況調査)結果について(厚労省)
フリーランス取引に関する調査の概要は、特定受託事業者に係る取引の適正化を目的とするもので、法施行前のフリーランス取引の実態を把握することに焦点を当てています。この調査は、令和6年5月27日から6月19日にかけて、公正取引委員会と厚生労働省が共同で実施したもので、WEBアンケート形式により5,300件の回答が得られました。その中には、3,761件の委託者と1,539件のフリーランスが含まれています。調査の主な目的は、各業界における「本法」の認知度や取引の問題点を明らかにし、法施行後の取引の適正化を促進することです。
まず、認知度に関する調査では、「建設業」「医療、福祉」「農業、林業」などの業界で、委託者の認知度が特に低いことが分かりました。フリーランス側では、「医療、福祉」「建設業」「学術研究、専門・技術サービス業」が他の業界に比べて認知度が低い傾向にあります。これらの業種では、法に関する情報がまだ十分に浸透しておらず、今後の啓蒙活動が必要です。
取引条件の明示に関する法第3条においては、委託者がフリーランスに対し業務委託を行った際に、報酬や支払期日などの取引条件を明示する義務が定められています。しかし、調査結果によれば、「建設業」「生活関連サービス業、娯楽業」「サービス業(他に分類されないもの)」では、取引条件を明示しないことが多く見受けられました。特に建設業では、取引条件を明示しなかった割合が41.7%と非常に高く、フリーランス側も72.7%と問題が浮き彫りになっています。こうした不明確な取引は、フリーランスにとって大きなリスクとなり得るため、改善が必要です。
次に、報酬の支払期日について法第4条では、業務の完了後60日以内に報酬を支払う義務がありますが、委託者の4.8%、フリーランスの28.1%がこの規定に反しているとの回答がありました。特に「製造業」「生活関連サービス業、娯楽業」などの業種で支払い遅延が多いことが分かり、報酬の適正な支払いを確保するためのさらなる取り組みが求められます。
報酬の減額についても深刻な問題が浮き彫りになっています。本法第5条第1項第2号では、フリーランスが適切な理由なく報酬を減額されることを禁じていますが、フリーランス側の28.1%が報酬の減額を経験しており、特に「生活関連サービス業、娯楽業」で43.5%、「建設業」で40.9%と高い割合を示しています。委託者側の報酬削減の正当性が問われる事例が多く、特定の業種での対策強化が急務です。
さらに、買いたたき行為も調査の中で大きな問題となっています。本法第5条第1項第4号では、通常の対価よりも著しく低い報酬額を設定することを禁じていますが、フリーランスの67.1%が十分な協議が行われず報酬が一方的に決定されたと回答しています。特に「教育、学習支援業」「学術研究、専門・技術サービス業」では、この傾向が顕著であり、労働条件の不透明さが問題視されています。
また、フリーランスに対する不当な経済上の利益の提供要請も深刻な課題です。法第5条第2項第1号では、フリーランスに対し、金銭や役務の提供を不当に要求することを禁じていますが、フリーランスの41.8%がこのような要請を受けた経験があると回答しています。特に「生活関連サービス業、娯楽業」「建設業」で高い割合が見られ、不当な要求が常態化している可能性が示唆されます。
これらの調査結果から明らかになったのは、特に建設業、生活関連サービス業、情報通信業、学術研究・専門・技術サービス業などの業種で、フリーランスとの取引に関する適正化がまだ不十分であるという点です。業務の透明性や報酬の適正さを確保するためには、各業種における法令遵守の徹底が求められます。
法施行後には、フリーランスを守るためのさらなる施策が必要であり、特定受託事業者と委託者の両者が法の趣旨を理解し、取引の適正化に努めることが求められます。特に報酬の支払いや契約内容の明示、買いたたきの防止などの遵守が重要であり、これによりフリーランスの労働環境が改善されることが期待されます。
企業の採用担当者に向けて、これらの調査結果は、適正な取引の確保が企業の信用を高め、優秀なフリーランスとの長期的なパートナーシップ構築につながることを示唆しています。これにより、業務の効率化や質の向上が期待できるため、企業側も法令遵守に積極的に取り組む必要があります。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ