2024年12月27日
労務・人事ニュース
ブラジル黒字率77.9%!2024年中南米日系企業調査が示す成長とリスク
ジェトロ 2024年度 海外進出日系企業実態調査(中南米編)(JETRO)
日本貿易振興機構(ジェトロ)は、2024年8月20日から9月27日にかけて、中南米地域(メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、チリ、ペルー、コロンビア、ベネズエラ)に進出している日系企業を対象にした「2024年度 海外進出日系企業実態調査(中南米編)」を実施した。対象企業723社のうち、377社からの有効回答(回答率52.1%)が得られ、経営の現状や投資環境、地政学リスクへの認識、今後の事業展開について詳細な分析が行われた。
調査結果によると、日系企業の営業利益見込みでは中南米全体の黒字割合が71.0%に達し、ブラジルでは77.9%と過去最高を記録した。一方、アルゼンチンは経済の混乱が続く中で一時的な業績悪化が目立ったが、2025年には大幅な回復が期待されている。ブラジルとメキシコでは旺盛な現地市場需要が業績改善の主要因となっており、ブラジルの内需拡大やメキシコにおけるニアショアリングの影響がポジティブな要素として挙げられた。
事業拡大意欲に関しては、日系企業の半数以上が「事業拡大」を検討しており、特にブラジルでは市場ニーズの高まり、メキシコでは米国市場への輸出機会増加が背景にある。しかし、同時に政治的な不安定さやインフレ、為替変動などのリスク要因により、約4割の企業が「現状維持」と回答している点も見逃せない。
競争環境の変化については、中国企業の台頭が顕著となっており、特にペルーやコロンビアでは競争相手としての中国企業が市場シェアを拡大していることが分かった。これに対抗するため、日系企業は「営業・広報の強化」や「製品・サービスの多角化」といった施策に力を入れている。
中南米地域への投資環境は「市場規模・成長性」が最大の魅力として評価されているが、同時に「政治・社会情勢」や「現政権の政策運営」への懸念が大きな障壁として挙げられている。メキシコでは2026年のUSMCA見直しや米国大統領選挙の動向がリスク要因となり得る一方で、ブラジルでは税制改革や人口増加による市場拡大への期待が高い。
アルゼンチンでは新政権によるビジネス政策への期待感がある一方で、不安定な社会情勢や輸入規制が企業の戦略に影響を与えている。日系企業は特に短期的な情勢の変化に対して慎重な姿勢を保っており、現地市場の需要動向や政策変化に注視している状況だ。
中南米地域における市場の魅力は依然として健在であり、ブラジル、メキシコを中心とした成長市場に期待が集まる一方で、コスト競争や地政学リスクが日系企業の事業展開を複雑化させている。各企業は多角化や現地市場への適応を強化しつつ、変動する外部環境に柔軟に対応する戦略が求められている。
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