2024年12月17日
労務・人事ニュース
ロシア市場での赤字率がやや改善、事業継続を選ぶ企業が直面する課題とは?
ジェトロ 2024年度 海外進出日系企業実態調査(ロシア編)(JETRO)
ジェトロが2024年9月に実施したアンケート調査によると、ロシアに進出する日系企業のビジネス環境は厳しい状況が続いているものの、赤字企業の割合はやや減少し、一定の改善傾向も見られました。本調査は、ロシアに拠点を持つ83社を対象に行われ、59社からの有効回答を基にしています。以下に、調査結果の概要を報告します。
2024年の営業利益について、赤字を見込む企業の割合は前年比で7.3ポイント減少し、47.5%となりました。これは依然として高い割合ではありますが、3年連続で減少傾向が続いています。一方、黒字を見込む企業は30.5%で、前年からほぼ横ばいの状況です。営業利益の改善を見込む企業が増えた一方で、収益見通しが悪化する企業の割合は前年より27.4ポイント減少し、37.9%に留まりました。
今後1~2年の事業展開については、「現状維持」を選択した企業が58.6%と最も多く、前年より5.1ポイント増加しました。これに対し、「第三国への移転や撤退」を予定している企業は13.8%で、前年から大きな変化はありません。「縮小」と回答した企業の割合は24.1%と、前年から4.1ポイント減少し、縮小傾向が鈍化していることがわかります。
ロシアでの事業活動の最大の課題として、対ロ制裁や輸出規制が挙げられます。96.6%の企業がこれらの制裁措置の影響を受けていると回答し、製品の輸入・販売の停止、事業投資の中止、取引先変更の増加などの問題が発生しています。また、撤退を検討する企業の中には、現地規制が撤退を困難にしているケースも報告されています。
競争環境においては、中国企業の台頭が顕著であり、現地でのコスト競争力や納品スピードで優位性を発揮しているとされています。一方、地場企業は現地政府との連携や規制上の優遇措置を背景に競争力を強めています。これにより、多くの日系企業が競争激化への対策としてコスト削減や製品・サービスの多角化に取り組んでいます。
ロシアでの事業継続を決めた理由として、将来的な情勢の改善への期待や、撤退後の再参入の難しさを懸念する声が多く挙がっています。一方で、撤退を選ばない企業の中には、現地政府からの規制や圧力による残留を余儀なくされている例も存在します。
以上のように、ロシアにおける日系企業のビジネス環境は引き続き困難な状況にありますが、一定の改善兆候も見られます。今後の展開には引き続き慎重な戦略が求められ、競争力の強化と事業環境の変化への柔軟な対応が鍵となるでしょう。
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