2025年3月11日
労務・人事ニュース
不動産・物品賃貸業の平均月給は420,219円!前年比0.1%増で安定した給与水準を維持(毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報)
毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報 第1表 月間現金給与額(厚労省)不動産・物品賃貸業
令和6年の毎月勤労統計調査によると、不動産・物品賃貸業の平均月間現金給与額は420,219円であり、前年比0.1%の微増にとどまった。他業界と比較すると、賃金の伸び率は低く、ほぼ横ばいの状況が続いている。特に、基本給や特別支給額の増減が少ないことが特徴的で、業界全体として給与面での大きな変動がない安定した傾向が見られる。
給与の内訳を詳しく見ると、基本給に該当する「きまって支給される給与」は327,271円で、前年比0.3%の増加が見られる。この増加率は全産業平均の2.8%と比べても低く、不動産・物品賃貸業の給与水準が比較的安定していることを示している。特に、賃貸管理業務や不動産取引を担う従業員の給与が大きく変動していないことが要因と考えられる。また、業界全体が比較的安定した市場環境の中で運営されているため、大きな給与改定が行われていないことが背景にある。
また、時間外手当を含む所定外給与は305,405円で、前年比0.2%の増加にとどまった。このデータから、不動産・物品賃貸業界では時間外労働が比較的少ないことがうかがえる。特に、営業職においては繁忙期に残業が発生するものの、業界全体としては一定の労働時間が確保されており、労働時間の適正化が進んでいる可能性がある。これは、不動産契約業務のデジタル化が進み、業務の効率化が進んだことも影響していると考えられる。
一方、特別に支払われた給与、いわゆるボーナスに該当する部分は92,948円で、前年比0.2%の減少が記録されている。この減少率は軽微であり、大きな変動は見られないものの、業界全体の収益が前年と比べてほぼ変わらない状況にあることを示唆している。特に、賃貸物件の管理や仲介業務が安定している企業では、業績の急激な変化がないため、ボーナスの増減も小さいと考えられる。
他業界と比較すると、不動産・物品賃貸業の給与水準は中程度の水準に位置している。例えば、鉱業・採石業(411,892円)、製造業(412,916円)と比較すると、不動産・物品賃貸業の420,219円は若干高い水準であるが、建設業(453,559円)や金融業・保険業(524,040円)と比べると低い水準となっている。特に、金融業・保険業ではボーナスの増加が顕著であるのに対し、不動産・物品賃貸業ではほぼ横ばいとなっている点が特徴的である。
採用担当者にとって重要なのは、この給与水準が人材確保にどのような影響を与えるかである。不動産・物品賃貸業は、営業職を中心に人材の流動性が高い業界であり、特に不動産仲介業務を担当する従業員の定着率が課題となっている。そのため、給与の安定性を訴求することで、求職者にとって安心して働ける環境であることをアピールすることが重要となる。また、不動産業界は歩合制やインセンティブ制度が採用されているケースが多いため、固定給の安定性と成果報酬のバランスを取ることで、より魅力的な給与体系を構築することが求められる。
また、今後の課題として、労働時間の適正化とワークライフバランスの向上が挙げられる。不動産・物品賃貸業は、特定の繁忙期に労働時間が増加する傾向があり、特に春の引っ越しシーズンや大型開発プロジェクトの契約時期には業務量が集中することがある。しかし、近年ではデジタル技術の活用が進み、契約手続きのオンライン化やリモート営業の導入が進んでいる。これにより、業務の効率化が進み、労働時間の短縮や柔軟な働き方が可能になってきている。企業は、給与の安定性だけでなく、こうした労働環境の改善を積極的に打ち出すことで、求職者の関心を引きつけることができる。
今後の展望として、不動産・物品賃貸業は住宅市場の変化やオフィス賃貸市場の動向に影響を受ける業界であり、景気の変動に応じて給与水準の変化が見られる可能性がある。特に、テレワークの普及によりオフィス需要が減少する一方で、都市部の賃貸需要が高まるなど、業界内での変動が予測される。企業は、給与水準の維持・向上に加え、新しい市場の動向に対応するスキルを持つ人材の育成を進めることで、競争力を高めることができる。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ