2024年6月30日
労務・人事ニュース
中小企業が支える蓄電池市場、2030年に40兆円規模へ成長見込み
日本公庫総研レポート「蓄電池市場を支える中小製造装置メーカーの実態」を発行(日本政策金融公庫)
カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが進む中で、電気自動車(BEV)や再生可能エネルギーの利用が拡大しています。これにより、電力を効率的に蓄える蓄電池の重要性が増しています。蓄電池の性能が向上すれば、BEVの航続距離が延び、再生可能エネルギーの利用範囲も広がります。そのため、蓄電池はカーボンニュートラルの実現に不可欠な技術とされています。
リチウムイオン電池の改良や次世代蓄電池の開発が進められており、経済産業省の試算によると、蓄電池の世界市場規模は2019年の約5兆円から2030年には約40兆円、2050年には約100兆円に拡大すると予想されています。蓄電池市場で活躍する企業の多くは大企業ですが、蓄電池を製造する設備メーカーには中小企業も多く存在し、国内外の電池メーカーに独自の技術を活かして製造装置を供給しています。本レポートでは、特定の電池メーカーに属さない独立系の中小製造装置メーカーの実態を探り、その成果をまとめました。
まず、蓄電池が注目される理由として三つ挙げられます。一つ目は社会のデジタル化です。情報通信技術の発展に伴い、持ち運び可能な電子機器が普及し、これらの電源として蓄電池が利用されています。二つ目は災害対策の強化です。東日本大震災以降、通信基地局やデータセンターなどのバックアップ電源として蓄電池が活用されています。三つ目はカーボンニュートラルの推進です。政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げており、これに伴い蓄電池の需要が増加しています。
蓄電池の種類としては、鉛蓄電池、ニッケル・カドミウム電池、ニッケル・水素電池、リチウムイオン電池などがあります。特にリチウムイオン電池は、その高いエネルギー密度と軽量性から広く普及しています。リチウムイオン電池の構造は、正極と負極、電解液で構成され、充電時にはリチウムイオンが正極から負極に移動し、放電時には逆の動きが行われます 。
次世代蓄電池の開発も進んでおり、全固体電池やナトリウムイオン電池などが注目されています。全固体電池は、電解液を固体に置き換えることで安全性を高め、エネルギー密度を向上させることが期待されています。また、ナトリウムイオン電池はリチウムに代わる材料としてコスト削減が見込まれます 。
蓄電池市場の主なプレイヤーには、電池メーカー、材料メーカー、製造装置メーカーがあります。日本の代表的な電池メーカーにはパナソニックやGSユアサなどがあり、材料メーカーには住友金属鉱山や日亜化学工業などが挙げられます。これらの大企業に対して、製造装置メーカーには中小企業が多く、独自の技術を活かして世界中の電池メーカーに製造装置を提供しています 。
製造装置メーカーの特徴として、受注生産が中心であり、顧客の要望に合わせたカスタマイズが求められます。また、化学分野の知識が必要であり、安全性の確保が重要です。技術進歩への対応や脱炭素への取り組みも課題となっています 。
中小製造装置メーカーの具体的な事例として、兵庫県の㈱サンクメタルや茨城県の大野ロール㈱、長野県の長野オートメーション㈱、福島県の東洋システム㈱などがあります。これらの企業は、それぞれの強みを活かして蓄電池市場を支えています。たとえば、サンクメタルは試作装置の製造に特化し、レンタル事業も展開しています。大野ロールは高精度のロールプレスを提供し、メンテナンス事業を拡大しています。長野オートメーションは積層機や溶接機などの製造装置を提供し、製造ライン全体を提供することで取引先の要望に応えています。東洋システムは充放電評価装置を提供し、装置を使った評価サービスも展開しています 。
これらの中小企業は、蓄電池市場の拡大に伴い、技術力の向上や受注基盤の確保、省エネ化などに取り組んでいます。政府の後押しもあり、今後も蓄電池市場での活躍が期待されます。特に、全固体電池のような次世代蓄電池の開発が進む中で、中小製造装置メーカーの役割はますます重要になるでしょう 。
参考:日本公庫総研レポート No.2024-1 2024年6月 蓄電池市場を支える 中小製造装置メーカーの実態
⇒ 詳しくは日本政策金融公庫のWEBサイトへ