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2024年7月4日

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中小企業20,000社を対象とした調査で明らかに!最低賃金引上げに対応した企業は42.7%

令和6年度中央最低賃金審議会目安に関する小委員会(第1回)資料 参考資料No.1_最低賃金に関する調査研究(厚労省)

最低賃金の引上げが中小企業に与える影響と、その対応についての調査結果が報告されました。この調査は労働政策研究・研修機構(JILPT)が2023年に実施したもので、全国の中小企業20,000社を対象としています。調査の目的は、最低賃金引上げに対する中小企業の対応を把握し、今後の最低賃金政策の検討に資することです。調査は郵送による配布・回収方法で行われ、2024年1月12日から29日にかけて実施されました。

調査対象企業の中で、最低賃金引上げに対する具体的な取り組みを行った企業は42.7%でした。具体的な取り組み内容としては、「賃金の引上げ」を除けば、「製品・サービスの価格・料金の引上げ」、「人件費以外の諸経費等コストの削減」、「人員配置や作業方法の改善による業務効率化」などが挙げられます。また、これらの取り組みの結果として、労働者の生産性や売上の変化についても調査が行われました。2016年から2023年にかけての期間で、最低賃金引上げの取り組みが労働者の1時間当たりの生産や売上に与える影響については、「変わらない」が最も多い回答でしたが、特に2022年と2023年に関しては「はっきりとしないが、伸びたと思う」という回答が増加していることが分かりました。

また、中小企業が最低賃金引上げに対応するために期待する政策的支援としては、「賃金を引上げた場合の税制優遇(所得拡大税制等)の拡大」が最も多く、次いで「企業の生産性を向上するための設備投資その他の取組に対する助成金の拡充」が多く挙げられています。これらの支援が求められている背景には、最低賃金の引上げが企業経営に与える負担が大きいため、政府の積極的な支援が必要とされています。

さらに、最低賃金引上げによる企業の価格転嫁についても調査が行われました。原材料や仕入れ価格の上昇に対して、製品やサービスの販売価格に上昇コストを転嫁できている企業は49.0%でしたが、この割合は業種や従業員規模によって異なることが分かりました。例えば、建設業や製造業では価格転嫁が比較的順調に行われている一方で、運輸業や教育・学習支援業などでは価格転嫁が難しい状況が見られました。

調査結果はまた、最低賃金引上げが労働者の意識や対応にどのような影響を与えるかについても明らかにしています。2024年の調査では、時間当たり賃金が上昇した労働者の割合は53.3%であり、その中で最も多い賃金上昇理由は「最低賃金が上がったから」でした。賃金が上昇したことで生活が改善されたかどうかについては、「変わっていない」が63.4%と最も多く、「やや苦しくなった」「苦しくなった」という回答も29.1%に上りました。また、賃金上昇分の使途については「ほぼ全てを消費に回している」「多くを消費に回している」が59.7%を占めており、消費に回る割合が高いことが分かります。

これらの調査結果からは、最低賃金引上げが中小企業や労働者に与える影響が多岐にわたることが明らかになりました。企業側ではコスト削減や業務効率化の努力が求められ、一方で労働者側では賃金上昇が生活改善に直結しない場合も多く見受けられます。今後の政策検討においては、最低賃金引上げのメリットとデメリットを総合的に評価し、企業と労働者の双方にとって実効性のある支援策を講じることが重要です。

最後に、調査の一環として行われた労働者の意識調査では、今後も最低賃金が引き上げられるべきかについて尋ねた結果、「そう思う」「ややそう思う」と回答した者が75.8%に達しました。最低賃金引上げを支持する理由としては、「現在の最低賃金額は生計を維持するために十分な水準でないから」が最も多く挙げられました。逆に引き上げに反対する理由としては、「最低賃金が引き上がると、その分労働時間を減らさなくてはならないから」が最も多く、企業経営への影響を懸念する声が強いことが示されました。

このように、最低賃金の引上げに関する調査結果は、多くの中小企業がその影響を受ける中で、労働者の生活改善に必ずしも結びついていない現状を浮き彫りにしています。政策決定者はこれらのデータを基に、最低賃金政策の適切な運用と、中小企業支援の強化を図るべきでしょう。労働市場全体の健全な発展を目指して、バランスの取れた施策の実施が求められます。

参考:参考資料No.1_最低賃金に関する調査研究

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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