2025年1月1日
労務・人事ニュース
中小製造業のリスキリング実態が明らかに!従業員の7.5%が新スキルを習得
日本公庫総研レポート「アンケートと事例にみる中小製造業のリスキリングの実態」を発行(日本公庫)
2024年12月20日、日本政策金融公庫の総合研究所は最新のレポート「アンケートと事例にみる中小製造業のリスキリングの実態」を発表しました。このレポートでは、中小製造業が直面している人手不足や生産性向上の課題に対する解決策として、従業員のリスキリング(学び直し)の取り組みが詳細に分析されています。デジタル化や省力化といった設備投資だけでなく、人的資本の充実がますます重要となる中、リスキリングは注目される施策となっています。
調査によれば、過去5年間にリスキリングに取り組んだ中小製造業の従業員はわずか7.5%にとどまっています。リスキリングの内容としては、「ものづくりに関するスキル」を学んだ人が42.5%と最も多く、次いで「デジタルやITに関するスキル」が41.6%となっています。このデータは、デジタル技術が業務の効率化や競争力向上において大きな役割を果たしていることを示唆しています。しかし、リスキリングの普及に対しては、「意欲の維持・向上」が最大の障壁として挙げられ、44.9%の回答者がこれを課題と認識しています。一方で、今後リスキリングに取り組む意向があると答えた人は10.3%に上り、一定の関心が寄せられていることも確認されました。
リスキリングを成功させている中小製造業の事例からは、いくつかの共通点が見えてきます。例えば、秋田県の斉藤光学製作所では、従業員がデジタルツールやソフトウェア開発のスキルを習得することで、自社システムやアプリケーションの開発に成功しています。このように、学んだスキルを実際の業務で活用する場を提供することが重要です。また、茨城県の大塚セラミックス株式会社では、工場長がデジタルデータの取得・分析スキルを活用して、不良品発生率の予測精度を向上させ、製品ごとの収支改善を実現しました。
さらに、佐賀県の中村電機製作所では、製造部次長が環境対策の知識を習得し、電気代や材料費の削減を実現しています。このような成功事例から、リスキリングを推進する企業が従業員にとって必要なスキルを見極め、それを学ぶ意義を伝えることが成功の鍵であると考えられます。また、佐賀県のレグナテック株式会社では、経営陣と従業員が地元企業と連携し、脱炭素の知識を学ぶことで、二酸化炭素排出量の削減に貢献しています。
このように、中小製造業におけるリスキリングの成功例は、企業の業績向上だけでなく、従業員の意識改革や環境改善にも寄与しています。今後、中小企業が持続可能な成長を実現するためには、リスキリングを促進する具体的な施策が求められます。そのためには、経営陣自身もリスキリングに取り組む姿勢を示し、リスキリングの成果を社内で共有することが必要です。また、企業のビジョンを明確にし、それを従業員と共有することで、全体の一体感を高めることができるでしょう。
リスキリングの促進には、政府や金融機関の支援も欠かせません。特に、中小企業がリスキリングの費用負担を軽減できるような助成金制度や補助金制度が期待されます。また、地域レベルでの企業間連携や情報共有の場を設けることも有効です。これにより、中小製造業がリスキリングを進めやすい環境が整うと考えられます。
今回の調査結果は、中小製造業が直面する課題を克服し、競争力を高めるためにどのような取り組みが必要かを示唆するものです。企業がリスキリングを推進し、持続可能な経営基盤を築くための道筋を具体的に示している点で、非常に意義深い内容といえます。
⇒ 詳しくは日本政策金融公庫のWEBサイトへ