2025年3月5日
労務・人事ニュース
介護予防サービスの受給者数95万人、前年比6.7%増で健康寿命延伸への取り組みが加速(令和6年8月審査分)
介護給付費等実態統計月報(令和6年8月審査分)(厚労省)
令和6年8月の介護給付費等実態統計月報の結果によると、日本全国における介護サービスの受給者数は引き続き増加傾向にあり、介護予防サービスおよび介護サービスの両分野で前年同月比の伸びが確認された。この増加は高齢化の進行に伴うものと考えられ、今後の介護業界における施策の強化が求められる。
介護予防サービスの受給者数は95万1,200人で、前年同月比6.7%増となった。この増加は、健康寿命の延伸を目的とした各種施策が効果を上げていることを示している。特に、要支援1の受給者数は37万9,100人(前年比6.9%増)、要支援2の受給者数は56万8,100人(前年比6.5%増)と、軽度の介護を必要とする高齢者の増加が目立つ。これらのデータは、要介護状態へと進行する前の段階で適切な介護予防施策が実施されていることを反映していると考えられる。
一方、介護サービスの受給者数は480万2,000人で、前年同月比2.5%増となった。要介護1の受給者数は127万8,900人(前年比2.5%増)、要介護2は115万6,400人(前年比4.0%増)、要介護3は92万2,800人(前年比2.4%増)、要介護4は88万1,900人(前年比2.2%増)、要介護5は56万1,700人(前年比0.4%増)となっている。要介護2の受給者数が前年比4.0%増と最も高い伸びを示しており、介護度が中等度の高齢者が増えていることが分かる。この傾向は、今後の介護ニーズの増加を予測する上で重要な指標となる。
介護サービスの利用形態を詳しく見ると、居宅サービスの受給者は353万人(前年比3.0%増)、施設サービスの受給者は94万4,700人(前年比2.0%増)、地域密着型サービスの受給者は98万6,800人(前年比1.5%増)となっている。居宅サービスの伸びが最も大きく、これは高齢者ができる限り自宅で生活を継続したいという意向が強いことを示していると考えられる。地域密着型サービスも着実に増加しており、自治体による地域介護支援の拡充が進んでいることが伺える。
介護費用についても増加傾向が顕著であり、介護予防サービスの費用額は269億5,500万円で前年同月比9.2%増、介護サービスの費用額は9,981億6,500万円で前年同月比5.6%増となった。受給者1人当たりの費用額は、介護予防サービスで2万8,300円(前年比2.3%増)、介護サービスで20万7,900円(前年比3.0%増)となっている。特に介護サービスの費用額の伸びは、介護人材の確保やサービスの充実に伴う費用の増加を反映していると考えられる。
このように、介護サービス利用者の増加とともに、財政負担も拡大していることが明らかとなった。今後、持続可能な介護制度を維持するためには、介護保険財政の適切な管理が求められる。また、介護現場の人手不足が続いており、介護職員の処遇改善や働きやすい環境づくりが急務となっている。政府は介護報酬の見直しや介護職の人材確保策を推進しているが、現場の負担軽減のためにDX(デジタルトランスフォーメーション)の活用をさらに進める必要がある。具体的には、介護記録の電子化やAIを活用した業務効率化が期待されている。
さらに、介護予防の推進が今後の重要な課題として浮上している。要支援・要介護状態の高齢者の増加を抑えるためには、介護予防サービスの充実が不可欠である。特に、地域での健康増進プログラムの強化や、高齢者の社会参加を促進する施策が求められる。これにより、高齢者が自立した生活を長く維持できる環境を整えることができる。
また、在宅介護の支援体制を強化することも今後の重要な課題となる。多くの高齢者が自宅での生活を希望している中で、訪問介護やデイサービスの充実、家族介護者への支援強化が必要不可欠である。家族介護の負担軽減のためには、レスパイトケア(短期間の介護休息サービス)や在宅医療との連携が重要な役割を果たす。さらに、ICT技術を活用した遠隔見守りサービスやAIを活用した介護支援システムの導入など、テクノロジーを活かした介護の革新が求められる。
介護サービスの需要が増加する中で、介護業界全体が持続可能な形で発展するためには、政府、自治体、民間企業、地域コミュニティが一体となって協力することが不可欠である。高齢化社会に対応するための包括的な施策が求められる今、介護サービスの質の向上とともに、財政負担の適正化、人材確保、DXの推進など、多面的なアプローチが必要となる。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ