2024年8月30日
労務・人事ニュース
令和5年に全国21,349件の賃金不払い事案が発生、未払い総額は約102億円に
賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和5年)を公表します(厚労省)
厚生労働省は、令和5年における賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導の結果を取りまとめ、公表しました。この監督指導は、全国の労働基準監督署によって実施されたもので、労働者の賃金不払い問題に対処するために、立入調査や是正指導が行われています。この取り組みは、労働者の権利を保護し、適切な賃金支払いを確保することを目的としています。
令和5年に全国の労働基準監督署で取り扱われた賃金不払事案の件数は21,349件に上り、これは前年と比較して818件の増加を示しています。対象となった労働者数は181,903人で、前年より2,260人増加しています。この数字は、労働環境の中で賃金不払いの問題が依然として深刻であることを示しており、労働者の権利が侵害されるケースが後を絶たない現状を浮き彫りにしています。
さらに、未払いとなっていた賃金の総額は101億9,353万円に達し、これは前年よりも19億2,963万円減少したものの、依然として多額の未払い賃金が存在していることがわかります。未払い賃金がこれほどの金額に上ることは、経済的に困窮する労働者が多いことを意味しており、社会的な問題として見過ごせない状況です。
労働基準監督署による指導の結果、令和5年中に解決された賃金不払事案は、全体の97.6%にあたる20,845件に達しました。この中で、賃金の支払いが行われた労働者数は174,809人、支払われた賃金総額は92億7,506万円となっています。これにより、多くの労働者が賃金を取り戻し、経済的な救済が図られたことがわかります。しかし、この解決率が高い一方で、未解決の事案も存在し、それらが翌年に繰り越されるケースや、事業主の倒産や行方不明によって賃金が支払われないケースも報告されています。これらのケースは、特に深刻な問題を抱えており、対応が難しい状況にあります。
厚生労働省は、こうした未解決の賃金不払事案に対して、「賃金の支払の確保等に関する法律」に基づく未払賃金立替払制度を迅速かつ適正に運用することで、労働者の権利を守るための措置を講じています。この制度は、倒産や事業主の行方不明など、労働者が自力で賃金を取り戻すことが困難な場合に、未払い賃金の一部を国が立替払いするものであり、労働者にとって重要なセーフティネットとなっています。
賃金不払問題は、労働者の生活に直接的な影響を与える重大な問題です。賃金は労働者の生活を支える基盤であり、その支払いが滞ることは、家計を直撃し、生活の質を大きく損なうことになります。特に、低賃金で働く労働者にとっては、数ヶ月分の未払い賃金が家計を大きく圧迫し、生活の維持が困難になる可能性があります。そのため、賃金不払問題の解消は、労働行政において優先的に取り組むべき課題の一つです。
厚生労働省は、賃金不払問題に対する監督指導を今後も強化し、未払い賃金の発生を未然に防ぐための取り組みを進めていくとしています。また、労働基準監督署による立入調査の強化や、事業主への指導を通じて、法令遵守の徹底を図るとともに、労働者の権利を守るための体制をさらに整備していく方針です。
このような取り組みによって、労働者が安心して働ける環境を整備し、経済的な安定を確保することが求められています。今後も、賃金不払問題の解決に向けた一層の努力が期待されます。労働者一人ひとりが、正当な賃金を受け取ることができるよう、社会全体で取り組んでいくことが重要です。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ