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2025年2月15日

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令和5年住生活総合調査が示す「住宅の満足度」:企業の社宅戦略に影響を与えるポイントとは?

令和5年住生活総合調査の調査結果(速報) ~5年に一度の住まいの満足度等に関する調査の速報を公表します~(国交省)

令和5年に実施された住生活総合調査の速報結果が公表された。この調査は、国民の住まいに関する満足度や居住環境の評価、今後の住まい方の意向を把握するために5年ごとに行われている。今回の調査では、全国の約12万世帯から無作為に抽出された世帯を対象に実施され、回答率は約64%となった。調査結果は今後の住宅政策の基礎資料となるため、重要な意味を持つ。

調査によると、住宅や居住環境の満足度は過去の調査と比べて概ね横ばいで推移している。住宅の不満率は引き続き低下傾向にある一方で、居住環境に対する不満率は10年前と大きな変化はなかった。ただし、世帯構成によって不満率には違いが見られ、親と子どもから成る世帯(長子17歳以下)では不満率が減少傾向にあるのに対し、単独世帯や高齢者世帯ではほぼ横ばいか、わずかに増加している。特に65歳以上の単独世帯においては、持ち家と借家で不満率に大きな差があることが明らかとなった。

住環境の評価では、「通勤・通学の利便性」や「日常の買い物のしやすさ」、「治安の良さ」が重要視されているが、地域によって満足度に差があることも分かった。特に都市部と郊外では住民のニーズが異なり、利便性の向上が求められている。一方で、医療・福祉施設の利便性に対する不満の割合も一定数見られ、高齢者世帯ではこの要素が特に重視されている。

最近の住み替え理由についても興味深い結果が出ている。過去5年間における住み替えの動機として、単独世帯(64歳以下)や親と子どもから成る世帯では「自宅を所有するため」や「世帯からの独立」が主な理由となっている。一方で、高齢世帯では「高齢期の住みやすさ」や「立ち退き要求、契約期限切れ」が主な要因として挙げられている。持ち家を希望する割合は依然として高いものの、借家への住み替えを検討する世帯も増えており、住宅市場の動向を反映する結果となった。

今後の居住形態についても調査されており、現在の持ち家世帯、借家世帯のいずれにおいても「借家への住み替え」や「既存住宅への住み替え」の意向が増加している。特に単独世帯(64歳以下)や親と子どもから成る世帯では、「広さや間取り」や「通勤・通学の利便性」を重視する傾向が強い。一方で、高齢世帯では「広さや間取り」や「高齢者への配慮」、「日常の買い物の利便性」が重視されている。

住宅の質に関する評価では、「広さや間取り」、「防犯性」、「維持管理のしやすさ」が重視される傾向がある。特に、高齢者世帯では段差のないバリアフリー設計や住居費の負担軽減が重要視されている。住宅の選択においては、新築よりも既存住宅の需要が高まっており、中古住宅市場の活性化が今後の住宅政策において重要なテーマとなる可能性が高い。

全体として、住宅や居住環境に対する満足度は安定しているものの、世帯構成や年齢によって不満の内容に差があることが浮き彫りになった。特に、高齢世帯における住宅問題や単独世帯の居住環境の改善が今後の課題として挙げられる。また、住み替えに関する意向の変化を受け、住宅市場における流動性の向上や、より多様な居住形態への対応が求められるだろう。政府や自治体は、こうした調査結果を基に、より実効性のある住宅政策の策定を進めることが期待される。

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ