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2024年9月15日

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令和5年労働争議データ 解決率75.7%の実態と労使関係改善への道筋

令和5年労働争議統計調査の概況 労働争議の主要要求事項別の状況(厚労省)

令和5年における労働争議の統計データは、日本の労働市場の現状を示す重要な資料として、企業の採用担当者や人事部門にとって非常に参考になるものです。このデータは、労使間の対立がどのように解決されるか、またその解決に至るまでのプロセスや期間がどの程度かかるかについて、具体的な数値とともに明らかにしています。これにより、労働環境の改善や労使関係の強化に向けた戦略的な意思決定をサポートすることが可能になります。

まず、令和5年の総争議件数は292件でした。このうち、令和5年中に解決または解決扱いとされた件数は221件であり、総争議件数の75.7%を占めています。これに対して、翌年への繰越とされた件数は71件、すなわち全体の24.3%に達しました。これらのデータは、労働争議が発生した場合、約4分の3は同年中に解決される一方で、残りの約4分の1が翌年へ持ち越されるという現状を示しています。このような解決率は、労使双方にとって争議の解決に向けた迅速な対応が求められる一方で、一部の争議は長期化する可能性があることを示唆しています。

労働争議の解決方法についてさらに詳しく見ると、労使直接交渉による解決が28.5%、すなわち63件に上ることが分かります。このデータは、依然として労使間の直接対話が主要な解決手段であることを示しています。しかし、それに続く解決手段として、第三者関与による解決が全体の31.7%、すなわち70件に達しており、このうち労働委員会によるあっせんが最も多く66件を占めています。これらの数字は、第三者の介入が労働争議の解決において非常に効果的であることを示しており、特に複雑な対立が生じた場合には、早期に外部の調停者や仲裁者を導入することが重要であることを示唆しています。

さらに、「その他の解決扱い」として分類される88件(全体の39.8%)のケースは、解決方法が明確に分類できない特殊な事例や、労働委員会に申立てがなされたものなどが含まれています。これらのケースは、従来の労使交渉や第三者の関与だけでは解決が難しい状況であり、今後の争議解決の方法論に対して新たな視点が求められる領域といえるでしょう。

労働争議が解決に至るまでの期間についても重要なデータが示されています。全体の31.2%にあたる69件が「30日以内」に解決されており、これが最も多い期間として記録されています。これに続くのが、「91日以上」の長期間に及ぶケースで67件(30.3%)に達しています。このようなデータは、労働争議の多くが比較的短期間で解決される一方で、一定数は長期化する傾向があることを示しています。特に、長期化した争議は企業にとって大きなコストやリスクを伴うため、早期解決がいかに重要であるかを改めて強調するものです。

具体的には、「61日~90日」に解決されたケースが49件(22.2%)、「31日~60日」に解決されたケースが36件(16.3%)となっています。このデータからは、約3分の1の争議が1か月以内に解決されるものの、残りの約3分の2はさらに長い期間を要していることが読み取れます。このような解決期間の分布は、企業が労使関係の問題に対して迅速かつ効果的な対応を取る必要性を示しています。

特に、企業が注目すべきは、第三者関与による解決の有効性です。労働委員会によるあっせんが多くのケースで成功していることから、争議が発生した際には、可能な限り早期に外部の専門家を介入させることが解決を促進する重要な要素となり得ます。また、これにより労使間の緊張を緩和し、関係修復に向けた建設的な対話を促すことが可能となるでしょう。

このようなデータ分析は、企業の人事戦略においても重要な示唆を与えます。労働争議の発生とその解決にかかる期間を予測し、事前に対策を講じることで、労使関係のトラブルを未然に防ぐことが可能です。また、第三者の介入を効果的に利用することで、争議が長期化するリスクを低減し、迅速な解決を図ることができるでしょう。企業の採用担当者や人事部門は、このようなデータを活用して、労使間の対話を促進し、健全な労働環境の構築に努めることが求められます。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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