2024年9月13日
労務・人事ニュース
令和5年労働市場分析:宿泊業での入職数1,739千人、離職数1,422千人の背景とは
令和5年 雇用動向調査結果の概要 産業別の入職と離職(厚労省)
令和5年の労働市場動向に関するデータから、産業別の入職と離職の状況について詳細な分析が行われています。このデータは、企業の採用戦略や人材管理に関心を持つ担当者にとって非常に重要な情報です。
まず、全体的な労働移動の動向を見ると、入職者数が最も多い産業は「宿泊業、飲食サービス業」で1,739.0千人でした。次いで、「卸売業、小売業」が1,425.4千人、「医療、福祉」が1,266.5千人という結果でした。一方、離職者数でも「宿泊業、飲食サービス業」が最も多く、1,422.7千人に達し、次に「卸売業、小売業」が1,354.6千人、「医療、福祉」が1,157.1千人という順番になっています。これらのデータは、これらの産業が高い人材移動率を持っていることを示しており、特に「宿泊業、飲食サービス業」が最も活発な動きがあることが分かります。
さらに、入職率と離職率を就業形態別に分析すると、一般労働者の入職率が最も高いのは「サービス業(他に分類されないもの)」で19.9%、「宿泊業、飲食サービス業」が19.8%と僅差で続いています。これに対し、離職率が最も高いのは「生活関連サービス業、娯楽業」の20.8%、次いで「サービス業(他に分類されないもの)」が19.3%となっています。このデータは、これらの産業が特に高い流動性を持ち、労働者の定着が難しい分野であることを示唆しています。
パートタイム労働者の動向を見ると、入職率が最も高いのは「生活関連サービス業、娯楽業」で49.2%、「宿泊業、飲食サービス業」が40.5%となっています。離職率でも同様に「生活関連サービス業、娯楽業」が36.9%、「サービス業(他に分類されないもの)」が32.7%で高い数値を示しています。これらの結果は、パートタイム労働者においても特定のサービス業が高い流動性を持っていることを示しており、特に「宿泊業、飲食サービス業」はその傾向が顕著です。
さらに、全体としての入職者数と離職者数の差、つまり入職超過率に注目すると、特に「宿泊業、飲食サービス業」や「生活関連サービス業、娯楽業」で入職超過が見られ、これらの産業では依然として労働力の需要が高いことが分かります。このような高い入職超過率は、企業が新規採用を活発に行っている一方で、離職者が多いことを反映しており、労働者の確保が課題となっている可能性を示唆しています。
企業の採用担当者にとって、このデータは非常に有用です。例えば、労働者の定着率を向上させるための戦略を考える際、特に「宿泊業、飲食サービス業」や「生活関連サービス業、娯楽業」では、効果的な研修プログラムや福利厚生の充実を図ることが求められるでしょう。また、入職率が高いが離職率も高い業界では、採用後のフォローアップや、職場環境の改善を重点的に行うことで、長期的な労働者の定着を目指すことが重要です。
令和5年のデータから、特に注目すべき点として、全体の労働市場において「宿泊業、飲食サービス業」と「生活関連サービス業、娯楽業」が特に高い流動性を持つことが挙げられます。これらの産業では、労働力の確保が今後も重要な課題であり、企業は採用プロセスを最適化し、労働者の定着を促進するための施策を強化する必要があります。また、これらのデータは、企業が人材採用計画を立てる際の基礎資料として活用でき、ターゲットとなる労働者層や採用後のサポート体制の構築に役立つでしょう。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ