2024年9月20日
労務・人事ニュース
令和5年度の医療費、47.3兆円に達し過去最高を更新!企業の保険料負担への影響は?
「令和5年度 医療費の動向」を公表します ~概算医療費の年度集計結果~(厚労省)
令和5年度の医療費の動向について、厚生労働省が公表したデータに基づき、詳細をお伝えします。この調査は、日本国内の医療費の状況を迅速に把握し、医療保険行政の基礎資料を得るために行われています。調査結果は、審査支払機関から提供された医療費情報を基に集計され、国民医療費の約98%に相当する概算医療費として報告されています。
まず、令和5年度の総医療費は47.3兆円に達し、前年度と比較して約1.3兆円の増加を示しました。これは、医療サービスに対する需要の増加や、医療費単価の上昇が主な要因と考えられます。医療費の内訳を診療種類別に見ると、入院費が18.7兆円で全体の39.5%を占め、次いで入院外費が16.4兆円(34.7%)、調剤費が8.3兆円(17.6%)、そして歯科が3.3兆円(7.0%)となっています。これらのデータは、診療の種類に応じた医療費の分布を示しており、それぞれの医療サービスが国民の健康維持に重要な役割を果たしていることを裏付けています。
医療費の伸び率については、令和5年度は2.9%と、前年度よりもわずかに増加しました。特に、調剤費が5.4%の伸びを示し、医療費全体の伸びを牽引した形となっています。一方で、入院外の医療費の伸び率は1.0%に留まり、他の診療種類と比べると穏やかな伸びにとどまっています。これは、外来診療の需要が安定していることを示しており、入院に比べて比較的費用が抑えられていることが影響していると考えられます。
また、医療機関を受診した延患者数に相当する「受診延日数」の伸び率は2.0%であり、特に入院の受診延日数が2.3%増加しました。これは、入院患者数の増加や長期入院患者の増加が要因と考えられます。一方で、入院外の受診延日数は1.9%の増加にとどまり、こちらも外来診療の安定した需要を反映しています。
さらに、1日当たりの医療費の伸び率は0.8%と、全体的には緩やかな増加を見せています。特に、入院外の医療費が0.8%減少しており、これは医療費の効率化や外来診療のコスト抑制が進んでいることを示している可能性があります。一方で、歯科の1日当たり医療費は1.2%増加しており、歯科治療の需要が引き続き高いことを反映しています。
これらの結果は、日本の医療制度が直面する課題と、今後の医療費の動向に関する重要な示唆を提供しています。医療費の増加は、今後も持続可能な医療制度の確立に向けた取り組みが必要であることを示しています。特に、高齢化社会においては、医療サービスの需要がますます増加することが予想されており、医療費の効率的な運用が求められます。また、入院や調剤に関する費用の増加に対応するためには、地域医療の充実や在宅医療の推進といった、医療提供体制の見直しも重要な課題となるでしょう。
企業の採用担当者がこのデータを活用する際には、医療費の増加が社会保障費の増大につながり、企業が負担する保険料の上昇リスクを考慮する必要があります。また、社員の健康管理においても、予防医療や健康促進活動を積極的に取り入れることで、将来的な医療費の抑制に貢献できる可能性があります。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ