2024年8月18日
労務・人事ニュース
令和5年度の食料自給率、カロリーベース38%で安定維持、生産額ベースは61%に回復

令和5年度食料自給率・食料自給力指標について(農水省)
令和6年8月8日、農林水産省は令和5年度の食料自給率および食料自給力指標に関する結果を発表しました。これらの指標は、日本の食料安全保障や農業政策の現状を把握するために重要なものであり、毎年公表されています。今回は、カロリーベースと生産額ベースの食料自給率、さらに国内でどれだけの食料を供給できるかを示す食料自給力指標について、その詳細が明らかにされました。
まず、食料自給率について見ていきます。食料自給率とは、国内で消費される食料のうち、どれだけが国内で生産されているかを示す割合です。この指標は、国内農業の自給力を評価するための基本的なデータとなっています。令和5年度のカロリーベースの食料自給率は、前年と同じ38%となりました。この結果には、小麦の生産量増加や油脂類の消費量減少といったプラス要因がありましたが、てん菜の糖度低下による国産原料の製糖量の減少というマイナス要因も影響しています。また、カロリーベースの食料国産率についても、前年と同じ47%を維持しました。飼料自給率については、前年より1ポイント上昇し27%となりましたが、依然として低い水準にとどまっています。
次に、生産額ベースの食料自給率について説明します。この指標は、国内で生産された食料の価値を示すもので、輸入食料の量や価格に大きく影響を受けます。令和5年度の生産額ベースの食料自給率は、前年から3ポイント上昇し61%となりました。この上昇は、国際的な穀物価格や生産資材価格の安定化による輸入総額の減少が主な要因です。特に、畜産物や油脂類の輸入総額が減少したことが大きな影響を及ぼしています。生産額ベースの食料国産率も、前年より2ポイント上昇し67%となりました。この結果から、日本国内での農産物の価値が再評価されつつあることが示唆されています。
これまでの10年間の食料自給率の推移を見てみると、カロリーベースの自給率は39%から37%の範囲内で推移しており、大きな変動は見られません。一方で、生産額ベースの自給率は、64%から68%の範囲内で推移し、近年は国際的な食料価格や輸入状況の影響を受けて変動しています。令和3年度には58%まで低下しましたが、令和4年度には回復し、さらに令和5年度には61%まで上昇しました。このような結果から、国際情勢や輸入コストの影響が国内の食料自給率に大きく反映されることがわかります。
次に、食料自給力指標について詳しく見ていきます。この指標は、国内での農地や労働力の状況を考慮し、国内生産だけでどれだけの食料を供給できるかを示すものです。令和5年度の結果では、米や小麦を中心とした作付けによる食料自給力は、前年度より16kcal/人・日増加し1,752kcal/人・日となりました。これは、小麦の単収増加が農地面積の減少を上回ったためです。一方で、いも類を中心とした作付けによる食料自給力は、主に労働力や農地面積の減少が影響し、前年度より24kcal/人・日減少して2,362kcal/人・日となりました。しかし、この結果でも、推定エネルギー必要量(2,167kcal/人・日)を上回る供給力が維持されています。
これらの指標が示す結果から、日本の農業が直面している課題が浮き彫りになっています。特に、農地の減少や農業従事者の高齢化による労働力不足が、食料自給力の低下に影響を及ぼしていることがわかります。また、国際的な食料価格の変動や輸入食料への依存度が高まる中で、国内農業の強化と食料自給率の向上が急務となっています。
今後の展望として、食料自給率の向上には、国内農業の生産性向上や農地の維持・拡大、さらには消費者意識の変革が必要です。農林水産省は、これらの課題に対応するための政策を強化し、地域ごとの食料自給率向上に向けた取り組みを推進しています。地域の特性を生かした農業の活性化や、消費者が国産品を選ぶ機会を増やすことで、食料自給率の改善が期待されます。
今回発表されたデータや指標について、さらに詳しい情報を知りたい方は、農林水産省の公式ウェブサイトで詳細なデータや関連資料が提供されています。これにより、食料自給率や自給力指標の背景や変動要因について、より深く理解することが可能です。食料安全保障の観点からも、これらの情報は重要な意義を持っています。農業従事者や政策担当者のみならず、一般の消費者にとっても、これらの指標は自国の食料供給の現状を知る重要なツールとなるでしょう。
⇒ 詳しくは農林水産省のWEBサイトへ