2024年6月13日
労務・人事ニュース
令和5年度公害等調整委員会年次報告 都市型公害紛争事件35件新規受付、騒音事件の割合が約60%に
「令和5年度公害等調整委員会年次報告」の公表(総務省)
総務省の外局である公害等調整委員会(以下「公調委」)は、令和5年度の年次報告を公表しました。この報告は、公害等調整委員会設置法に基づき、毎年国会に提出されるもので、公調委の所掌事務の処理状況が詳細に記されています。公調委は、公害紛争の裁定や調停を通じて個別の公害紛争事件の解決を図る「公害紛争処理」と、鉱業等と公共の利益に関連する土地利用における調整を行う「土地利用調整」の二つの主要な任務を担っています。
令和5年度における公害紛争事件の処理状況について、以下のようなデータが報告されています。総係属事件数は75件で、そのうち35件が新規に受け付けられ、29件が終結しています。これらの事件の特徴として、都市部での騒音や悪臭、振動など、身近な生活環境被害を訴える「都市型・生活環境型」の公害紛争が増加傾向にあることが挙げられます。特に、騒音に関する事件の割合が高いことが目立っています。
土地利用の調整に関する処理状況として、令和5年度に係属した事件は1件で、行政処分に対する不服の裁定が行われました。また、土地収用法に基づく審査請求に関する意見照会への回答は116件(うち107件は同一事案)となっています。
具体的な事件として、自動車排出ガスによる大気汚染被害に関する裁定申請事件があります。この事件では、東京都など7都府県の住民153名が申請者となり、国および7つの自動車メーカーを相手に総額1億5300万円の損害賠
償を求めています。申請理由として、慢性気管支炎や肺気腫といった健康被害がディーゼル排気微粒子によるものであると主張しています。
また、茨城県稲敷市では、土砂埋立てに伴う土壌汚染に関する裁定申請事件がありました。この事件では、土木関係会社が無許可で産業廃棄物を埋め立てたことで、土壌や周辺井戸の水質が汚染され、精神的苦痛を受けたとして損害賠償を求めています。最終的に、公調委は申請の一部を認容し、一部を棄却する裁定を行いました。
岐阜県本巣市では、砂利採取計画変更不認可処分に対する取消裁定申請事件も報告されています。この事件では、砂利採取業者が岐阜県知事の不認可処分に対して異議を申し立てました。申請人は、不認可処分が違法であると主張し、裁定委員会が開催されました。最終的に、裁定委員会は申請人の主張を認容し、原処分を取り消す裁定を行いました。
公調委は、独立した準司法的な権限を持ち、個別の公害紛争事件の解決に取り組んでいます。これにより、住民の生活環境を守るための重要な役割を果たしています。また、土地利用調整では、鉱業や公共の利益に関わる問題を解決するための調整を行い、地域社会の健全な発展を支えています。
以上のように、令和5年度の公害等調整委員会年次報告は、公調委の活動状況や具体的な事例を通じて、地域社会の環境保護と健全な土地利用の促進に貢献していることを明らかにしています。今後も公調委の活動に期待が寄せられています。
⇒ 詳しくは総務省のWEBサイトへ