2024年7月6日
労務・人事ニュース
令和5年度大学等の研究者数、フルタイム換算で63,014人
「大学等におけるフルタイム換算データに関する調査」について(文科省)
令和6年6月26日、文部科学省は「令和5年度大学等におけるフルタイム換算データに関する調査」の概要を発表しました。この調査は、大学や短期大学、高等専門学校などの教育機関における研究者数をフルタイム換算値(FTE)に補正し、国際比較を可能にするためのデータを収集する目的で行われました。調査は5年に一度、OECDの勧告に基づき実施され、研究や教育に費やされる時間の実態を把握することを目指しています。
調査は総務省統計局が実施する「科学技術研究調査」のデータを基に行われました。対象となるのは、大学等の教員、大学院博士課程の在籍者、医局員、およびその他の研究員です。調査票は令和5年11月13日に送付され、令和6年1月15日までに回収されました。教員や医局員などの活動実態に関する設問は令和4年度の状況を基に回答が求められましたが、大学院博士課程の在籍者については令和5年度の状況を基に回答が求められました。
標本抽出は「令和4年科学技術研究調査報告」を基に行われ、学問分野別の抽出率を設定して無作為抽出が実施されました。調査対象者には専用ウェブサイトを通じて回答を依頼し、最終的に16,418人のうち8,779人から回答を得ました。回答率は53.5%でした。
調査結果として、フルタイム換算係数は教員が0.321、大学院博士課程の在籍者が0.838、医局員が0.168、その他の研究員が0.708と算出されました。これに基づき、全体のフルタイム換算値は63,014人となり、学問分野別に見ると、理学が5,455人、工学が12,344人、農学が2,655人、保健が20,156人、人文・社会科学およびその他が22,292人と算出されました。
職務活動時間の割合も調査され、教員全体では研究活動時間が32.1%、教育活動が46.6%、その他の職務活動が21.3%でした。学問分野別に見ると、理学の研究活動時間割合が最も高く48.3%、保健分野が最も低く28.4%でした。職位別では、教授の研究活動時間が最も多く、助教の診療活動時間が最も多いことが明らかになりました。
競争的研究費等の外部研究資金の獲得に必要な業務についても調査が行われ、申請に費やす日数は年間平均4.4日、報告に費やす日数は2.8日とされました。これに対する教員の業務負担が大きく、研究時間を圧迫しているとの指摘もあります。
研究パフォーマンス向上の制約としては、研究人材、研究時間、研究環境、研究資金の4つが挙げられ、それぞれについて教員が感じる制約の度合いが調査されました。特に、修士課程や博士課程の学生の不足、大学運営業務による過重な教育負担、研究補助者や技能者の不足、基盤的経費の不足が主な制約として認識されています。
過去5回の調査結果を比較すると、教員の研究活動時間割合は減少傾向にあり、教育活動やその他の職務活動が増加していることがわかりました。特に講師の教育活動時間の割合が増加し、令和5年度には34.0%に達しています。
この調査の結果から、大学等における研究者の活動実態が明確にされ、今後の政策策定や大学運営に重要なデータが提供されることが期待されます。研究活動時間の減少傾向や、外部資金獲得にかかる業務負担の軽減など、今後の改善点が浮き彫りとなりました。文部科学省は引き続き、研究環境の整備や支援策の充実を図り、大学等における研究活動の活性化を推進していく必要があります。
⇒ 詳しくは文部科学省のWEBサイトへ