2024年11月8日
労務・人事ニュース
令和6年の賃上げ率91.2%、全企業の9割以上が賃上げを実施
賃金の改定の実施状況(厚労省)
令和6年に実施された賃金引上げ等の実態調査によると、企業の91.2%が「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」と回答しています。この結果は前年の89.1%から増加しており、賃金改善に対する企業の取り組みが進んでいることを示しています。一方、賃金を引き下げた企業の割合はわずか0.1%と、前年の0.2%からさらに減少しています。また、賃金改定を実施しないとした企業は2.3%で、前年の5.4%に比べて大幅に減少しており、多くの企業が賃金改定に積極的であることがわかります。さらに、賃金改定が未定と回答した企業は6.4%で、前年の5.3%から若干の増加が見られます。
企業規模別にみると、すべての規模で9割以上の企業が賃金を引き上げる予定です。特に従業員5,000人以上の大企業では、99.1%が賃金を引き上げると回答しており、この層の企業は非常に高い割合で賃上げを実施しています。一方、従業員100~299人の中小企業においても、90.2%が賃金を引き上げる予定であり、全規模での賃上げ傾向が続いています。これらのデータは、賃金引上げが大企業のみならず、中小企業にも広がっていることを示しています。
産業別では、鉱業、採石業、砂利採取業、建設業、製造業など多くの産業で賃金引き上げが見られ、特に鉱業と電気・ガス・熱供給・水道業では全企業が賃上げを行うとしています。さらに、情報通信業や金融業、保険業などの専門職が多い業界でも賃上げの動きが活発で、情報通信業では91.7%、金融業・保険業では95.1%が賃上げを実施予定です。反対に、運輸業、郵便業、生活関連サービス業、娯楽業、宿泊業、飲食サービス業などでは賃上げの割合がやや低く、それぞれ74.4%、76.2%、83.3%となっています。これらの業界では、人手不足や経済状況の変動によるコスト増加の影響もあり、他産業に比べて賃上げが難しい状況が続いていることが推測されます。
労働組合の有無による賃金改定の違いを見てみると、労働組合がある企業では97.9%が賃金を引き上げると回答しており、労働組合の交渉力が賃金引き上げに寄与していることがわかります。一方、労働組合がない企業でも89.0%が賃上げを実施する予定であり、組合の有無にかかわらず賃上げが広がっていますが、労働組合が存在する企業の方が高い賃上げ率を示しています。
賃金引上げの実施時期についても調査されており、企業の78.8%が1月から8月の間に賃金引き上げを実施または予定しています。さらに、6.0%の企業は9月から12月にかけて賃上げを行う予定であり、また2.3%の企業は1月から8月の間と9月から12月の両方の期間にわたって賃上げを行うとしています。このように、賃金引上げは年初から中期にかけて多く実施されていますが、年後半にかけても引き続き賃上げが行われる企業が一定数存在することがわかります。
前年の令和5年の調査結果と比較すると、賃金を引き上げた企業の割合は89.1%で、今年の91.2%よりもやや低い水準でした。これに対して、賃金を引き下げた企業の割合は0.2%で、今年の0.1%とほぼ同じでした。また、賃金改定を実施しないとした企業は5.4%で、今年の2.3%と比べて約3ポイント高く、今年は賃上げに対する企業の積極性が際立っていることがわかります。
産業別のデータでは、令和5年と令和6年の両年度においても、多くの産業で賃金引き上げが見られますが、運輸業や宿泊業、飲食サービス業など、顧客対応を中心としたサービス業では引き続き賃上げの割合が他業界よりも低いことが特徴的です。この背景には、サービス業における利益率の低さや、経済的な不確実性が影響している可能性があります。
全体として、令和6年の賃金引上げに関する実態調査は、企業規模や産業に関係なく、幅広い分野で賃金引き上げが進んでいることを示しています。特に大企業だけでなく、中小企業においても賃上げの動きが広がっている点が注目されます。一方で、産業によっては賃上げの実施が難しい状況が続いており、今後の景気動向がこれらの業界にどのように影響を与えるかが注目されます。
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