2024年11月9日
労務・人事ニュース
令和6年の賃金改定、企業業績を重視した45.6%の企業が実施へ
賃金の改定事情(厚労省)
令和6年の賃金引上げに関する調査結果によると、賃金改定の際に最も重視された要素として、企業業績が35.2%とトップを占めました。前年と比較すると若干の減少は見られるものの、依然として多くの企業が賃金決定において業績を重要視していることがわかります。次いで「労働力の確保・定着」が14.3%、そして「雇用の維持」が12.8%と続いています。特に昨今の経済状況や労働市場の動向を踏まえると、企業にとって人材確保や雇用の維持が重要な課題となっていることが窺えます。
この調査によると、賃金改定を実施または予定している企業の中で、企業の業績を重視した企業の割合は約45.6%です。さらに、業績評価の理由としては「販売数の増加・減少」が35.0%で最も多く、企業の売上や販売活動が賃金改定に強く影響していることが見て取れます。一方で、業績が「悪い」と評価した企業でも「販売数の増加・減少」が9.1%と最も多く、業績不振の理由としても売上の変動が大きな要因であることがわかります。
また、賃金改定において他にも重視された要素としては、「雇用の維持」や「労働力の確保」が挙げられます。これらは特に人材不足が顕著な業界や地域において重要なポイントであり、企業が優秀な人材を確保し続けるためには、賃金水準の適切な見直しが求められる状況です。さらに、物価の動向や労使関係の安定なども少なくない企業において重視されており、これらの要素が賃金改定の際に考慮されています。
このような背景から、多くの企業が賃金改定において業績評価を重視していることが確認されました。しかし、企業の業績に応じて改定の内容や規模にはばらつきがあり、特に大企業においては、より売上の動向や市場の影響を反映した柔軟な賃金改定が行われていることが特徴的です。具体的には、従業員5,000人以上の企業では、賃金改定を実施した企業の約50.3%が「企業業績」を最も重視しており、他の規模の企業に比べて高い割合を示しています。
一方で、従業員数が少ない企業では、企業業績以外の要素、例えば「雇用の維持」や「労働力の確保」に重点を置く傾向が強く、特に中小企業においては、賃金改定が必ずしも業績だけで決定されるわけではないことがわかります。これにより、企業ごとに異なる要素が賃金改定に影響を与えていることが明らかになりました。
さらに、賃金改定を行った企業の業績評価の結果についても言及する必要があります。全体の45.6%が「良い」と評価した一方で、15.2%の企業が「悪い」と評価し、37.9%が「どちらとも言えない」と答えました。これは、企業が業績を評価する際の基準や方法が企業ごとに異なっており、また、外部環境や業界特有の要因も影響しているため、一概に「良い」「悪い」と判断するのが難しいということを示しています。
業績が「良い」と回答した企業の理由としては、販売数の増加が主な要因として挙げられています。また、原材料費や経費の減少も業績改善の要因となっているケースが多いことが示されています。一方で、業績が「悪い」と回答した企業では、販売数の減少や原材料費の増加が主な理由とされており、これらが企業の収益に直接的な影響を与えていることがわかります。
このように、令和6年の賃金改定に関する調査結果からは、企業が賃金改定を行う際に多くの要因を考慮していることが浮き彫りになっています。企業業績が大きな要因であることは間違いありませんが、それだけでなく、人材の確保や物価の動向、労使関係の安定など、さまざまな側面が賃金決定に影響を与えていることがわかります。企業規模や業界ごとに異なる状況があり、各企業が自社の状況に応じた最適な賃金改定を行っていることが示唆されています。
以上の結果を踏まえると、企業が賃金改定を行う際には、単に業績だけでなく、長期的な人材確保や組織の安定を見据えた戦略的な判断が求められていることがわかります。特に、労働力不足が深刻化する中、適切な賃金改定が企業の成長と従業員のモチベーション向上に寄与する重要な要素であることは明白です。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ