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2024年11月8日

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令和6年の賃金改定額は前年比26.7%増加、平均11,961円の上昇を記録

賃金の改定額及び改定率(厚労省)

令和6年の賃金引上げに関する調査によると、企業の賃金改定における傾向が具体的に示されています。この調査では、賃金の改定額や改定率が詳細に記載されており、企業の規模や業種、労働組合の有無によっても結果が異なることが確認されています。特に注目すべきは、全体として賃金改定額が前年を上回る傾向にあることです。

まず、全体の賃金改定額の平均は11,961円であり、これは前年の9,437円と比較して大幅な増加が見られます。改定率についても、前年の3.2%から4.1%へと上昇しています。この賃金改定の傾向は、企業の規模や業種ごとに違いが見られるため、詳細に分析していく必要があります。

企業の規模別に見ると、大規模企業では賃金改定額がより高い傾向があります。具体的には、5,000人以上の企業では15,121円、改定率は4.8%と特に高い水準を示しています。一方で、中小規模の企業でも賃金の引き上げが進んでおり、1,000~4,999人の企業では12,317円、改定率は4.1%となっています。また、300~999人規模の企業では10,618円、100~299人規模の企業では10,228円と、いずれも前年を上回る数字となっています。これらの数字は、中小企業でも賃金改定が進行していることを示しており、企業規模にかかわらず、従業員の賃金水準が改善されていることが伺えます。

さらに、労働組合の有無による差も明確に表れています。労働組合がある企業では、1人平均賃金の改定額は13,668円で、改定率は4.5%です。これに対して、労働組合がない企業では10,170円、改定率は3.6%と、労働組合の有無によって賃金改定に差が生じていることがわかります。労働組合がある企業では、交渉力の強さが賃金改定に大きく影響していることが推測されます。

業種別に見ても、賃金改定の状況はさまざまです。特に、鉱業や建設業、製造業などでは、賃金改定額が他の業種と比較して高い傾向があります。具体的には、鉱業・採石業では14,616円、建設業では15,283円、製造業では13,262円と、それぞれ高い水準の賃金改定が行われています。これらの業種は、需要が高く、賃金引き上げの余地が大きいと考えられます。

一方で、運輸業や郵便業、宿泊業、飲食サービス業などでは、賃金改定額が他の業種と比べて低い傾向が見られます。運輸業・郵便業では9,030円、宿泊業・飲食サービス業では9,654円と、10,000円を下回る賃金改定額となっています。この背景には、業界全体の収益性や労働環境の違いが影響していると考えられます。

また、医療・福祉分野では賃金改定額が6,876円、改定率は2.5%と、全体の中でも特に低い水準にとどまっています。この分野では、人手不足が叫ばれている一方で、賃金引き上げが十分に進んでいない状況が伺えます。これにより、医療・福祉分野における人材確保がさらに難しくなる可能性があると懸念されています。

年次推移に目を向けると、平成23年以降、賃金改定額や改定率は増加傾向を示してきました。しかし、令和2年および3年には一時的に低下しましたが、令和4年から再び上昇に転じています。令和5年、6年にはさらなる上昇が見られ、これはコロナ禍からの経済回復が背景にあると考えられます。また、企業側の人材確保への取り組みが強まっていることも、賃金改定の押し上げ要因として挙げられるでしょう。

このように、企業の賃金改定の実態を分析すると、全体としては賃金引き上げの動きが加速しているものの、業種や企業規模、労働組合の有無などによって大きな差があることがわかります。特に、労働組合の存在や業種ごとの経済状況が、賃金改定に与える影響は無視できません。今後も、この賃金改定の動向を注視し、企業は適切な賃金改定を行うことで、優秀な人材を確保し、競争力を維持することが求められます。

また、この賃金改定の動向は、企業の採用活動にも直接的な影響を与える要素となっています。賃金の引き上げによって、企業はより魅力的な労働環境を提供できるようになり、採用競争力を高めることが可能です。しかし、その一方で、業界全体の賃金水準や経済環境を考慮しながら、バランスの取れた賃金改定が求められます。

最後に、賃金引き上げの状況は、今後の労働市場全体においても重要な課題となるでしょう。企業は引き続き、適切な賃金改定を行うことで、従業員のモチベーションを高め、企業の成長を促進するための施策を展開していく必要があります。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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