2024年12月30日
労務・人事ニュース
令和6年上半期、卸売業・小売業で822.1千人が離職、761.9千人が医療・福祉に新規入職
令和6年上半期雇用動向調査結果の概要 産業別の入職と離職の状況(厚労省)
令和6年上半期の労働市場動向における入職と離職の状況について、産業別の詳細なデータが発表されました。この期間、労働移動者の動きは特に「卸売業、小売業」や「医療、福祉」、「宿泊業、飲食サービス業」で顕著であり、業界ごとの雇用の特徴が明らかになっています。
まず、入職者数を見ると、「卸売業、小売業」が最も多く、778.3千人に達しました。次いで「医療、福祉」が761.9千人、「宿泊業、飲食サービス業」が686.2千人と続きます。これらの産業は、特に労働需要が高く、雇用の受け皿として機能していることが分かります。一方で、離職者数の多さにも注目する必要があります。「卸売業、小売業」では822.1千人が離職し、「医療、福祉」が709.5千人、「宿泊業、飲食サービス業」が643.7千人と続いています。このように、労働者が多く入職する一方で、同時に多くが職場を去っている現状が見て取れます。
就業形態別に入職率と離職率を分析すると、一般労働者では「宿泊業、飲食サービス業」の入職率が12.9%と最も高く、次いで「生活関連サービス業、娯楽業」が11.6%となっています。離職率では「宿泊業、飲食サービス業」が10.9%、「サービス業(他に分類されないもの)」が9.9%と高い割合を示しています。これに対して、パートタイム労働者では、「宿泊業、飲食サービス業」の入職率が18.3%と群を抜いており、「教育、学習支援業」が17.0%と続きます。同じく離職率も「宿泊業、飲食サービス業」で17.9%と最も高く、次いで「電気・ガス・熱供給・水道業」が17.2%となっています。このように、パートタイム労働者の間では、より高い労働移動の傾向が見られることが分かります。
また、産業別に入職超過率を見てみると、「宿泊業、飲食サービス業」は1.0ポイントと比較的高い結果を示していますが、これに続く「生活関連サービス業、娯楽業」では2.7ポイントとさらに高い傾向が見られます。このような入職超過率の高さは、特定の産業が労働市場においてどれほど魅力的であるか、または労働者の定着率に課題があるかを示す指標と考えられます。
これらのデータを基に、採用担当者が注目すべき点として、各業界の入職率と離職率を踏まえた戦略的な雇用計画が挙げられます。特に「宿泊業、飲食サービス業」や「生活関連サービス業、娯楽業」は高い労働移動率が示されているため、労働環境の改善やキャリアアップの機会提供など、従業員の定着を促進する施策が求められるでしょう。
また、パートタイム労働者の割合が高い産業では、労働時間や待遇の見直しも効果的です。例えば、「教育、学習支援業」ではパートタイム労働者の入職率が17.0%と高く、この労働力をいかに継続的に活用できるかが鍵となります。一方で、全体的な離職率が高い産業においては、退職理由を詳細に分析し、それに基づいた改善を行うことが重要です。
さらに、採用計画を立案する際には、特定の業界での人材供給と需要のバランスを考慮する必要があります。特に、「医療、福祉」の分野では、入職者と離職者の差がわずか52.4千人にとどまっており、業界の持続可能性を支えるための長期的な視点が求められます。
最後に、今回の調査結果は、労働市場における多様な課題と機会を浮き彫りにしています。企業が労働市場の動向を的確に捉え、労働者にとって魅力的な職場環境を提供することで、競争力を強化し、長期的な成長を実現する可能性があります。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ