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2024年10月6日

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令和6年医療費動向:高齢者層での医療費増加、80歳以上で最大7.2%の伸び

最近の医科医療費(電算処理分)の動向(令和6年度4~5月号)(厚労省)

令和6年4月から5月にかけて、厚生労働省が発表した医科医療費(電算処理分)の動向は、医療現場における受診数や医療費の変動を示す重要なデータとして注目されています。特に、前年同月比の伸び率が注目されており、医療費の増加傾向や患者の受診状況に関する詳細な分析が行われました。

まず、令和6年4月の医科医療費の伸び率は、前年同月比で+3.7%、5月では+1.9%の増加が見られました。これに対して、受診延日数は4月が+4.2%、5月が+0.8%と、受診者数の増加が特に4月に顕著であったことがわかります。1日当たりの医療費に関しては、4月は微減の-0.5%であったものの、5月には+1.0%と増加に転じました。これらのデータは、医療機関におけるサービス提供の増加と、受診者の多様なニーズに対応するための医療体制が整備されつつあることを示唆しています。

次に、医療費を診療種類別に見てみると、入院医療費の伸び率は4月が+2.7%、5月が+2.0%であり、入院外医療費では4月が+4.8%、5月が+1.7%となっています。特に、入院外医療費の伸びが4月に大きく、外来での受診が増加していることがうかがえます。これに対し、1日当たりの医療費では入院が+1.4%、+1.1%、入院外が-0.2%、+0.9%と、外来医療費の単価が若干抑制されている傾向が見られます。

制度別に医療費の動向を分析すると、被用者保険における医療費の伸び率が4月に+5.6%、5月に+2.2%と高い伸びを示している一方で、国民健康保険における医療費は4月が-0.9%、5月が-2.4%と減少しています。また、後期高齢者医療制度では4月が+5.1%、5月が+4.1%と安定した増加を記録しており、高齢者の医療ニーズが引き続き高いことが明らかになっています。公費に関しては、4月が+1.9%、5月が横ばいの+0.0%であり、政府の支援による医療サービスの提供が一定の水準で維持されていることがわかります。

医療機関の種類別に見ると、大学病院や公的病院が引き続き高い伸びを示しており、4月の大学病院の医療費伸び率は+7.6%、5月は+5.2%となっています。公的病院も4月が+4.8%、5月が+3.3%と堅調な伸びを見せており、地域医療を支える主要な役割を担っています。一方で、病床数200床未満の医科病院や診療所では、伸び率がやや抑制されており、規模の大きな病院が患者を多く受け入れている傾向が伺えます。病床数200床以上の医科病院では、4月が+3.9%、5月が+2.5%と増加していますが、特に入院外での医療提供が進んでいることがわかります。

地域別の分析において、医科医療費の伸び率が最も大きかったのは、4月が和歌山県で+5.5%、5月が北海道で+4.2%でした。一方、最も伸び率が小さかった地域は、4月が佐賀県で-2.0%、5月が石川県で-2.0%と、地域間での医療需要の違いが浮き彫りになっています。特に、北海道の5月の伸びが顕著であり、地域ごとの医療提供体制や人口構成の影響が考えられます。

年齢階級別の医療費伸び率では、4月に最も大きな伸びを示したのは10歳以上15歳未満の+9.3%、5月は80歳以上85歳未満で+7.2%でした。特に高齢者層での医療費増加は顕著であり、これは高齢化社会の進展によるものと考えられます。一方で、0歳以上5歳未満の乳幼児層では4月が-10.0%、5月が-17.3%と大幅な減少が見られ、乳幼児医療の需要減が一時的に進んでいる可能性があります。

さらに、傷病分類別の分析では、循環器系の疾患や新生物、筋骨格系の疾患が引き続き高い割合を占めており、特に新生物(がん)に関する医療費の伸び率が4月で+5.3%、5月で+4.1%となっています。また、筋骨格系の疾患では4月が+7.0%、5月が+4.9%、呼吸器系疾患も4月で+7.1%、5月が+1.9%と、慢性的な病状を抱える患者が多いことが反映されています。これらの疾患は、高齢化社会において継続的に医療リソースが必要とされる分野です。

診療内容別では、入院基本料や特定入院料が4月に-2.2%、5月に-1.8%と減少傾向にあり、入院医療費の効率化が進んでいる可能性があります。これに対して、DPC(診断群分類別包括評価)による包括部分は4月に+5.2%、5月に+4.4%と増加しており、診療報酬の効率化が一部進んでいることが示唆されます。また、薬剤料や検査・病理診断、手術・麻酔に関しても高い伸びを示しており、特に手術・麻酔では4月が+7.5%、5月が+5.1%と増加しています。これにより、医療技術の進展とともに、複雑な手術や高度医療の需要が高まっていることがうかがえます。

今回のデータからは、医科医療費全体の増加傾向が続いており、特に高齢者層や慢性疾患を抱える患者に対する医療提供が重要であることが浮き彫りになっています。また、地域や年齢階級、傷病分類に応じた医療リソースの適切な配分が求められる中、今後の医療制度改革において、効率的かつ質の高い医療サービスの提供が不可欠であることが明らかになりました。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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