2024年9月29日
労務・人事ニュース
令和6年夏期の山岳遭難660件発生、死者52人減少も引き続き注意喚起
令和6年夏期における山岳遭難・水難の概況について(警察庁)
令和6年の夏期(7月から8月)における山岳遭難の概況によると、全国の山岳で発生した遭難件数は660件で、前年と比べて78件の減少が見られました。遭難者の数は736人で、これも前年から73人の減少となっています。特に、死者や行方不明者の数は52人で、前年に比べて9人減少しました。この数値は速報値であり、今後変更される可能性もありますが、過去5年間の夏期における傾向から見ると、発生件数と遭難者数は増加傾向にあったところ、今年は減少に転じました。
遭難の発生状況を都道府県別に見ると、長野県が最も多く、116件の遭難が発生しています。次いで富山県が64件、静岡県が62件となっており、これらの地域は特に山岳地帯が広がる地域として知られています。
遭難者の736人の内訳を目的別に見ると、登山が594人と全体の約80.7%を占めており、最も多い目的です。次いでハイキングが38人で5.2%、沢登りが27人で3.7%と続いています。この結果から、登山が圧倒的に多くの人々に選ばれる活動であり、その危険性が高いことが分かります。
また、遭難の態様別では、転倒が169人で全体の23.0%、道迷いが143人で19.4%、滑落が120人で16.3%を占めています。これらの要因は、登山中に起こりやすい事故の代表的な例であり、特に足元の不安定さや道の不確かさが原因となることが多いです。
年齢層別では、70歳代が最も多く、166人が遭難しています。次いで60歳代が164人、50歳代が148人と続いており、中高年層が多く遭難していることが分かります。これに対して、若年層の遭難者は少なく、20歳未満は42人、20歳代は57人となっています。このデータは、中高年層の登山者が増えていることや、その体力や判断力の衰えが遭難の一因となっている可能性を示唆しています。
山岳遭難を防ぐためには、いくつかの対策が重要です。まず、的確な登山計画と万全な装備の準備が求められます。登山計画を立てる際には、気象条件や体力、技術、経験、体調などを考慮し、無理のない山を選ぶことが大切です。また、休憩時間をしっかりと確保した余裕のある登山日程を組み、必要な装備や食料の準備も忘れないようにしましょう。特に、滑落などの危険がある箇所や緊急時に下山できるルート(エスケープルート)を事前に把握しておくことが重要です。
登山中は常に最新の気象情報を把握し、山の気候に合った服装や装備を選びましょう。登山靴やヘルメット、雨具、簡易テント、地図、コンパス、行動食など、必要な物はすべて準備しておくべきです。また、万が一遭難した際に助けを呼ぶための通信機器も必須で、携帯電話や無線機、予備バッテリーなどを用意しておくことが推奨されます。特にGPS機能付きの携帯電話は、自分の現在地を救助隊に速やかに伝えるために有効ですが、山岳地帯では通話エリアが限られていることや、バッテリーの残量に十分注意する必要があります。
また、単独登山は危険性が高く、トラブルが発生した際に対処が困難になるため、できるだけ複数人で信頼できるリーダーのもと登山を行うことが望ましいです。そして、登山計画書や登山届は、家族や職場と共有することで、万が一の際に迅速な捜索や救助の手掛かりとなります。登山口の登山届ポストに提出したり、インターネットやアプリを通じて警察や自治体に提出することも忘れずに行いましょう。
さらに、遭難を防ぐための具体的な方法として、地図やコンパスを携帯し、自分の位置を常に確認することが挙げられます。登山地図アプリと紙の地図を併用することで、より正確な位置を把握でき、道迷いの防止にもつながります。滑落や転落を防ぐためには、登山靴やピッケル、アイゼンなどの装備を適切に使用し、常に慎重な行動を心がけましょう。特に、滑落や転落の危険がある場所では、ヘルメットを必ず着用することが推奨されます。
最後に、天候の急変や体調不良時には、冷静な判断が求められます。視界不良や体調不良が原因で滑落などの危険が高まることから、少しでも道に迷ったと感じた場合は、無理に進まず、来た道を戻ることが重要です。また、危険を感じた場合には、早めに登山を中止する決断が求められます。
これらの対策を講じることで、山岳遭難のリスクを大幅に減らすことが可能です。登山者一人ひとりがこれらの基本的なルールを守り、安全な登山を心がけることが求められています。
⇒ 詳しくは警察庁のWEBサイトへ