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2024年11月18日

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令和6年度「スケトウダラ」「ズワイガニ」など主要水産資源8種15資源の最新評価結果を水産庁が公表

令和6年度我が国周辺水域の水産資源に関する評価結果が公表されました(スケトウダラ、ズワイガニ、マダラ、アカガレイ、ソウハチ、ニギス、ヒラメ、ムシガレイ)(水産庁)

水産庁は令和6年10月31日、国立研究開発法人水産研究・教育機構が行った我が国周辺水域の水産資源評価結果を公表しました。この評価は、スケトウダラやズワイガニ、マダラ、アカガレイ、ソウハチ、ニギス、ヒラメ、ムシガレイといった8種15資源についての調査結果を含んでいます。

この資源評価は、192魚種の対象魚種の中から主要な水産資源の状況を把握し、今後の資源管理に役立てるために実施されるものです。評価は、国立研究開発法人水産研究・教育機構と、関係する都道府県の試験研究機関などによる共同実施機関に事業委託する形で行われています。水産資源の持続可能な利用と保全を目指し、これらの評価結果は、漁業者や水産関係者が資源管理の重要性を理解し、資源保護の取り組みを推進するための基盤となります。

本年度の調査結果公表により、これら水産資源の現状把握が進み、各種資源の持続的な活用を支えるための管理方針策定や実行が期待されています。

2023年のスケトウダラ漁獲量が5.8万トンに減少、資源保全の現状を解説

スケトウダラは北海道周辺から北日本、さらには北方四島にかけて広がり、日本の漁業資源において重要な存在です。特にその資源量と漁獲量の推移は、水産業の収益や地域経済に密接な影響を与えるため、資源管理は持続可能な生産を確保するために欠かせない要素となっています。

スケトウダラの漁獲量は2000年代に入りTAC(漁獲可能量)規制が導入され、約10.9万~21万トンで安定的に推移しました。しかし、2015年から2018年にかけては減少傾向を示し、2022年以降は北海道東部における漁場形成が不良な状況に陥ったこともあり、2023年には漁獲量が5.8万トンにまで落ち込みました。また、年齢別に見ても、1980年代には0歳と1歳の若齢魚が主な漁獲対象でしたが、2000年代後半以降は4歳以上の成熟魚が漁獲の中心となっています。これは漁場の変遷や漁業方法の変化が影響していると考えられます。

資源量の動向として、スケトウダラの親魚量はMSY(最大持続生産量)を達成する目標管理基準値である22.8万トンを基準に管理され、2023年の親魚量は41.3万トンで、基準値を上回る水準にあります。しかし、年により加入量(新たに資源に加わる若齢魚の数)は大きな変動があり、たとえば2016年には卓越年級群(特に豊富な世代)が形成されましたが、2018年や2019年には加入量が極めて少なく、長期的な資源の安定性に対して懸念が残ります。

漁獲圧については、過去数十年間にわたり、特に2001年以降は最大持続生産量(MSY)を維持する漁獲圧(Fmsy)を概ね下回る水準で推移しており、過剰漁獲のリスクが低い状況が続いています。2023年にはFmsyの0.28倍とさらに低い水準で管理されており、親魚量の保全が図られていることがわかります。さらに、再生産関係の解析によれば、2024年においては親魚量が22.8万トンを維持する可能性が高いと予測されています。

将来予測としては、β(調整係数)を用いた漁獲管理規則に基づき、2025年以降の親魚量および漁獲量の推移がシミュレーションされています。βを0.9とした場合、2025年の漁獲量は19.3万トンに達すると見込まれ、2031年までに親魚量が目標管理基準値を上回る確率は58%と予測されています。しかし、2018年や2019年に加入した年級群の豊度が極めて低いことを踏まえると、短期的には親魚量と資源量が減少する可能性も考えられます。2022年の年級群については調査から高い豊度が見込まれており、資源量の減少が一時的なものである可能性も示唆されています。

スケトウダラ資源の管理には、「神戸プロット」と呼ばれる評価手法が導入されており、これは資源量と漁獲圧の関係を視覚的に示すものです。近年では、親魚量が目標管理基準値を上回る傾向にあり、現行の漁獲圧のもとで資源の安定が図られています。2023年には、親魚量が基準値の1.81倍、漁獲圧が基準の0.28倍という極めて安全な状態であったことが評価されています。これは、安定的な漁業活動を継続しながら、持続可能な資源管理を実現するための重要な基盤を形成しています。

今後の漁獲シナリオとしては、βを0.9に設定し、持続的に資源量が基準値を上回るように管理が行われる見通しです。仮にこのシナリオ通りに運用された場合、2025年以降の平均漁獲量はMSYに近い水準で推移することが期待されます。さらに、資源量の評価と漁獲圧の調整が定期的に見直され、資源が減少した場合には速やかに禁漁措置や漁獲量の削減が検討される仕組みが整っています。

持続可能な漁業を実現するためには、資源量や加入量の変動に応じた柔軟な対応が不可欠です。スケトウダラの場合、特に1981年以降、加入量が増減を繰り返していることから、将来予測に基づく資源管理の精度向上が求められます。資源評価の結果は毎年更新され、その都度ABC(許容漁獲量)が設定されることで、資源の持続可能性が保たれる仕組みとなっています。このように、科学的データに基づいた管理が行われることで、太平洋系群スケトウダラは今後も安定した漁業活動を支える重要な資源であり続けると期待されます。

参考:スケトウダラ太平洋系群

日本海北部系群スケトウダラ、資源量が28.6万トンに回復

北海道沿岸のスケトウダラ(日本海北部系群)の資源動向について最新の調査結果が報告されました。この地域のスケトウダラは、特に産卵期に漁獲される重要な水産資源であり、地域経済にとっても不可欠な存在です。近年、漁獲量と資源量の減少傾向が続く中で、適切な資源管理が求められています。最新のデータによれば、2023年の漁獲量は前年度と比較して増加し、7,643トンに達しました。これは、TAC(総漁獲可能量)の増加が影響していると考えられます。1993年からの長期的な減少傾向に対し、2023年の増加は注目すべき変化といえるでしょう。

漁獲尾数の年齢構成についても顕著な変化が見られました。1990年代初頭には3歳から5歳の若い魚が漁獲量の大部分を占めていましたが、その割合は徐々に減少しています。最近では、2015〜2018年の漁期において2012年級群の魚、2020〜2022年には2015年と2016年の級群が主体となり、2023年には2015、2016、2018年級群が多くを占める結果となりました。これは、漁獲対象が成熟した魚へシフトし、若齢魚の割合が減少していることを示唆しています。

また、資源量と親魚量も長期的に減少傾向が続いています。2014年以降の資源量の推移を見ると、増加傾向にあるものの依然として低水準であり、2023年の資源量は28.6万トン、親魚量は14.2万トンとなっています。この増加は、特に2012年、2015年、2016年、2018年、2019年、2021年級群の高い豊度に支えられていますが、今後も安定的な資源供給を維持するためには、引き続き資源管理が必要です。

再生産に関するデータも示されており、1980〜2017年における親魚量とそれに対する再生産率が明らかにされています。ホッケー・スティック型の再生産関係が適用され、過去のデータから2024年度の資源評価が更新されました。特に、2歳時に高い加入量を示した年には資源量の増加が確認されています。しかし、2007〜2009、2011、2013、2017年級群においては、2歳時の加入量が0.5億尾以下と低く、資源維持の難しさが伺えます。

漁獲管理の観点から、最も重要視されるのが管理基準値と禁漁水準の設定です。最大持続生産量(MSY)を達成する親魚量(SBmsy)は38万トンと算定され、限界管理基準値はMSYの60%の漁獲量、禁漁水準はMSYの10%の漁獲量が得られる親魚量と設定されています。2023年の漁期では漁獲量が増加しており、これに伴い漁獲圧も増加していますが、漁獲圧は2017年以降、管理基準を下回っている状況です。

将来の資源量と漁獲量に関する予測も立てられており、漁獲シナリオでは中長期的な増加が見込まれています。β=0.9を適用した漁獲管理規則のもと、親魚量の平均値は2024年漁期以降に限界管理基準値を上回ると予測されており、これにより資源の回復が期待されています。ただし、将来の予測には不確実性が含まれるため、慎重な管理が求められます。

将来的な親魚量の予測値は2025年には19.7千トンに達し、2031年には管理基準値の38万トンを上回る確率が5%とされています。この数値は、現状の漁獲圧(2019〜2023年漁期の平均)に基づいた場合と比較しても楽観的な結果です。また、ABC(許容漁獲量)も予測され、2025年漁期において18.5千トン、将来的な増加が見込まれています。このような資源管理の計画は、持続可能な漁業の実現に向けた具体的な施策として評価されています。

現在、漁獲圧の調整係数であるβを0.7〜1.0の範囲で検討する中で、漁獲量と資源量のバランスを取りながら持続可能な資源利用を実現する努力が続けられています。これらの資源管理の取り組みは、将来にわたって安定した水産資源の供給を図りつつ、地域経済への貢献も視野に入れたものであり、産業としての持続可能性を支える重要な施策です。

最後に、今後の資源評価の更新に伴い、漁獲シナリオや許容漁獲量の見直しが行われる予定であるため、引き続き最新のデータに基づく資源管理が必要です。日本海北部系群のスケトウダラ資源は地域社会にとっても重要なものであり、継続的なモニタリングと適切な管理が求められています。

参考:スケトウダラ日本海北部系群

根室海峡のスケトウダラ資源、2023年漁期は0.7万トンまで減少

根室海峡のスケトウダラ資源について、近年の資源管理と漁獲状況に関する報告を詳しく分析すると、複数の要因が浮かび上がってきます。スケトウダラは北太平洋全域に分布しており、日本の根室海峡における個体群も含め、その動向は地域の水産業にとって重要です。根室海峡でのスケトウダラの資源量や漁獲量の推移には、隣接するロシア水域の影響も含まれており、これが漁獲管理にとって課題となっています。隣接水域にまたがるスケトウダラ資源は、日本の漁船が利用する産卵期に訪れるとされており、地域を越えた「跨り資源」として扱われます。

根室海峡のスケトウダラ漁業における漁獲量は、過去数十年で大きな変動が見られます。1989年漁期には11.1万トンに達し、これが観測された最高値ですが、その後急減し、2000年には1万トン以下にまで減少しました。この一時的な低迷期を経て2010年頃には一時的な増加が見られましたが、その後は再び減少傾向に転じ、2023年漁期には0.7万トンまで落ち込んでいます。資源量の減少に対応するため、漁業関係者は持続可能な漁業管理と資源の保護に向けた対応を強化してきました。

漁獲量と並行して、漁獲努力量(延べ出漁隻数)についても減少が続いています。専業の固定式刺網漁業では2002年漁期まで大幅に減少した後、ほぼ横ばいの状態にあります。また、はえ縄漁業では1983年に最高値を記録した後、減少傾向が続いています。隣接するロシア漁船の漁獲努力量については明確なデータがないため、これが日本側の漁業資源への影響をどの程度与えているかについての判断は困難です。こうした不確実性も含め、日本の漁業者は持続可能な利用を目指した管理を進めています。

資源量の指標値も、漁獲努力量と同様に大きな変動を見せています。2002年以降、羅臼地区におけるスケトウダラの固定式刺網漁業のデータから、1隻日あたりの漁獲量を資源量指標値と定義しました。これによれば、1981年から2019年の間で観測された最低値である0.71トン/隻日を維持、または回復することを目標としています。2023年漁期には、この目標水準を上回る1.68トン/隻日という指標値が記録され、目標達成に向けた前進が確認されました。

しかし、スケトウダラの資源管理においては、最大持続生産量に関する明確な基準値を設定するのが困難です。隣接水域のロシア船の影響や漁場が広範囲にわたることもあり、単一国での管理基準設定が難しいのが現状です。そのため、漁獲シナリオの策定においては、漁業者の操業水域である根室海峡における資源利用が最適になるようにすることが求められています。具体的には、資源量の持続可能なレベルを維持しながらも、操業を効率的に行うための工夫が重視されています。

ブロック操業もまた、スケトウダラの資源保護と操業コスト削減の一環として導入されています。ブロック操業とは、複数の経営体がグループを形成し、その中で特定の漁船が交代で休業する方式です。この手法により漁獲圧が軽減され、資源に対する負荷が抑制されるだけでなく、コストの面でも利点があるとされています。ブロック操業を実施することで、操業コストの削減と同時に資源保護の観点からも持続可能な漁業への貢献が期待されており、この方式が広まることで地域の漁業が安定しやすくなると考えられています。

このように、日本の漁業者はスケトウダラ資源の持続的な利用と適切な管理を目指しており、過去のデータや目標指標値を基にした計画を立て、必要に応じて修正を加えることで、安定的な資源利用を実現しようとしています。しかし、隣接水域にまたがる資源管理の課題は依然として残っており、特にロシアとの協調や情報交換が不足している点が今後の課題です。具体的なデータの取得が難しいため、総合的な判断が難しく、日本の漁業者だけでの管理には限界があることが浮き彫りとなっています。

これらの背景を踏まえ、将来的には国際的な協力体制の構築が不可欠であると言えるでしょう。日本は自国の漁業資源の保護に努める一方で、他国との協力やデータ共有を通じて広範な視点からの漁業管理を実現していく必要があります。特にスケトウダラのような広域分布種では、単独国による管理は資源の持続可能性を確保するには不十分であるため、ロシアとの連携を強化し、相互に資源保護を図る取り組みが求められます。今後の対策として、資源量の定期的なモニタリングと科学的評価を基にした管理方針の確立が重要です。また、ロシアとの間で資源管理に関する協議を重ね、両国が共通の理解のもとで持続的な漁業資源の利用を進めることが期待されています。

持続可能なスケトウダラ漁業を実現するためには、データに基づいた科学的な管理と地域を超えた協調が不可欠です。日本が根室海峡におけるスケトウダラ漁業の管理において、国内外の情勢を見据えながら柔軟な対応を取ることで、将来的な資源保全と漁業の安定的な発展が見込まれます。

参考:スケトウダラ根室海峡

オホーツク海南部スケトウダラ、2023年漁期に3.8万トン!

このスケトウダラ資源は、オホーツク海南部に広範に分布し、特に日本とロシアの水域にわたって移動する「跨り資源」として特徴づけられます。具体的には、スケトウダラは成長の一時期に日本水域へ来遊し、漁業の対象となります。このような資源の特徴から、漁獲量は単に国内の漁業努力だけでなく、ロシア水域からの来遊量に大きく依存しています。

1986年にはソビエト連邦(現在のロシア連邦)による漁獲規制強化により、日本側での漁獲量が大幅に減少しました。この影響により、日本のスケトウダラ漁業も調整を迫られ、漁船数や漁獲方法の見直しが進められました。近年においても、漁獲量は2万〜5万トンの範囲で変動しており、2023年漁期には約3.8万トンに達しました。これはロシア水域からの来遊量に依存している現状を示しています。

この漁業の中心をなすのは沖合底びき網漁業であり、かつては80隻の許可漁船があったものの、段階的な減船により、2016年以降は14隻まで減少しました。また、漁法はオッタートロールやかけまわしといった方法が用いられており、漁獲努力量も抑制されつつあります。このような背景には、資源の持続可能な利用に向けた取り組みがあり、管理の厳格化が漁船数や漁法の見直しにつながっていると考えられます。

また、沖合底びき網漁業のかけまわし漁法におけるスケトウダラの漁獲量は、1日の総漁獲量に占めるスケトウダラの割合が50%を超える日を対象として算出される指標で管理されています。2023年の漁期には、資源量指標値が8.6トン/網に達し、過去の目標値とされていた3.41トン/網を大幅に上回りました。この目標水準は1996年から2019年の平均水準を基にしており、現行の管理方針が効果的に機能していることがうかがえます。

さらに、この資源は「跨り資源」として日本水域のみの情報では全体像を把握することが困難です。こうした性質を踏まえ、最適な漁獲管理が日本側の漁船が操業する水域に限られた資源において実施されています。これは資源の最適利用を図るための措置であり、日本側のみならず関係する他国との協力も必要とされる可能性があります。

こうしたスケトウダラ資源に対する管理体制は、資源の安定供給と持続可能な利用を目指した取り組みの一環です。限られた資源を適切に利用し、将来にわたる資源の保全を図るため、漁業関係者は引き続き厳格な管理と資源評価の向上を求められます。

参考:スケトウダラオホーツク海南部

ズワイガニ資源の危機?オホーツク海南部の分布密度が5kg/km²まで低下

オホーツク海南部に生息するズワイガニ資源に関する最新の報告が発表されました。このズワイガニ資源は、日本水域からロシア水域まで広がる「跨り資源」に分類され、特にオホーツク海南部で多く確認されています。この評価では、日本国内の漁業による漁獲データをもとに、ズワイガニ資源の現状が詳しく示されています。

ズワイガニの漁獲量は過去数十年にわたって大きく変動しており、2000年漁期以降は減少傾向にありました。2011年には年間漁獲量が60トンまで落ち込み、その後回復を見せつつも、2023年漁期にはわずか10トン(沿岸漁業のみの漁獲)にまで減少しました。具体的には、沖底オッターや沖底かけまわし漁法では漁獲量が記録されず、沿岸漁業でのみの捕獲が確認されています。このような減少は、ズワイガニ資源の減少や生息地の変化が影響していると考えられ、特に資源量指標値の低下が顕著です。

資源量指標値の推移を見ると、2003年以降、この値は増減を繰り返しながらも全体的には減少傾向にありました。2017年漁期には5kg/km²にまで落ち込みましたが、その後一時的に回復を見せ、2023年漁期には11kg/km²まで増加しました。しかし、この増加も一時的で、資源の長期的な減少傾向に歯止めをかけられているとは言い難い状況にあります。ズワイガニの分布密度が低下していることが示され、漁獲可能な資源量が限られている可能性があるため、今後の漁獲管理に慎重な対応が求められます。

本報告では、ズワイガニの漁獲シナリオについても提案されています。この資源は、隣接するロシア水域にまで広がっているため、最大持続生産量(MSY)に関連する管理基準値を定めることが難しいとされています。代わりに、日本の漁業者が操業する範囲で最適な漁獲量が確保されるよう、漁獲管理が行われることが目標とされています。これは、ズワイガニが広域に分布しており、資源の回復や持続可能な利用を実現するための管理が必要であるという認識に基づいています。

また、過去の漁獲努力量の推移も報告されています。特に沖底オッター漁と沖底かけまわし漁における漁獲努力量は、2011年漁期まで減少していましたが、その後は増減を繰り返し、2022年には沖底オッター漁で419網、沖底かけまわし漁では0網という結果が示されています。この時期には、ズワイガニを狙った操業が増加したことが漁獲量増加に影響したと考えられます。しかし、最近の漁獲量の減少は、操業の変動が資源量の確保に直接的な効果を与えにくいことを示唆しています。

さらに、資源量指標値の最低水準である5kg/km²が、維持もしくは回復すべき目標値として設定されていることが強調されています。2023年の資源量指標値は11kg/km²で目標値を上回ったものの、日本水域における利用可能な資源が減少している可能性が指摘されており、今後の漁業管理においては注意が求められています。これは、日本水域だけでなくロシア水域も含めた広域での資源状況を把握することの重要性を強調しています。

この報告は、日本国内のズワイガニ漁業者にとって重要な指針を提供しており、資源保護と持続可能な利用を両立させるための方向性を示しています。ズワイガニは日本の水産資源として重要な存在であり、その管理には多国間の協力が欠かせません。ズワイガニ資源の保護と管理は、日本の漁業だけでなく、環境保護と生態系のバランスにも影響を与える重要な課題です。

今後の課題としては、日本水域とロシア水域にまたがるズワイガニ資源の包括的な管理が挙げられます。ズワイガニの生息環境や資源量の把握には、両国間の協力体制が不可欠です。また、ズワイガニ資源の持続可能な利用を実現するためには、適切な管理基準と目標設定が重要です。ズワイガニの分布範囲が広いことから、資源の動向を的確に把握し、資源量の維持や回復を図るための長期的な視点に基づいた管理が求められます。ズワイガニ資源の持続可能な利用は、地域経済の安定や漁業の発展にもつながるため、今後も詳細なモニタリングと効果的な管理が必要です。

参考:ズワイガニオホーツク海南部

20年間での漁獲量激減、北海道西部ズワイガニ資源の保全に迫られる

北海道西部の日本海地域で分布するズワイガニについて、資源量や漁獲量の推移が詳細に示されています。この地域でのズワイガニの分布域は積丹海山群や忍路海山、武蔵堆斜面域に広がり、主要な漁場が形成されています。漁獲量の推移を見てみると、1986年漁期には80トンを超える漁獲量がありましたが、その後は減少し、1988年から2016年にかけては20〜40トンの範囲で安定していました。しかし、それ以降はさらに減少が進み、2023年漁期にはわずか5トンにまで減少しています。この減少は、かにかご漁業における許可船の減少や気象条件、漁獲努力量の低下などが影響していると考えられます。

特に漁獲努力量については、2000年から2008年の間では9千から15千かごで横ばい状態でしたが、2009年以降には6千から8千かごに減少し、さらに2017年以降の荒天などの影響で2千から5千かごと減少しました。2023年漁期においても、操業の不安定さが影響し、目標としている資源量指標値を下回る結果となっています。ズワイガニの資源量指標値であるCPUEは、1980年代末から1990年代後半にかけて低下した後、上昇に転じたものの、近年の不安定な操業環境が影響し、現在の数値は過去の水準に比べると低下傾向にあります。

資源管理の目標として、1997年漁期以降の資源水準を維持または回復させることが定められていますが、2023年漁期の資源量指標値は0.68で、これは長期的な目標値である1.0を下回る結果となりました。CPUEは、カニの漁獲数や単価、漁具の使用状況など多くの要因に影響を受けるため、最大持続生産量を目標にした管理基準値や限界管理基準値の設定が困難であるという課題もあります。このような背景から、資源管理においては、中長期的な視点で目標達成状況を評価し、必要に応じてシナリオの見直しを行うことが重要とされています。

以上を踏まえ、現在のズワイガニ資源の持続的な活用に向けた取り組みが求められています。資源量の変動を抑えつつ、安定した漁業活動を支えるためには、漁獲量や漁獲努力量を適切に管理し、地域ごとの気象条件や漁場環境の変化に対応した柔軟な資源管理が求められます。また、漁業者への支援や漁具の改善、気象予測の精度向上なども、持続可能なズワイガニ漁を実現するための課題といえるでしょう。特に、近年の気象条件による影響を考慮した計画的な漁場運営や漁具の最適化は、資源量の維持に直結する重要な要素となっています。

具体的には、気象条件による操業の不安定さを軽減するために、最新の気象予測技術の導入や漁具の効率化が進められています。また、漁獲量の安定化を図るため、地域の漁業者と協力した資源調査やデータの収集が進められており、より精度の高い資源量の把握と管理が可能となる見通しです。こうした取り組みを強化することで、ズワイガニ資源の持続的な利用が実現されると期待されています。

長期的には、ズワイガニの分布域や生息環境の変化も視野に入れた管理方針が求められ、環境変動に対する適応能力を高める必要があります。気候変動がもたらす影響を予測し、必要に応じて管理基準や漁場の運用方針を変更する柔軟な管理体制が不可欠です。ズワイガニ資源の保護と漁業の持続可能性を両立させるためには、漁業者、研究者、行政が一体となり、科学的根拠に基づいた政策と実践が求められています。

参考:ズワイガニ北海道西部系群

⇒ 詳しくは水産庁のWEBサイトへ

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