2025年2月14日
労務・人事ニュース
令和6年度の医療費総額22兆3226億円!企業の保険負担が増加する背景とは
最近の医療費の動向-MEDIAS- 令和6年度9月 最近の医療費の動向[医療保険医療費]
日本の医療費の増加は、国民生活だけでなく、企業の雇用戦略や健康保険負担にも大きな影響を与えている。厚生労働省の最新データによると、令和6年度上半期の医療費総額は22兆3226億円に達し、前年同期比で1.1%の増加となった。この伸び率は過去数年と比較して鈍化しているものの、企業の保険料負担や労働力確保に関する課題を浮き彫りにしている。
特に企業の人事・採用担当者が注視すべき点は、被用者保険に関するデータだ。令和6年度の被用者保険医療費は12兆7615億円で、前年同期比で0.9%減少した。一方で、75歳以上の高齢者に適用される医療保険の総額は9兆5610億円と、前年同期比で3.8%増加している。この傾向は、日本の高齢化が加速する中で、企業の医療保険負担がますます高まる可能性を示唆している。
企業の負担が増える背景には、医科入院医療費の増加もある。令和6年度上半期の医科入院医療費は8兆7790億円で、前年同期比2.0%の増加を記録。入院1日あたりの医療費も4万3949円に達し、前年同期比で1.7%上昇している。これに伴い、企業が負担する医療保険料も増加し、特に従業員の健康管理に投資する企業ほどコスト増の影響を受ける可能性がある。
また、医科入院1人あたりの医療費は71万451円と、前年同期比で2.7%増加している。これは、1件あたりの入院日数が14.6日と依然として長期化していることが一因だ。こうした長期入院の増加は、企業の健康経営にも影響を与え、従業員の休職や復職支援の制度整備が求められる。
さらに、医科入院外の医療費は4兆4700億円と、前年同期比で0.6%増加。受診件数は減少しているが、1回あたりの医療費が上昇しており、従業員の健康管理への投資が求められる状況となっている。
調剤医療費も企業にとっての大きな関心事だ。令和6年度上半期の調剤医療費は2兆3870億円で、前年同期比で0.7%増加。特に1回あたりの調剤費用は5430円と、前年同期比で2.5%の増加となった。薬価の上昇が企業の健康保険負担を押し上げていることがわかる。
歯科医療費に関しても注目すべき点がある。令和6年度上半期の歯科医療費は1兆3520億円で、前年同期比1.1%増加した。受診延日数は減少しているものの、1回あたりの診療費が上昇しており、企業が提供する歯科保険の充実が求められる。
こうした医療費の増加に伴い、企業が取るべき対策も明確になってきた。まず、健康経営の強化が不可欠である。従業員の健康管理に積極的に投資し、予防医療の促進を図ることで、長期的なコスト削減につなげることができる。特に、慢性疾患の管理やメンタルヘルスケアの充実は、医療費の抑制に直結する。
次に、企業が提供する健康保険の見直しが求められる。医療費の増加に伴い、健康保険料の負担が増加する中で、従業員の負担を最小限に抑える施策が必要だ。例えば、特定の疾病予防プログラムを導入することで、長期的な医療費の抑制が可能になる。
また、医療費の高騰に伴い、リモートワークや柔軟な働き方の推進が注目されている。特に、通勤やオフィス勤務による健康リスクを軽減することで、従業員の医療費負担を軽減できる可能性がある。
さらに、企業が健康経営を推進するためには、データ活用が重要になる。従業員の健康データを分析し、早期の健康リスク発見に活用することで、医療費の増加を抑える施策を打ち出すことが可能だ。
このように、医療費の増加は企業経営に大きな影響を与えるが、適切な対策を講じることで、その負担を軽減することができる。今後も、企業の人事担当者は医療費動向を注視し、健康経営の戦略を強化することが求められるだろう。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ