2024年10月6日
労務・人事ニュース
令和6年度の歯科医療費が3.6%増加、高齢者医療が8.1%の大幅伸び
最近の歯科医療費(電算処理分)の動向(令和6年度4~5月号)(厚労省)
令和6年度4月から5月にかけて、厚生労働省が発表した歯科医療費に関する最新のデータが示すところでは、歯科医療費の動向は依然として上昇傾向にあります。主に電算処理されたレセプトに基づくデータを集計したもので、令和6年度4月~5月分の歯科医療費は前年同月比で3.6%増加し、これは歯科医療の需要が引き続き高まっていることを反映しています。また、受診延日数の伸び率は2.2%であり、1日あたりの医療費の増加は1.5%となっています。これらのデータは、歯科治療を受ける患者数が増加していることや、医療費全体の拡大が進んでいることを示唆しています。
具体的な制度別の歯科医療費の伸び率を見ると、被用者保険では3.5%の増加が見られ、これは労働人口に属する被保険者が歯科治療を利用するケースが増加していることを示しています。一方で、国民健康保険は0.4%の減少となっており、特に高齢者が多くを占める地域では歯科治療の利用が減少している可能性があります。しかし、後期高齢者医療制度に関しては8.1%の大幅な増加が確認されており、これは高齢者の歯科医療に対する需要が特に高まっていることを示しています。この増加は、高齢者の健康意識の向上や、医療技術の進歩によって高齢者でも受けられる治療の幅が広がっていることが要因と考えられます。
医療機関別のデータによれば、歯科病院における医療費の伸び率は11.2%と大きな伸びを見せており、歯科診療所においても3.2%の増加が確認されています。このデータは、特に歯科病院において高額な治療が行われていることや、より高度な歯科医療サービスが提供されていることを示していると考えられます。また、歯科診療所においても同様に、一般的な治療を受ける患者が増加していることが明らかです。
都道府県別のデータを分析すると、歯科医療費の伸び率は地域によって大きく異なることがわかります。最も伸び率が高かったのは熊本県で、5.7%の増加が確認されており、逆に最も低い伸び率を示したのは島根県で0.8%の増加にとどまりました。これらの地域差は、地域ごとの歯科医療の提供体制や患者の健康意識の違いによるものと考えられます。
年齢階級別の分析では、特に100歳以上の患者における医療費の伸び率が16.7%と著しく高くなっています。これに対し、70歳以上75歳未満の患者の医療費は3.0%減少しており、年齢階級による医療ニーズの違いが浮き彫りとなっています。100歳以上の患者における医療費の大幅な増加は、長寿化が進む中で、口腔ケアが健康寿命を延ばす上で重要な役割を果たしていることを反映していると考えられます。
歯科疾病分類別に見ると、歯周炎や歯肉炎などの治療に対する医療費がそれぞれ3.9%、6.2%増加している一方で、虫歯(う蝕)に対する治療費は1.1%減少しています。これは、予防歯科が浸透し、虫歯の予防に成功している一方で、歯周病や歯肉炎といった成人以降に多く発生する口腔トラブルに対する治療ニーズが増えていることを示しています。また、歯冠修復や欠損補綴に関する治療費は1.2%減少しており、これも歯科医療における技術進歩や新しい治療方法の導入によって、従来の治療法に比べて安価で効率的な治療が提供されていることが考えられます。
診療内容別にみると、歯冠修復および欠損補綴は1.2%の減少となったものの、医学管理や検査・病理診断の医療費はそれぞれ7.0%、7.2%と大きく増加しています。特に検査や診断に関する費用の増加は、口腔内の健康状態をより詳細に把握するための精密な検査が増えていることを示しており、予防医療や早期発見の重要性が高まっていることを反映しています。
歯科用貴金属に関連する医療費のデータを見ると、金やパラジウムを使用した歯科鋳造用貴金属の使用率が減少している一方で、銀合金の使用は増加していることがわかります。特に、金12%以上を含むJIS適合品に関しては、14.0%もの大幅な減少が見られ、これに対して銀合金第1種(銀60%以上)の使用が1.8%増加しています。これは、金やパラジウムといった高価な貴金属に代わって、より安価で品質の良い材料が広く使われるようになったことを示しています。
このデータは、日本全国の歯科医療の現状を詳細に反映しており、今後も歯科医療の需要が高まり続けることが予測されます。特に、高齢化社会においては、歯科医療がますます重要な役割を果たすことになるでしょう。歯科医療における技術革新や、より質の高いケアが広がることにより、口腔の健康維持が全体的な健康維持にも寄与することが期待されています。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ