2024年8月27日
労務・人事ニュース
令和6年度トラフグ資源量794トン、若齢魚の減少顕著で危機感高まる

令和6年度我が国周辺水域の水産資源に関する評価結果が公表されました(トラフグ日本海・東シナ海・瀬戸内海系群)(水産庁)
令和6年度のトラフグ日本海・東シナ海・瀬戸内海系群に関する水産資源の評価結果が、国立研究開発法人水産研究・教育機構によって発表されました。この評価は、我が国周辺の海域における主要な水産資源の保存と持続可能な管理を目的として実施されるもので、資源量や漁獲量の推移、そして将来的な資源管理の方針を決定するための重要なデータが含まれています。
日本海や東シナ海、そして瀬戸内海に生息するトラフグは、日本の水産業において非常に重要な魚種のひとつです。特に高級食材としての価値が高く、そのため、これまでに漁業者や水産関係者による人工種苗の放流など、さまざまな資源管理施策が実施されてきました。しかし、近年のデータは、これらの対策にもかかわらず、資源の減少傾向が続いていることを示しています。
今回の資源評価結果によると、トラフグの資源量は長期的には減少傾向にあります。特に、2002年漁期以降、2006年漁期に記録した1,189トンを最高として、以降は徐々に減少し、2023年漁期には794トンまで減少しました。これは2000年代初頭と比較すると明らかに低い水準であり、この傾向が続くと、将来的にはさらに深刻な状況に陥る可能性があります。また、漁獲量についても、2002年の漁期には363トンを記録しましたが、その後は減少傾向が続き、2022年漁期には133トンと過去最少の記録を更新し、2023年漁期もわずかに増加したとはいえ、135トンにとどまりました。
このような資源の減少の背景には、いくつかの要因が考えられます。まず、漁獲の年齢構成が変化していることが挙げられます。若齢魚、特に0歳魚や1歳魚の割合が減少しており、これは資源の再生産能力に直接的な影響を与えています。図1に示されているように、漁獲尾数では0歳魚が2005年漁期以降、1歳魚が2006年漁期以降減少傾向にあります。2歳魚については、2011年漁期以降緩やかに減少し続けており、最近では2万尾を下回る水準に落ち込んでいます。さらに、3歳魚や4歳以上のトラフグも、2015年漁期以降減少傾向が見られ、2023年漁期には再び減少に転じたことが報告されています。このような若齢魚の減少は、将来的な資源の持続可能性に大きな懸念をもたらしています。
また、加入量と親魚量の推移にも注目すべき点があります。図5に示されているように、加入量は2005年漁期の82.8万尾をピークに減少を続け、2023年漁期には12.0万尾と著しく低い水準に達しています。特に天然由来の加入量は、2005年漁期に76.1万尾を記録して以降、減少傾向が顕著であり、2023年漁期には6.7万尾まで落ち込みました。一方、親魚量は2007年漁期に504トンまで増加したものの、その後は400トン以上で推移しており、2023年漁期には534トンとなっています。しかし、親魚量が増加しているにもかかわらず、加入量が減少していることから、資源の再生産力が十分に発揮されていないことが伺えます。
このような状況を受けて、水産研究・教育機構は資源管理方針の見直しを進めており、今後の資源管理においては、最大持続生産量(MSY)を実現するための漁獲圧の調整が重要視されています。今回の評価では、F30%SPRをMSYを実現するための漁獲圧として提案しており、これに基づく漁獲管理が今後の資源回復に寄与することが期待されています。
さらに、人工種苗放流による資源増加の可能性についても言及されています。過去の種苗放流実績に基づくシミュレーションでは、人工種苗の放流が効果的に行われる場合、2034年漁期以降には親魚量が目標管理基準値を上回り、さらには漁獲量も徐々に増加する見通しが示されています。これにより、持続可能な資源管理の実現が期待される一方で、人工種苗放流に依存することによるリスクも考慮する必要があります。
具体的には、図11に示されているように、人工種苗放流を加味したシナリオでは、2035年漁期に親魚量が目標管理基準値を上回る確率が高まることが予測されています。このシナリオにおいて、放流由来の加入尾数は平均して156.4万尾とされており、これが資源の回復に寄与するとされています。しかし、長期的な視点で見た場合、天然由来の加入量が減少している現状を踏まえ、放流に頼らない自然再生産の強化が重要となるでしょう。
このような背景から、資源管理規則の適切な設定と厳守が求められます。今回提案された管理基準値や漁獲管理規則案に基づく資源管理の徹底が、トラフグ資源の持続可能な利用に向けた鍵となるでしょう。また、ステークホルダー間での協議や意見交換を通じて、効果的な管理策の策定が進められることが期待されます。
水産資源の持続可能な利用に向けた取り組みがますます重要視される中、今回の評価結果は、今後の資源管理方針を決定する上で重要な指針となります。水産業界全体が一丸となって、資源の保護と回復に向けた取り組みを強化する必要があります。そのためには、科学的なデータに基づいた政策の実施と、現場での適切な管理が欠かせません。引き続き慎重なモニタリングと管理が求められるでしょう。
詳細な評価結果や関連データについては、令和6年8月末までに国立研究開発法人水産研究・教育機構の公式ウェブサイトにて公開される予定です。水産業関係者や研究者にとって、今後の資源管理方針を策定するための重要な情報源となることが期待されます。
⇒ 詳しくは水産庁のWEBサイトへ