2024年8月30日
労務・人事ニュース
令和6年度 地域別最低賃金が答申され改定へ、全国平均51円アップで1,055円に到達!過去最高の引き上げ幅!
全ての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされました(厚労省)
厚生労働省は、全国の都道府県で令和6年度の地域別最低賃金の改定額が答申され、その内容を取りまとめました。この改定は、各都道府県に設置されている地方最低賃金審議会が、厚生労働大臣の諮問機関である中央最低賃金審議会が示した「令和6年度地域別最低賃金額改定の目安」を参考にして、各地域の経済状況や労働市場の実態を踏まえた審議を行った結果に基づいています。今回の改定は、全国的に賃金水準を引き上げることを目的としており、特に低賃金地域における賃金格差の是正を強く意識したものとなっています。
今回の答申では、全国の都道府県で最低賃金の引き上げ幅が50円から84円の範囲で設定されました。最高額である84円の引き上げが行われた県は1県で、次に高い引き上げ幅である59円が2県、58円が1県、57円が1県と続いています。また、50円の引き上げが行われた都道府県は20県にのぼり、全国的に賃金の底上げが図られました。この結果、改定後の全国加重平均額は1時間あたり1,055円となり、昨年度から51円の引き上げとなりました。この引き上げ幅は、昭和53年度に目安制度が始まって以降、最も大きなものとなっており、政府の賃金引き上げに対する強い意志が反映されています。
全国加重平均額の51円引き上げにより、最低賃金の最高額と最低額の差も縮小しました。具体的には、最高額である1,163円に対する最低額951円の比率が81.8%となり、昨年度の80.2%から改善されました。このような比率の改善が10年連続で続いていることは、地域間の賃金格差是正に向けた努力が着実に成果を上げていることを示しています。特に、低賃金地域での最低賃金の引き上げは、地域経済の活性化や労働者の生活向上に直結する重要な要素となります。
しかし、最低賃金の引き上げは、企業側にとっては賃金コストの増加を意味します。特に、中小企業や零細企業にとっては、その影響が大きく、経営に対する負担が増す可能性があります。そのため、政府は、最低賃金引き上げに伴う中小企業支援策も同時に進めています。具体的には、賃金補助金や税制優遇措置、労働生産性向上を支援するための研修や設備投資の補助などが検討されています。これらの施策は、企業が賃金引き上げを円滑に行うための支えとなり、持続可能な経営を支援することを目的としています。
最低賃金の引き上げが発効するのは、各都道府県の労働局が関係する労使からの異議申出に関する手続きを経た上で、最終決定が下される10月1日から11月1日までの間です。改定後の賃金額は、労働者にとっては重要な生活基盤となり、また、地域経済の消費拡大にも寄与することが期待されます。しかし、その一方で、賃金引き上げが物価上昇や雇用調整にどのような影響を与えるかについても、注意深く見守る必要があります。
賃金引き上げによる影響は多岐にわたりますが、その中でも特に重要なのは、非正規労働者や若年層への影響です。これらの層は、賃金水準が低いため、最低賃金の引き上げによる恩恵を最も受けやすい一方で、雇用機会が減少するリスクも伴います。政府は、こうしたリスクを軽減するために、雇用創出支援や職業訓練の充実を図ることで、最低賃金引き上げが持続可能な形で進むよう努めています。
今後、最低賃金の引き上げがどのように定着し、地域経済や労働市場にどのような影響を与えるのかは、全国的に注目されています。特に、賃金引き上げが地域ごとの経済状況にどのように反映されるか、また、それが生活者や企業にどのような形で受け入れられるのかについては、引き続き注視する必要があります。政府は、この動きを踏まえ、適切な政策を打ち出していくことが求められます。
今回の最低賃金改定は、地域の実情を反映しつつ、全国的な賃金水準の向上を図る重要なステップです。今後、企業や労働者がこの改定をどのように受け入れ、どのように活用していくのかが、日本の労働市場の未来に大きな影響を与えることでしょう。
令和6年度 地域別最低賃金 答申状況
都道府県 | ランク | 目安額 | 答申された改定額(円) | 引き上げ額(円) | 目安差額 | 発効予定年月日 |
北海道 | B | 50 | 1010(960) | 50 | ±0 | 2024年10月1日 |
青森 | C | 50 | 953(895) | 55 | +5 | 2024年10月5日 |
岩手 | C | 50 | 952(893) | 59 | +9 | 2024年10月27日 |
宮城 | B | 50 | 973(923) | 50 | ±0 | 2024年10月1日 |
秋田 | C | 50 | 951(879) | 54 | +4 | 2024年10月1日 |
山形 | C | 50 | 955(900) | 55 | +5 | 2024年10月19日 |
福島 | B | 50 | 955(900) | 55 | +5 | 2024年10月5日 |
茨城 | B | 50 | 1005(953) | 52 | +2 | 2024年10月1日 |
栃木 | B | 50 | 1004(954) | 50 | ±0 | 2024年10月1日 |
群馬 | B | 50 | 985(935) | 50 | ±0 | 2024年10月4日 |
埼玉 | A | 50 | 1078(1028) | 50 | ±0 | 2024年10月1日 |
千葉 | A | 50 | 1076(1026) | 50 | ±0 | 2024年10月1日 |
東京 | A | 50 | 1163(1113) | 50 | ±0 | 2024年10月1日 |
神奈川 | A | 50 | 1162(1112) | 50 | ±0 | 2024年10月1日 |
新潟 | B | 50 | 985(931) | 54 | +4 | 2024年10月1日 |
富山 | B | 50 | 998(948) | 50 | ±0 | 2024年10月1日 |
石川 | B | 50 | 984(933) | 51 | +1 | 2024年10月5日 |
福井 | B | 50 | 984(931) | 53 | +3 | 2024年10月5日 |
山梨 | B | 50 | 988(938) | 50 | ±0 | 2024年10月1日 |
長野 | B | 50 | 998(948) | 50 | ±0 | 2024年10月1日 |
岐阜 | B | 50 | 1001(950) | 51 | +1 | 2024年10月1日 |
静岡 | B | 50 | 1034(984) | 50 | ±0 | 2024年10月1日 |
愛知 | A | 50 | 1077(1027) | 50 | ±0 | 2024年10月1日 |
三重 | B | 50 | 1023(973) | 50 | ±0 | 2024年10月1日 |
滋賀 | B | 50 | 1017(967) | 50 | ±0 | 2024年10月1日 |
京都 | B | 50 | 1058(1008) | 50 | ±0 | 2024年10月1日 |
大阪 | A | 50 | 1114(1064) | 50 | ±0 | 2024年10月1日 |
兵庫 | B | 50 | 1052(1001) | 51 | +1 | 2024年10月1日 |
奈良 | B | 50 | 986(936) | 50 | ±0 | 2024年10月1日 |
和歌山 | B | 50 | 980(929) | 51 | +1 | 2024年10月1日 |
鳥取 | C | 50 | 957(900) | 57 | +7 | 2024年10月5日 |
島根 | B | 50 | 962(904) | 58 | +8 | 2024年10月12日 |
岡山 | B | 50 | 982(932) | 50 | ±0 | 2024年10月2日 |
広島 | B | 50 | 1020(970) | 50 | ±0 | 2024年10月1日 |
山口 | B | 50 | 979(928) | 51 | +1 | 2024年10月1日 |
徳島 | B | 50 | 980(896) | 84 | +34 | 2024年11月1日 |
香川 | B | 50 | 970(918) | 52 | +2 | 2024年10月2日 |
愛媛 | B | 50 | 956(897) | 59 | +9 | 2024年10月13日 |
高知 | C | 50 | 952(897) | 55 | +5 | 2024年10月9日 |
福岡 | B | 50 | 992(941) | 51 | +1 | 2024年10月5日 |
佐賀 | C | 50 | 956(900) | 56 | +6 | 2024年10月17日 |
長崎 | C | 50 | 953(898) | 55 | +5 | 2024年10月12日 |
熊本 | C | 50 | 952(898) | 54 | +4 | 2024年10月5日 |
大分 | C | 50 | 954(899) | 55 | +5 | 2024年10月5日 |
宮崎 | C | 50 | 952(897) | 55 | +5 | 2024年10月5日 |
鹿児島 | C | 50 | 953(897) | 56 | +6 | 2024年10月5日 |
沖縄県 | C | 50 | 952(896) | 56 | +6 | 2024年10月9日 |
全国加重平均 | 1055(1004) | 51 | +1 |
括弧内の数字は改定前の地域別最低賃金額
効力発生日は、答申公示後の異議の申出の状況等により変更となる可能性有
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ