2025年2月14日
労務・人事ニュース
令和6年度9月の歯科医療費、前年比3.4%増—高齢者層の需要が拡大
最近の歯科医療費(電算処理分)の動向(令和6年度9月号)(厚労省)
厚生労働省が公表した最新の歯科医療費データによると、令和6年度9月の歯科医療費は、前年同月比で3.4%増加しました。このデータは、全国の医療機関が電算処理を通じて提出したレセプト情報を基に集計されており、現在の歯科医療の傾向を示す重要な指標となっています。これに伴い、受診延日数は0.4%減少したものの、1日当たりの医療費は3.8%増加しました。
制度別にみると、被用者保険による医療費は3.9%の伸びを示し、国民健康保険は1.6%の減少が見られました。一方、後期高齢者医療制度は6.8%と大幅に増加しており、高齢者の歯科診療需要の高まりが伺えます。特に、年齢階級別で見ると、95歳以上100歳未満の患者における歯科医療費は15.6%増加し、高齢者層の歯科医療ニーズが拡大していることがわかります。
また、歯科診療所と歯科病院の医療費動向を比較すると、歯科病院は8.2%の増加率であったのに対し、歯科診療所は3.1%の伸びにとどまりました。これは、専門的な治療を受けるために病院を訪れる患者が増えていることを示唆しています。さらに、都道府県別のデータでは、石川県の歯科医療費の伸びが5.0%と最も高く、逆に愛媛県では0.4%と最も低い伸び率でした。
傷病別の医療費伸び率を分析すると、歯周炎等の治療費が3.3%、歯肉炎は5.6%、う蝕(虫歯)は1.8%の増加を見せました。しかし、補綴関係(入れ歯やクラウンなど)は0.3%の減少、根尖性歯周炎(歯根膜炎)は2.2%の減少となり、特に補綴関連治療の減少が目立ちます。この傾向は、歯科医療の進歩や予防歯科の普及により、補綴治療の必要性が相対的に低下している可能性を示しています。
診療内容別にみると、歯冠修復及び欠損補綴の費用は0.3%減少しましたが、処置(抜歯や歯肉治療を含む)は7.2%、医学管理は2.6%、検査・病理診断は5.7%と、それぞれ増加しています。これは、診断技術や予防治療の重要性が増していることを示しており、歯科医療の方向性が変化していることがうかがえます。
さらに、歯科用貴金属の医療費動向も興味深いデータが示されました。歯科鋳造用金銀パラジウム合金(金12%以上JIS適合品)は8.1%の減少となり、銀合金第1種(銀60%以上、インジウム5%未満JIS適合品)は8.6%の増加、第2種(銀60%以上、インジウム5%以上JIS適合品)は5.1%の減少となりました。これは、金属価格の変動や患者の選択肢の変化が影響していると考えられます。
今回の調査結果は、歯科医療業界における変化を浮き彫りにしました。特に、高齢者層の受診率の上昇、病院への集中傾向、補綴治療の減少、予防・検査分野の成長といったトレンドは、今後の歯科医療の方向性を考える上で重要な要素となります。これらのデータをもとに、歯科医療機関はより効果的な治療計画や経営戦略を策定する必要があるでしょう。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ