2025年2月27日
労務・人事ニュース
令和6年版 全国の救急出動764万件超!前年比40万件増で医療業界の人手不足が深刻化
「令和6年版 救急・救助の現況」の公表(総務省)
令和6年版の「救急・救助の現況」に関する最新データが公表され、全国の救急業務および救助業務の実施状況が明らかになった。令和5年の救急出動件数は、消防防災ヘリコプターを含めて764万987件に達し、前年比40万8,869件の増加(5.7%増)となった。搬送人員も664万3,379人で、前年より42万4,080人増(6.8%増)となり、いずれも統計開始以来最多の記録となった。
特に注目すべき点は、救急自動車の出動件数が763万8,558件(前年比40万8,986件増、5.7%増)となり、搬送人員が664万1,420人(前年比42万4,137人増、6.8%増)であったことだ。この増加傾向は、高齢者人口の増加や医療機関の受け入れ体制の逼迫が影響していると考えられる。現場到着所要時間は平均10.0分で、前年の10.3分から若干短縮したものの、新型コロナウイルス感染症の影響がなかった令和元年と比較すると約1.3分長くなっている。また、病院収容所要時間は平均45.6分で、前年の47.2分からは改善したものの、コロナ前と比較すると約6.1分の延長が見られる。
事故種別の救急出動件数を分析すると、「急病」が517万4,494件(前年比5.9%増)、「一般負傷」が118万5,397件(前年比7.6%増)、「転院搬送」が55万6,367件(前年比3.5%増)、「交通事故」が39万9,577件(前年比4.5%増)となった。特に「急病」の割合が67.7%と最も高く、過去20年の推移を見ても増加傾向にある。一方で「交通事故」の割合は減少傾向が続いている。
救助業務の状況も前年と比較して増加しており、救助活動件数は7万1,707件(前年比5.3%増)、救助人員は6万6,815人(前年比6.6%増)であった。救助出動件数では、「建物等による事故」が最多で5万3,228件(前年比10.7%増)、次いで「交通事故」2万2,223件(前年比3.2%増)、「水難事故」4,008件(前年比2.8%増)と続いた。「機械による事故」は1,310件で、前年比17.0%の減少が見られた。
消防防災ヘリコプターによる救急・救助業務も一定の役割を果たしている。令和5年の消防防災ヘリコプターによる救急出動件数は2,429件(前年比4.6%減)、救助出動件数は1,915件(前年比0.9%増)であった。特に「一般負傷」の出動件数が697件と最も多く、次いで「転院搬送」559件、「急病」454件と続いた。一方、消防防災ヘリによる「水難」救助出動件数は376件と前年比で増加傾向にある。
救急搬送された人員の傷病程度別データを分析すると、「軽症(外来診療)」が321万8,832人(前年比9.5%増)、「中等症(入院診療)」が285万622人(前年比5.5%増)、「重症(長期入院)」が48万1,993人(前年比0.2%増)となった。軽症搬送の増加が顕著であり、救急車の適正利用の必要性がより一層求められる。
年齢別の搬送人員では、「高齢者(65歳以上)」が409万3,552人(前年比6.0%増)、「成人(18歳以上65歳未満)」が196万8,232人(前年比5.7%増)、「乳幼児(生後28日以上満7歳未満)」が33万6,047人(前年比22.6%増)となった。特に乳幼児の搬送増加率が高く、感染症の流行や事故の影響が考えられる。
さらに、心肺蘇生の実施状況を見ると、令和5年に一般市民が目撃した心原性心肺機能停止傷病者数は2万8,354人で、そのうち一般市民が心肺蘇生を実施した傷病者は1万6,927人(59.7%)であった。一般市民がAEDを使用し除細動を実施した傷病者数は1,407人で、そのうち1ヵ月後に生存した人は763人(54.2%)、社会復帰できた人は632人(44.9%)であった。このデータは、心肺蘇生とAEDの適切な使用が生存率向上に寄与することを示している。
今回の統計は、全国の消防・救急・救助体制が依然として高い需要に直面していることを浮き彫りにしている。救急車の適正利用や医療機関の受け入れ体制の改善が求められる中で、今後も迅速な救急対応と効率的な救助活動のための施策が必要となる。
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