2024年11月8日
労務・人事ニュース
令和6年賃金引上げ、定昇実施率83%に増加!企業規模別の詳細な実態
定期昇給制度、ベースアップ等の実施状況(厚労省)
令和6年の賃金引上げに関する調査では、定期昇給制度やベースアップ(ベア)等の実施状況について詳細なデータが明らかにされています。まず、定期昇給制度がある企業の割合ですが、管理職においては76.8%が「定昇を行った・行う」と回答しており、前年の71.8%から増加しています。また、「定昇を行わなかった・行わない」と回答した企業は4.3%と前年の5.0%より減少しました。一方、一般職においては、83.4%が「定昇を行った・行う」と回答し、こちらも前年の79.5%から増加傾向にあります。この結果は、企業が労働者の賃金引き上げに前向きであることを示しており、労働市場全体の賃金改善の動きが加速していることがうかがえます。
次に、ベースアップ等の実施状況についてですが、管理職では47.0%の企業が「ベアを行った・行う」と回答し、前年の43.4%から増加しました。また、ベアを「行わなかった・行わない」と回答した企業は18.1%で、前年の21.0%から減少しています。一般職では、52.1%の企業が「ベアを行った・行う」と回答し、前年の49.5%から上昇しました。一方で、「ベアを行わなかった・行わない」企業は14.9%で、前年の18.2%からやや減少しています。このデータから、企業の多くが賃金引上げに積極的に取り組んでいることがわかります。
企業規模別に見てみると、5000人以上の企業では管理職の68.3%がベアを実施しており、一般職では78.5%がベアを行っています。一方、100人から299人の中小企業においては、管理職の44.0%、一般職の47.2%がベアを行ったと回答しており、大企業と比べると実施率がやや低くなっています。この傾向は、企業規模による賃金引き上げの格差が依然として存在していることを示しています。
産業別に見ると、製造業においては管理職の54.6%がベアを実施しており、一般職では59.1%がベアを行っています。これに対し、宿泊業や飲食サービス業では管理職の29.8%、一般職の37.8%がベアを行っているにとどまり、業界間での差異が明らかです。特にサービス業においては、労働環境や収益性の違いが賃金引き上げに影響を与えていると考えられます。
また、労働組合の有無によっても賃金引き上げの状況に差が見られます。労働組合がある企業では、管理職の62.6%、一般職の71.0%がベアを実施していますが、労働組合がない企業では、管理職の41.0%、一般職の44.8%にとどまっています。労働組合が賃金交渉において重要な役割を果たしていることが、このデータからも確認できます。
全体として、令和6年の賃金引上げに関するデータは、企業が賃金改善に積極的であることを示しています。特に大企業や労働組合がある企業では、賃金引き上げの取り組みが進んでおり、ベースアップを実施する企業の割合が増加しています。しかし、業界や企業規模による格差が依然として存在しており、中小企業や特定のサービス業では賃金引き上げの実施が難しい状況にあります。このような状況を踏まえ、政府や労働組合、企業が連携して賃金改善に向けた取り組みを強化することが求められます。
このデータから、賃金引上げが労働市場全体に与える影響は非常に大きいことがわかります。特に、物価上昇や生活費の高騰が続く中で、労働者の購買力を維持・向上させるためには、さらなる賃金引き上げが必要不可欠です。企業にとっては、賃金引き上げを通じて優秀な人材を確保し、社員のモチベーションを高めることが重要な課題となっています。今後も、賃金引上げの動向に注目し、適切な対策を講じることが企業経営の鍵となるでしょう。
この調査結果を基に、企業は自身の賃金政策を見直し、競争力を維持するための戦略を立てることが求められています。特に、優秀な人材を確保するためには、他社との賃金競争に打ち勝つための柔軟な対応が必要です。今後の経済状況や物価動向に応じた賃金引き上げを検討することが、企業の成長と発展に直結すると言えるでしょう。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ