2024年10月29日
労務・人事ニュース
令和6年10月速報値 労働災害発生状況、全体で508人が死亡し前年同期比0.4%増加
令和6年における労働災害発生状況について(10月速報値)(厚労省)
令和6年10月18日に発表された労働災害発生状況の速報値によると、令和6年の死亡災害と休業4日以上の死傷者数に関して、前年同期と比較して僅かな増減が見られました。具体的には、死亡者数は508人で、前年同期から2人、0.4%の増加が報告されています。これは全体的な労働災害の増加傾向を反映しているものの、依然として深刻な状況が続いていることを示しています。
業種別のデータでは、製造業における死亡者数が98人となり、前年同期比で3人、3.2%増加しました。また、建設業では164人の死亡者が発生しており、前年同期比で12人、7.9%の増加が確認されました。これらの業種における死亡災害の増加は、特に現場での安全対策が不十分である可能性を示唆しており、対策の強化が求められています。林業でも20人の死亡者が確認され、前年同期比で1人、5.3%増加しました。一方で、陸上貨物運送事業では死亡者数が73人となり、前年同期比で2人、2.7%の減少が見られました。第三次産業においても、死亡者数が128人で前年同期比で5人、3.8%の減少が報告されており、一定の改善が見られました。
事故の型別に見ると、「墜落・転落」が最も多く、131人が亡くなっており、前年同期比で1人、0.8%増加しました。「はさまれ・巻き込まれ」では82人が死亡し、前年同期比で4人、4.7%の減少が確認されました。「交通事故(道路)」による死亡者は79人で、前年同期から23人、22.5%も減少しています。これにより、道路上での安全対策が一定の効果を上げていることが伺えます。他には「激突され」「飛来・落下」「崩壊・倒壊」などの事故が後に続きます。
休業4日以上の死傷者数に関しては、全体で88,421人となり、前年同期比で660人、0.8%の増加が報告されました。製造業では17,747人が負傷しており、前年同期比で203人、1.1%減少しました。建設業では9,176人が負傷し、前年同期比で367人、3.8%の減少が確認されています。陸上貨物運送事業においては10,993人が負傷し、前年同期比で115人、1.1%の増加が見られました。第三次産業においては45,337人が負傷しており、前年同期比で1,107人、2.5%の増加が報告されています。
事故の型別に見ると、「転倒」が最も多く、23,619人が負傷しており、前年同期比で119人、0.5%の増加が確認されました。「動作の反動・無理な動作」による負傷者数は13,794人で、前年同期比で230人、1.7%の増加が見られました。「墜落・転落」による負傷者は13,520人で、前年同期比で10人、0.1%の増加が報告されています。その他の事故の型としては、「はさまれ・巻き込まれ」や「切れ・こすれ」、そして「激突」が続いています。
このような労働災害の発生状況は、各業種における現場での安全対策の強化が必要であることを強調しています。特に建設業や製造業では死亡者数が増加しており、現場での安全管理の不備や従業員のリスク意識の低さが問題として浮上しています。これに対して、より厳格な安全基準の適用や、安全教育の充実、そして現場でのリスクアセスメントの徹底が求められています。
また、陸上貨物運送事業や第三次産業では、死亡者数や負傷者数が減少傾向にあることが確認されており、これらの業種では一定の安全対策が効果を上げていると考えられます。特に交通事故の減少は、道路交通法の改正や運送業界における安全運転教育の成果が反映されている可能性があります。しかし、依然として死亡者数や負傷者数が多い業種も存在しており、全体的な安全対策の見直しが必要です。
労働災害の発生状況に関するこれらのデータは、企業が自社の労働環境を改善するための指針として活用できるでしょう。特に、高リスク業種における死亡災害や負傷者数の増加は、企業の信頼性やブランドイメージに大きく影響を与える可能性があり、早急な対応が求められます。また、政府や労働組合が提供する安全基準やガイドラインを遵守することも重要です。企業が安全対策に投資し、従業員の健康と安全を守ることで、長期的な成長と持続可能なビジネス運営が実現できるでしょう。
最後に、新型コロナウイルス感染症による労働災害が除外されている点にも注意が必要です。パンデミックの影響を受けた業種では、依然として感染症対策が求められており、従業員の健康管理や職場環境の見直しが不可欠です。特に密閉空間での作業が多い業種では、従業員同士の接触を最小限に抑えるための工夫が必要となります。
このように、令和6年の労働災害発生状況は、依然として多くの課題を抱えていますが、一定の改善も見られます。企業は引き続き、安全対策を強化し、従業員の健康と安全を最優先に考えることが重要です。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ