2024年12月12日
労務・人事ニュース
令和6年10月 奈良県の新規求人倍率が2.02倍に上昇、医療・福祉分野で11.6%増加
奈良県の一般職業紹介状況(令和6年10月分)について(奈良労働局)
2024年10月における奈良県の雇用情勢が公開されました。新規求人数が前月比6.6%増加し、7,703人となった一方、新規求職者数は1.4%減少し、3,804人にとどまりました。この結果、新規求人倍率は2.02倍となり、前月比0.15ポイントの上昇が確認されました。これにより、雇用の需給バランスが改善されつつあることが示唆されています。特に注目すべきは、医療・福祉分野での新規求人数が11.6%増加した点で、この分野が引き続き高い需要を維持していることがわかります。
新規求人倍率の上昇により、県内の有効求人倍率も改善が見られ、10月には1.17倍となりました。これは前月比0.02ポイントの上昇を示し、全国平均の1.25倍に次ぐ水準となっています。雇用の需給改善が進む一方で、県内では業種間でばらつきが見られ、建設業では新規求人数が8.0%増加する一方、宿泊業・飲食サービス業では27.0%減少しました。このような業種ごとの変動は、地域経済の特徴や外部環境の影響を反映しています。
奈良県の正社員有効求人倍率は0.99倍と、前年同月比で0.04ポイント上昇しました。新規求人に占める正社員求人の割合は45.8%で、前年同月比11.8%増加しています。特に専門的な職種や医療・福祉分野での正社員求人が目立つ一方、事務職や運搬・清掃業の求人倍率は平均を下回っています。このことは、特定の職種における人材需要の高まりと、求職者の希望する職種との間にギャップがあることを示唆しています。
離職者の状況についても注目すべき点があります。自己都合による離職者は前年同月比1.4%減少して1,639人となった一方、事業主都合の離職者は11.4%増加して567人に達しました。この増加は、経済環境の変化が一部の企業において人員整理を余儀なくさせた可能性を示唆しています。一方、就職件数は前年同月比3.2%増加し、1,250件となり、そのうち正社員の割合は35.0%でした。これらのデータは、雇用の流動性が高まる一方で、安定した雇用への転換が課題であることを示しています。
県内のハローワークでは、就業地別の有効求人倍率が1.35倍、新規求人倍率が2.34倍と、それぞれ前月比で改善が見られました。このデータは、奈良県内の就業機会が引き続き多い状況を反映しており、雇用促進施策の効果が一定程度現れていると考えられます。また、新規求人数においても、全体の45.8%が正社員求人であり、雇用の質の向上にも取り組みが進んでいることがうかがえます。
産業別のデータを見ると、医療・福祉分野が最も高い求人数を示し、前年同月比11.6%増加しています。この分野では高齢化社会の進展に伴い、継続的な需要拡大が予測されます。また、運輸業では48.9%という大幅な増加が見られ、この分野の求人動向が今後の雇用市場に大きく影響を与える可能性があります。一方で、宿泊業・飲食サービス業では大幅な減少が記録され、地域の観光業やサービス業への影響が懸念されています。
今後の課題として、産業ごとの雇用機会の格差是正が挙げられます。建設業や運輸業、医療・福祉分野での求人増加は地域経済の発展を後押しする一方で、サービス業や飲食業の停滞は全体の雇用回復を制約する可能性があります。また、求人倍率の上昇が進む中で、求職者とのミスマッチを解消するための職業訓練や人材育成の強化が求められます。
以上のように、奈良県の雇用情勢は全体として改善傾向にありますが、業種や地域ごとの課題が依然として残されています。これらを解決するためには、県内企業と行政、教育機関が連携し、効果的な雇用促進策を推進する必要があります。
⇒ 詳しくは奈良労働局のWEBサイトへ