2025年3月10日
労務・人事ニュース
令和6年12月の給与水準は前年比4.4%増加!一般労働者とパートタイムの賃金差に注目
毎月勤労統計調査 令和6年12月分結果確報(厚労省)
令和6年12月の毎月勤労統計調査によると、全国の事業所(従業員5人以上)における現金給与総額は617,375円で、前年同月比4.4%増加した。一般労働者の給与は837,851円で4.7%増、パートタイム労働者は130,465円で7.3%の増加となり、パートタイム労働者の給与の伸び率が比較的高いことが分かる。特別に支払われた給与は全体で6.2%増加し、473,387円に達した。これはボーナスや一時金などの支給額が増えたことを示しており、特にパートタイム労働者では32.1%増加と大幅な伸びを見せた。一方で、物価の上昇を考慮した実質賃金を見ると、現金給与総額は0.3%の減少となっており、名目賃金の増加が物価上昇に追いついていない状況が続いている。
労働時間の面では、総実労働時間は136.7時間で前年比1.1%減少した。特に所定外労働時間(残業時間)が10.1時間と2.8%減少し、働き方改革の影響がうかがえる。一般労働者の総実労働時間は162.2時間で0.9%減少、パートタイム労働者は80.2時間で1.0%減少しており、全体的に労働時間の縮小傾向が続いている。出勤日数に関しては、全体平均で17.6日と前年から変動はほぼなかったが、パートタイム労働者の出勤日数は13.7日で0.1日増加している。
雇用状況を見てみると、常用雇用者数は51,265千人で前年比0.9%増加した。一般労働者の雇用は3.1%増加し35,261千人となったが、パートタイム労働者は16,005千人で4.1%減少している。これにより、パートタイム労働者比率は31.22%となり、前年同月比0.36ポイント上昇した。特に、小売業や飲食サービス業などの業種ではパートタイム比率が高い傾向にあるものの、一部の業種ではパートタイム雇用の減少がみられる。
産業別に見た場合、給与の増加率にばらつきがあり、特に鉱業・採石業の給与は前年同月比22.3%増の823,378円と大幅な伸びを示した。また、建設業(9.4%増)、製造業(5.3%増)、電気・ガス業(8.3%増)、金融・保険業(5.5%増)といった業種も給与の上昇が目立った。一方で、情報通信業(0.9%増)、学術研究等(0.9%増)、複合サービス事業(0.7%増)などは伸びが鈍化している。飲食サービス業等は給与水準こそ低いものの、6.8%増の179,100円と比較的大きな伸びを示した。これは最低賃金の引き上げや人手不足による賃上げの影響と考えられる。
一般労働者の給与水準に目を向けると、全体平均は837,851円であり、製造業や建設業では900,000円以上の水準となった。一方、パートタイム労働者の給与は130,465円と低く抑えられているが、増加率は7.3%と一般労働者よりも高い。この傾向は、小売業や飲食業、生活関連サービス業などで特に顕著であり、人手不足を背景に時給の引き上げが進んでいることが要因と考えられる。
労働時間の変化にも業種ごとの違いがみられる。建設業や製造業では労働時間が比較的長く、総実労働時間はそれぞれ164.2時間、158.4時間と平均を上回った。一方、飲食サービス業等は88.9時間と他業種よりも短く、これはパートタイム労働者の比率が高いことが影響していると考えられる。残業時間の減少は全体的な傾向として続いており、特に運輸業・郵便業では前年比5.4%減の22.7時間と大幅な減少が見られた。これは、長時間労働の是正が進んでいることを示している。
こうした労働環境の変化は、企業の採用活動にも影響を及ぼしている。特に、賃金の上昇が続く中で、企業はより良い待遇を提供することで人材確保を図る必要がある。例えば、建設業や製造業では労働時間が長いものの給与水準も比較的高いため、安定した収入を求める求職者にとって魅力的な選択肢となり得る。一方で、飲食業や小売業ではパートタイム労働者の給与増加率が高いものの、依然として低賃金の状況が続いているため、長期的な人材確保には課題が残る。
今後の課題として、物価上昇に対応した実質賃金の向上が求められる。名目賃金が上昇しても、消費者物価の上昇により実質的な購買力が低下する可能性があり、企業は単なる賃上げだけでなく、福利厚生の充実や労働環境の改善を進めることが重要となる。また、労働時間の適正化やパートタイム労働者の処遇改善も、長期的な労働力の確保において鍵を握る要素となる。
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