2024年9月25日
労務・人事ニュース
令和6年8月先行き 北陸 人手不足が深刻化、福祉関連業界の求人が20%増加も他業界は横ばい
景気ウォッチャー調査(令和6年8月調査)― 北陸(先行き)―(内閣府)
北陸地方の景気動向は、多くの業種において様々な変動が見られるものの、全体的には慎重な見通しが続いていることが、令和6年8月の景気ウォッチャー調査から明らかになっています。まず、観光業ではコロナ禍からの回復が進んでおり、都市型ホテルや観光型旅館においては個人客や団体客の予約が増加しているというポジティブな声が上がっています。特に秋の行楽シーズンに向けた期待感が高まっており、インバウンド需要や国内旅行者の動きが活発化していることが好材料とされています。しかし、これはあくまで一部の業種に限られており、全体的な景気回復にはまだ時間がかかるとみられています。
一方で、小売業やサービス業においては物価高の影響が引き続き深刻です。特に一般小売店やスーパーでは、商品の仕入価格が上昇しているため、売上が伸び悩む状況が続いています。精肉店や百貨店でも、商品価格の上昇が購買意欲を抑制しており、顧客が慎重に消費を行っていることが報告されています。この傾向は今後も続くと予想されており、消費者の財布のひもが緩む兆しは当面見られないとの見解が多く聞かれます。また、住宅関連の業界でも物価上昇の影響が強く、建築資材の高騰や職人不足が顕著であり、これが今後の景気回復の妨げとなる要因として懸念されています。
また、交通機関や自動車関連産業でも厳しい状況が続いています。新車販売は低迷しており、自動車備品の販売にも影響が出ていると報告されています。自動車業界全体においては、需要の低迷が続いており、これが関連産業にも波及していることが課題となっています。また、タクシー業界では観光客の利用がやや増加しているものの、物価高騰や政治不安の影響もあり、景気回復の見通しは立っていません。多くの業界に共通しているのは、物価の上昇とそれに伴う消費者の購買意欲の低下が、業績回復を妨げているという点です。
さらに、飲食業やサービス業ではインバウンド需要に支えられているものの、依然として国内消費が低迷している現状が報告されています。高級レストランや一般レストランにおいては、県外からの団体客の利用は増加している一方で、地元企業や個人の利用は低調です。この傾向は北陸応援割などの施策によっても改善されておらず、今後の景気回復には課題が残ると言えます。また、通信業やテーマパークなどのエンターテインメント業界においても、物価高や円安の影響が続いており、景気の先行きに対する不透明感が強まっています。
製造業に関しても、業界全体としては明るい材料が少ない状況です。電気機械器具製造業では、新製品の受注が徐々に増加しているとの報告もありますが、全体的な景気の回復にはまだ時間がかかるとみられています。特に、建設業や繊維工業など、原材料費や人件費の高騰が利益率に悪影響を及ぼしており、これが今後の業績にどのように反映されるかが注目されます。
雇用に関しても、厳しい状況が続いています。新規求人数は増加傾向にあるものの、求人倍率や求職者数に目立った変動はなく、特に中小企業においては人手不足が深刻な問題となっています。特に福祉関連業界では求人が続いているものの、他の業界では目立った求人の動きが少なく、長期的な雇用の安定には課題が残る状況です。また、物価高や円安が企業のコスト増を招いており、これが従業員の賃金上昇に追いついていないため、消費意欲の低下にもつながっています。
こうした状況を踏まえると、北陸地方の景気は一部の業種で回復の兆しが見られるものの、全体的には物価高騰や円安の影響が長期化する見通しが強まっています。特に、消費者の購買意欲が低下していることが、今後の景気回復に大きな課題として残されており、これに対する対策が急務です。また、インバウンド需要に依存する形での一時的な回復が見られる業種もありますが、地元企業や個人の消費が回復しない限り、景気全体の改善には結びつかない可能性があります。さらに、雇用の安定や中小企業の支援策など、地域経済を支えるための長期的な施策が必要不可欠です。
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