2024年10月11日
労務・人事ニュース
令和6年8月 和歌山県の新規求職者数11.3%減少、労働力不足にどう対処するか
一般職業紹介状況(令和6年8月分)(和歌山労働局)
和歌山県の労働市場における現状について、近年の統計データをもとに詳細に解説します。2023年(令和5年)から2024年(令和6年)にかけての和歌山県の雇用情勢は、全国的な傾向と同様に、求人が求職を上回る状況が続いています。有効求人倍率は、2024年に入っても1.14倍と安定しており、特に新規求人倍率も2024年8月時点で2.09倍とやや高い数値を示しています。これは、企業が新規に求人を出す数が求職者数を大きく上回っていることを意味していますが、業界によっては変動が見られます。
和歌山県の2023年から2024年にかけての有効求人倍率の推移を詳しく見ると、建設業やサービス業など、一部の産業で新規求人が増加しています。たとえば、建設業の新規求人は2023年8月に前年同月比で32.4%増加しており、同時に、娯楽業を含む生活関連サービス業も45.7%の増加を見せています。一方で、農業、林業、漁業、製造業、小売業といった他の産業では求人が減少しています。農業に関しては、2023年8月には前年同月比で45.2%も新規求人が減少しており、特に地域の自然環境や農産物の生産性の変動に影響を受けていることが考えられます。
和歌山県全体の有効求人倍率が全国平均を下回っているものの、季節調整済みのデータに基づくと、求人倍率は2024年に入っても緩やかな改善を続けています。2023年の後半から2024年初めにかけては、特に物価上昇の影響が雇用市場にも波及し、企業側が慎重な雇用方針を取る一方で、一部の業種では積極的な人材確保が続いている状況です。物価上昇に伴う賃金の見直しや、働き手の不足感が顕著な分野において、企業は労働者を引き留めるための取り組みを進めています。
2024年に入っても、和歌山県内の労働市場は比較的安定していますが、特定の業種では求人倍率の足踏み感が見られ、今後も物価上昇の影響に注視する必要があります。たとえば、製造業の求人は前年同月比で10.5%の減少が報告されており、卸売業、小売業でも9.9%の減少が見られます。これらの業界では、需要の変動や海外市場との関連性が強く、特に国際的な供給チェーンの影響が大きくなっています。
新規求職者の動きについても注目すべき点があります。2024年8月時点で、新規求職者数は前月比で1.8%減少しており、求職活動が落ち着きを見せています。特に、パートタイム求人が5.6%減少しており、フルタイム雇用に対する需要の高まりが示唆されています。一方で、企業側が求めるスキルセットの高度化や、特定分野における専門人材の不足も課題となっています。正社員の有効求人倍率は、2024年8月時点で0.86倍と、依然として低めの数値を示しており、正社員としての雇用は他の形態に比べてやや厳しい状況が続いています。
一方で、求職者の減少は労働力不足を加速させており、特に医療、福祉分野では慢性的な人手不足が続いています。この分野の新規求人倍率は2023年には29.1%を占めており、引き続き需要が高い分野であることが明らかです。また、宿泊業や飲食サービス業などの観光関連産業も、和歌山県における重要な産業の一つであり、新型コロナウイルスの影響から回復基調にある中、求人の増加が見込まれています。これらの産業では、2024年以降も観光需要の回復とともに、さらなる人材確保が求められるでしょう。
和歌山県の労働市場は、他の地域と同様に、経済動向や産業の特性に応じた変動が見られますが、地域特有の課題として、人口減少や高齢化が挙げられます。和歌山県の人口は2023年時点で約90万人にまで減少しており、特に若年層の減少が顕著です。このため、地域の産業が持続的に発展するためには、労働力の確保が急務となっており、行政や企業が協力して地方移住や新規産業の育成に取り組む必要があります。
2024年においても、和歌山県は雇用の安定化と地域経済の発展に向けた取り組みを進めており、引き続き注視すべき地域となっています。企業にとっては、地域の特性を理解し、労働力確保のための戦略を適切に見直すことが求められるでしょう。地域との連携を深め、持続可能なビジネスモデルを構築することが、和歌山県における成功のカギとなるでしょう。
⇒ 詳しくは和歌山労働局のWEBサイトへ